第1344話 決意表明
もうそこそこ夜も更けて来た時間帯なのだが、念のために父さんと母さんを伴って…いや、何故か家族全員で揃ってエド君の部屋へ。
今は、ナディア達がガッチリと部屋をガードし、すでに乳母のオシンさんがいつでも授乳出来る様に待機しており、彼女用の簡易なベッドも運び込まれていた。
部屋に入ると、サッとオシンさんが立ち上がり頭を下げようとしたが、
「ああ、そのままでいい」
っと、父さんが止めた。
確かに部屋を訪れた俺達の殆どが彼女よりも立場的には上だろうが、それでも我が家の末子を預かってくれる彼女にそんな礼儀は不要と、父さんは考えてる様だ。
まあ、そもそもこんな夜更けに大勢で部屋を訪れた俺達が悪いのだけど。
彼女が連れて来た赤ちゃんは、エド君のベビーベッドの隣に並べられたもう一台のベッドですやすやと眠っている。
ちなみにエド君は、妙にご機嫌な様子でおめめパッチリで起きていた。
って、さっきまでベビーベッドって1台しか無かったけど、この夜更けにどっから持ってきたんだ? オシンさんのベッドはどうとでもなりそうだけど。
「若奥様がお子をお連れになるとのことでしたので、急遽2台増やした次第です。本日はメリル若奥様が王城にご宿泊との事で、オシンの子供用に与えました。明日には新しいベッドをご用意いたしますので、メリル若奥様にはご了承いただける様に、伯爵様より申し伝えて頂ければ…」
俺がぼへっと考えていると、どこからか気配もなく近づいて来た執事のセルバスが、そう小声で耳元で教えてくれた。
それは分かったけど、ちょっと感じちゃうから耳元は勘弁してください、マジで。
さて、乳母となってくれたオシンさんに、何の前知識も無く、いつ何時性別が変わるか分からないエド君の面倒を丸投げするわけにはいかない。
なので、ある程度は事情を話している。
聖なる女神ネス様の加護を受けて生まれてきたので、女神様の気分によって男にも女にもなれるんだ、これは絶対に秘密にして欲しい等々、てきとうに誤魔化して。
彼女も流石に女神様の意向で性別が変わるとなると、超重要機密事項だと理解してくれた様で、真剣な顔で話を聞いていた。
さて、もう少しで日付も変わろうかというこの夜更け。
何で大勢でこの部屋に押しかけたかというと…、
「エドワード。君に一つだけ話がある」
エド君のベッドの前に歩み出た父さんが、軍を率いる人間らしく、低く通りの良い声でエド君に話しかけた。
「だ…だぅ…?」
ホラ、父さんの顔は怖いんだから、そんな迫力出すなって!
「あ、す、すまん…怖かったでちゅかぁ? おとうさんでちゅよ~?」
いや、だからって赤ちゃん言葉になるなよな…似合わねぇから。
「ヴァルナル、もうさっさと話を進めてくださらない? そろそろエドワード君も寝ていてもおかしくない時間なのよ? それとも貴方も夜泣きに付き合うと?」
母さんが、めっちゃ鋭い目で父さんを睨む。
「あ、お、おう…そうだな、すまなかった。え~、ゴホン。実は話というのはだな、君のこの先…将来についてなんだ」
「だ…う?」
父さんとも会話が成立してるみたいだな。
赤子ではあっても、流石は転生者だ。
「君には生れた時、そのぉ…おちんちんが付いてたので、エドワードと名付けたのだが、もしも女の子になる事が出来たのなら、名前をエヴェリーナに変えよう…かと」
「だ~~うぅぅぅぅ!」
あ、これ…多分、エドくんめっちゃ喜んでる気がす。
「お、気に入ったか? そっかそっか! 良し、何歳になっても構わないから、もしも女の子になったらエヴァリーナに名前を変えような!」
「だ~~うっ!」
きっと父さんには今のエド君の返事は、エヴァリーナって名前を気に入りました…って言った様に聞こえたんだろう。
めっちゃ父さんも母さんもいい笑顔だから、そこはまあいい。
だけど俺にははっきりと、エド君の意思を感じ取る事が出来た。
エド君のその力強い返事って、絶対に女の子になって見せる! っていう決意表明であるって事を…うん、間違いない…。
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