第1343話  誤魔化せるかも?

 さて、取りあえずはエド君との話合い(?)も一段落したので、皆の待つ部屋へと俺は向かった。

 もちろん、ナディアはエド君の護衛として部屋に残してある。

 色々と詳しい状況が明らかになると、今までとは違った意味でエド君の秘密を俺達は守らねばならなくなったからだ。


「っと言うのが、俺とナディアがエド君から聞き出した情報を元にした推論だ」

 家族全員を前にして、俺はエド君に関する情報をオープンした。

 何故そうしたかというと、あれを秘密縫いしておく事は不可能だと判断したから。

 性別がコロコロ変わったりすれば、今黙っていても間違いなくバレるだろうし、絶対に後で問題になるのは目に見えている。

 だから話したんだが…。

「え、エド君は実はエドちゃんだったのか!?」

 父さんがの頭がおかしくなった。

「良かったわね、コルネ、ユリア。貴方達に妹が増えるみたいよ?」

 母さんも、ちょっとおかしくなった。

「新たな妹…私の子供の頃の服って、本宅(領都リーカの家)に残ってたかしら?」

 コルネちゃんも、何だかおかしい。

「わたしもおねえちゃんなった!」

 いや、ユリアちゃん、エド君が男でも女でも君はお姉ちゃんですけど?

 家族全員が、エド君の話を聞いてどこか浮かれてる…いや、おかしくなった…。


「しかし、トール様。もしもエドワード様の性別が、本人の望む様に女となった場足、色々と問題が起きるのではないですか?」

 おかしくなった家族へ、俺が思いっきりジト目を向けていると、マチルダが何かを考えながらそう言った。

「色々な問題とは?」

 確かに男が女になったら問題はありそうだけど。

「一番の問題は、アルテアン侯爵家の末弟として役場に届け出をしている事ですね」

 なるほど、確かにそりゃ問題がある!


 俺達の住むこの王国では、別に貴族位が子々孫々受け継がれるわけでは無い。

 とは言っても、官僚登用試験に合格できる様な高いレベルの教育を受ける事が出来るのは、結構金持ちか貴族家のみ。

 そうなれば親の爵位をそのままとは言わずとも、かなりの爵位を将来的には賜る事も出来る。

 その為、貴族家や大商家などの子供達は、国として一応は登録しているのだ。

 まあ、前世の日本の様なほぼ完全な形の戸籍制度が整備されているという事も無く、子供の登録自体が穴だらけではある。

 だが、我が家はかなり特殊な家柄。

 父さんが侯爵という、国に使える官僚、もっと言えば役職では最高到達点にあり、息子である俺もまた伯爵位であり、ついでに聖なる女神の使徒。

 その俺の嫁さんには、この国の元王女も居る。

 何が言いたいかっていうと、それだけ注目されているって事だ。

 そんな注目の一家に子供が産まれた。

 性別から名前まで、国の重鎮と呼ばれる者達だけでなく、貴族会議に参加した事のある貴民・勲民ならば、誰もが少なくともアルテアン家の末子、エドワード君の名前ぐらいは一度は耳にした事があるって程には有名だ。

  

「確かにそれは問題だな。少なくとも、ここ1、2年程で、エド君の性別変換の検証は出来るだろう。そしてその時、もしもエド君の意思で性別を変える事が出来、且つその性別を固定できるとしたら…間違いなく女を選ぶはずだ」

 俺の話を聞いた家族であれば、俺の意見に反論の声をあげる者は居ないだろう。

「そうなると、エドワード・デ・アルテアンとして国に登録している現状、実は娘でした~っとは言えないよな」

 うん、これは困った。

 俺同様に、嫁ーずも妹天使達も困り顔。

「え、何か問題でも?」

 全員で何か良い案は無いかと、皺の少ない脳みそフル回転で考えていると、母さんがあまりにも場違いなのほほんとした声をあげた。

「いや、大問題だろう?」

 流石にこれには父さんも一言物申した。

「そんなの、ヴァルナルが間違えて報告しましたので訂正します…の一言で終わりでしょう? ヴァルナルは元々おっちょこちょいの馬鹿なんだから、そんなミスがあっても誰も咎めないと思うわよ?」

『えっ!?』

「いや、母さんそんな簡単には…「いえ、いけるかもしれません!」…えっ?」

 俺の言葉に思いっきり被せてマチルダが声高々にそう言った。

「お義母様、その案が確かに最善手です!」

「そうよねぇ!」

 あれ? それでいいの?

「そうとなったら、トールちゃんの言う検証? が済むまでは、全員んでエドワードの秘密を守りますわよ!」

 めっちゃ母さんが力強い…。

『おーーーー!』

 嫁ーずも愛妹達も、力強く拳を振り上げている。

 て、嫁ーずはこの後領地に帰るんだから、そっからはそうそう秘密は漏れないと思うんですけれど?

「…俺って、そんなにいっつもミスしてたっけ? しかも、元々おっちょこちょいの馬鹿?」

 父さんだけは、ギロチン台に上る囚人の様に青い顔をしていたが…見なかった事にしよう。

「あと…訂正までしにいかなきゃ駄目なのか?」

「父さん、強く生きろ…」

 俺は父さんの肩を優しく叩いて慰めたのだった。


「あ、でもエヴェリーナだったら、エドワードに響きが似て無いか? これなら誤魔化せるかも? おーい、ウルリーカ~、聞いてくれー!」 

 ……おい、おっさん! お前、落ち込んでたんじゃ無かったのかよ!

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