第1341話 魂の性別
エド君の前世が性的マイノリティだって事はわかった。
ついでにこの邸にもそう言った女性がいる事も理解出来た。
さらに、前世の記憶を持ったまま転生したら、赤ん坊の時に光る事も。
うん、ここまではなんとなく理解出来た。
「ここまでの事は、十分とは言えないけど理解したつもりだ」
「だ~~~う!」
そうか、ちゃんと俺の気持ちはエド君に伝わったんだな…よくわからんけど。
「それでも、どうしても理解できない事が一つあるんだよ」
ここまで来たら、疑問点は出来る限り解消しておきたい所だ。
「それは何の事についてですか、マスター?」
「ああ、ナディアも知ってると思うが、例の虹の玉の事だ」
「ああ、あの…」「だ、だぁ…う?」
どうやらナディアは思いついた様だが、エド君は覚えて無いのかな?
「えっと、つまりエド君は生まれて間もなく、何故か虹色の玉を握っていたんだ」
「だう!」
「おっと、思い出したかな? そんで、それを俺が…まあ、いい方は悪いけど取り上げて、誰にも分からない所に隠したんだよ」
「…う?」
「何故かって? そりゃ、あれは輪廻転生管理局っていう敵対組織のボスがエド君に何らかの意図を持って渡したって言うのか…それとも、あおれで何かを企んで送り込んできた…って思ってたから、俺が取り上げたんだよ」
「だぁ」
「まあ、そもそもそんな意味不明な物をエド君が持ってたら、もしかして何らかの危険が及ぶかもってのもあったんだけどね」
「…ぁぅ」
俺の考えはエド君に伝わった様だけど、どうもあの様子だと玉の事は知らない?
「どうやら、エドワード様は御存じないようですね」
あ、ナディアにも伝わってた様だね。
「ですが、マスター。私、一つあの玉の事で思い当たる事があるのです」
あの玉が一体何かと俺が考えている最中、ナディアがそう声を掛けて来た。
ナディアが思い当たる事?
「ほう?」「あぉ?」
「実は、エドワード様が眠りについた時、大奥様やメイド達がこの部屋を留守にする事が極稀にですがありました」
って事は、この部屋の留守番をしていたのって、
「つまりは、ナディア達だけがこの部屋に居た…と?」
「はい、その通りです。その時に私達でおむつを替えた事もあります」
「……だぁ~うぅ…」
今更何を恥ずかしがってんだよ、末っ子!
「その時ですが…これまたごく稀に…そのぉ…性別が変わってたのです…」
「えっ!?」「だっ!?」
えっと、エド君の性別は男だったから、つまりはたまに女になってた!?
「不思議な事に、ごく瞬間的に…そのぉ…股間の物が無くなったりくっついたり…」
んな馬鹿な?
「私やアーデ達天鬼族や妖精達には生まれつき付いておりませんので知りませんでしたが、あれは脱着とか出したり入れたりが可能な物なのでしょうか?」
「んなわけあるかぁぁぁぁぁ!」「だうだうだうだうだうぅぅぅ!」
脱着できたり出し入れ可能とかだったら、色々と問題が有るだろうが!
「でしたら、やはり目の錯覚とかではありませんね。私を含めて4人で確認しておりますから。そこで私の推測ですが、マスターが幼少期にあの様な玉を握っていたとは大奥様が仰ったことは一度もありませんし、エドワード様が握っていたのを見た時の驚き様からして、それは間違い無いでしょう」
確かに…過去に見た事があれば、あれほど驚く事も無かっただろう。
「現在、あの玉の行方は分からないとも聞きました」
「ああ。噴水の中に隠してたんだが…水に溶ける様に消えていた」
実に不思議だ。
「もしもエドワード様の魂とかとあの玉が繋がっていたとしたら?」
「え?」
「どんなに離れていても、エドワード様が望めば手元に現れるとしたら?」
…その可能性は考慮して無かった…。
「そして、あの玉が性別を自由に操れるとしたら?」
「ま、まさか…!?」「だ、だ…う!?」
「魂…つまりエドワード様の心が望む形に身体を変質させる玉ではないかというのが、私が思い当たった…いえ、私の推論です」
………なるほど、ナディアの見た性別が変わる事と玉の行方…。
エド君が前世に望んだ性別であり、魂の性別…。
転生しても男として生まれて来てしまった状況。
そして、どうにもこうにも即物的で享楽的な局長の性格。
これらを考慮したら、少々強引な推論だが、何故か納得できてしまうな。
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