第1283話  やっぱこれって…

 真っ暗な部屋の真ん中で、青白い光が規則正しく脈打つように明滅していた。

 それをじっと見つめる、仄かに白く光る物…者が居た。

『ふむ…今度は20%ほど成功したか。だが、まだエネルギー吸収率が少し悪いな…改良の余地あり…か』

 その白く光る者は、明滅する青白い光を見つめながら1人呟く。

『今の俺のエネルギーならばもう少し大きいアイン・ソフが創造できるはずなんだがなぁ…』

 何やら一人ブツブツと呟き続けながら、それは明滅する光を色々な角度から観察して周る。

『そうか、アインが不十分だから、アイン・ソフがアイン・ソフ・オウルへと変化しないと言う事か! ならば、まずは…この世界の全てを虚無へと導く必要があると言う事か?』

 少し離れてた場所から光の明滅の全体をじっと観察した後、また何かを呟く。

『いや、結論を急いではいけないな。この世界は既にアイン・ソフ・オウルに幼体変化しているのだから、アインへと戻すにはかなりの負荷がかかる…。世界の存在がどうなろうとも構わないが、それで失敗しては取り返しがつかない…』

 ふぅむ…と言った光る存在は、今度はじっと押し黙ったまま、深く深く思考に耽るのであった。


 

 所変わって、ここはパンゲア大陸の中にある、ダンジョンマスター達の秘密基地…工場の中。

「ま、マジで造ってたんすね…巨大メイドロボ…」

 その工場のど真ん中に、どデカいメイド服を着た少女…いや、サラの姿を模したロボットが立っていた。

「マジに決まっておろうが。まあ、まだ今の所は自立は難しい様じゃがのぉ…」

 ボーディの言う様に、この巨大メイドロボは、まるで大陸間弾道ミサイルの発射装置の様な巨大なトランスポーターに据え付けられた鉄骨で両肩を固定され、支えられていた。

「…一応、メイド服はロングスカートなんですね…」

 そのロボットを見て、どこか不満げなリリア。

「当たり前じゃろう? ミニスカートになど、防御力が激落ちじゃろうが」

「いや、だったらスカートは止めましょうよ…」

 ボーディの反論に、サラが文句を言うが、その文句は実に的を得ているのでは無いだろうか?

「ちなみに…あのスカートから出ている太いケーブルは?」

「ああ、あれは内部の機器類の調整用の光ケーブルと、電力供給用のケーブルをまとめた物じゃな」

 リリアの問いに即座に答えるボーディ。

「…何故にスカートの中に繋がってるんですか?」

「背中だと服を脱がさねばならぬじゃろう? 面倒じゃ! ならば、ブルマーを脱がせた方が簡単じゃからな」

 リリアの素朴な疑問に、ボーディが返したのだが…、

「ちょ、ちょっと待って! ブルマー脱がせて、あんなぶっといケーブルをどこに繋いだ!?」

「それは当然股間の…「やっぱ言わなくていい!」…そうか?」

 もの凄い勢いでサラがケーブルの先端の行方を問いただそうとしたが、あまりにも予想通りな答えが返って来そうであったため、慌ててソレを口に出す前にボーディを止めた。

 倫理的にも止めてくれて良かったかもしれない。

「まあ、あの通称へその緒…正式名称、アンビリカルケーブルは完成時には外すが…「「ちょっと待てーい!」」…何じゃ?」

 しかし、流石にこのボーディの説明には、サラもリリアも言葉を挟まずには居られなかった。

「それって、例のあの汎用人型決戦兵器のなんじゃ…」「生命の起源をコピーして作った巨大な人造人間の事だよね?」

 サラとリリアがボソボソと頭を突き合わせて何やら話し合っていた。

「まさか、あの両肩を支えてるのって…」「拘束具!?」

 まだ話し合っているが…内容がかなり不穏である。

「でもマジ〇ガーの内部図解を参考にしたって…」「なら、なんであんなに人に似せたんですか?」

 いつまでも2人でゴチャゴチャ話している様だ。

「もう説明の続きをしても良いか?」

 そんな2人を見て、ボーディがちょっと苛ついて来たようだ。

「…まあ、いいけど…」「そ、そうですね。説明の続きを聞かない事には、突っ込みようがないですからね」

 取りあえずは話を中断し、ボーディの説明を2人は大人しく聞く気になった様だ。

「ああ、そうじゃ。言っておくがあまり近づきすぎるなよ?」

 忘れてた、っとばかりにボーディは2人に注意をする。

「えっと、それは暴走の危険があるからとか?」「ちょ、サラ! そんな直接的な言い方は…」

 サラがかなり危険地帯に足を踏み入れ様としているので、リリアが思わず忠告をしたのだが、

「暴走? 何じゃそれは。あまり近づくと、ゴブリンやコボルト達の作業の邪魔じゃ。あと、足元まで行くと、色々とスカートの中の秘密が見えてしまうでの」

「………ケーブルが挿入された所が丸見え?」「サラ、それは倫理規定に触れるので黙りなさい…」

 違う意味の危険地帯に、ずっぽり踏み込んだサラを諫めるリリアだが、しっかりとサラの言葉の意味を想像している様子だ。

「お主等、さっきから何を言っておる。スカートの中には、何種類もの未完成の秘密兵器が仕込んであるからじゃぞ? まだ未患者から、世に出すわけにはいかん。完成したら披露してやるから少し待つように…と言う意味でじゃぞ?」

 変な想像をしたサラもリリアも、結構心が汚れているのかもしれない…。


「ってか、やっぱこれって…エヴ〇ンゲリオンとAR〇ELのパクリだよね?」

「……否定する材料が見つかりません…」

 ボーディの先導で工場内を見学していたサラとリリアは、そうこそこそと話してたとかなかったとか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る