第1217話  ってーーーーーーーーー!

 全員が配置についた事を、クイーンが蜂達から連絡を受け、俺へと伝えた。

 イネスもLシリーズを呼び出し起動を終え、筋力強化をした様子で、いつでも行けると俺に向かって頷いた。

 ブレンダーも既に戦闘形態となっており、雄々しく猛々しい巨大な蒼い狼の姿となっており、その背中には水晶の鋭い剣がずらりと並び、こちらも準備は整った。

 先程までブレンダーの背に括られていたファクトリーは地面に降ろされている。

 行動可能な蜂達は全てで払っているが、予備で格納されている蜂達も、何かあればすぐに飛び出してくるだろう。

 ヒナとミヤは俺の左右に立ち、その2人の着物帯は、俺への腰へと巻きついている

 上流ではウルスラグナが、下流ではユズユズがLシリーズを起動し、戦闘開始の合図を待っているはずだ。

 陽もだんだんと昇り始め、照らされた向かいの崖が白く照らし出されてくると、その中腹にずらりと並ぶワイバーンの巣の様子もはっきりと見えて来た。

 何と言うか…崖に張り付いた巨大な燕の巣? その巣の素材が何なのかは分からないが、ぱっと見はそんな感じ。

 その巣からはワイバーンの番が身を乗り出し、翼を広げて朝日を浴びている。

 ああやって陽の光を翼いっぱいに受けて血液を暖め、体温の上昇を行っているのだろう。


 こうしてじっくり観察すると良く分かるが、ワイバーンってのは竜とは明らかに別種だな。

 竜の様に細かな鱗がびっしりと並んではいるが、身体の造りがまるで違う。

 竜はその巨体に比べて、どちらかというと頭部も翼も小さい。

 対してワイバーンは、太古の地球に居たと言われる翼竜…つまりはプテラノドンと同じように、頭部と翼が極端に大きい。

 あと、知性の欠片も見えない。

 子供の頃に討伐した時は、きっと必死過ぎてここまでよく観察できなかったんだろう。

 まあ、翼の開長が俺の身長の10倍ほどもあるんだから、いいちいち立ち止まって観察なんてしてられるわけなかったし。

 倒した後も、見上げる様な巨体がロープでグルグル巻きにされて荷車に積まれてたもんで、全体像が良く分からなかった。

 だが、今はしっかりと観察できた。

 あいつらは、ただの巨大なトカゲだ。空飛ぶトカゲだ。

 そういや、プテラノドンって名前の意味は、歯を持たない翼だとか聞いた事あるけど…欠伸してる奴らの口には歯があるぞ?

 それに主食が魚だって聞いた覚えがあるけど、この世界では家畜とか人も襲うらしいから、やっぱ恐竜とは違うって事か。

 おっと、んな事を居間は考えている場合じゃない。

 奴らが活動するに十分な体温を得る前に、一気に殲滅するぞ!


「ミヤ、ヒナ。敵はあの向かいの崖に巣食っているワイバーンで総数は47匹。巣の中に卵や幼生体がいるかもしれんが、それは今回は無視していい。とにかく奴らが飛び立ち前に、一気に叩くぞ」

 2人は無表情でコクンと頷いた。

「奴らの巣は、ここから見える上流のあの辺…から、下流のあの辺…だ。すでにどっちにも攻撃隊が配置についている。取りこぼしは任せたらいい。だから、ド派手に好きにやったんさい!」

 俺の言葉に、もの凄く張り切り、フンスフンスと鼻息を荒くする2人。

「あ、だけどあんま高威力のは止めろよ? 森が火事になったら困るからな」

 2人同時にサムズアップ。

「よっし、んじゃ始めるぞ! 撃ち方よーーーーーい!」

 俺の掛け声で、2人は長大なマスケット銃をそれぞれ上流と下流の対岸のワイバーンへと向けた。

 あれ? 狙いは正面のワイバーンじゃなかったっけ…っと、別にそんな事言って無かったな…。

 まあ、いいや。

「ってーーーーーーーーー!」

 発射の号令で、2人のマスケット銃の先端からは、500ccペットボトル程のビームが…ビーム!?

 上流と下流のワイバーンの巣に向かってまっすぐ伸びて巣を焼き尽くしていく。

 2条のビームは、ズバッ! と崖を突き抜け点を焦がし、そのまま角度を変えて俺の正面に向かって来て…、

『一刀両断、挟み撃ち!』

 ヒナとミヤがそう叫ぶと、俺の正面で1条の極太のビームへと合体。

 見事に崖ごとワイバーンの巣をぶった切った。


「はぁ~!?」

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