第1180話  …何で?

 明けて翌日。

 

 何時もの俺の朝の鍛錬(またもや集中出来なかった)を終え、全員揃っての朝食を終えた我が家。

 この後またしばらく離れ離れになる父さん母さん、コルネちゃんやユリアちゃん達と嫁ーずが別れを惜しみながら喧しく話をしていた。

 ナディア達妖精は、小さい妖精さんやもっち君、ブレンダーにクイーンと蜂達と、何やらごにょごにょ話していたけど…。

 別れの挨拶も終え、全員を乗せたホワイト・オルター号はネス湖を飛び立ち、まずはアルテアン侯爵領の領都リーカを目指す。


 無論、飛び立つ前に王城への納品分として、すでに完成しているドワーフ工房謹製の小型バギーや各種遊具の積み込みも忘れはしない。

 いや、これ結構いいお値段で売れるんですよ。

 我が領の、いや領民の為、アルテアン商会の売り上げの為、そして我が伯爵家の税収の為にも納品せねば。

 俺がホワイト・オルター号で運べば、輸送費0円だからねぇ~! めっちゃお得!

 え、普段はどうしてるのかって? そりゃ、アルテアン商会の運輸部門で、蒸気式トラックで長距離輸送ですよ。

 これには、そこそこの魔石も時間も、そして人件費だってかかってるわけ。

 まあ、経費が掛かるって事は、それだけ領内でお金が回ってるって事なんで、決して悪い事ばかりじゃ無いよ?

 でも、たまに発進するホワイト・オルター号で王都へ運べば、その経費分が儲かるって事だよ、やったね俺!

 いや、ちゃんと税金は計算して払うから、脱税とかじゃないんで裏金とかにはしないよ?

 悪徳貴族の中には、常に脱税とか密輸とかあくどい事を考えて私財を溜めこむ輩も居るかもしれないけど、俺の伯爵家も父さんの侯爵家も、悪事に手を染めなくても全然問題ない。

 真っ当に税金払ってても、十分に儲かってますんで、はい。

 何なら、税率を倍に上げてもらっても余裕で払えますけど、何か?

 前世だったら、間違いなくモテモテ(死語)間違いなし! 但し、腹黒い異性に限る…だけどね。


 ホワイト・オルター号の操縦席の後ろでは、王都へ帰る家族がお茶を愉しみながら談笑していた。

 特にユリアちゃんのはしゃぎっぷりが半端無い。

 久々の帰省だから、ユリアちゃんがはしゃぐのも無理はないかな。

 どうもユリアちゃんにはお友達が居る様で(そりゃそうか)、お土産も買い込んだそうだ。

 女神ネスの御守りとか姿絵とか、ネス湖の湖畔のスパで売っている温泉饅頭とか、そりゃもう店をごと買うのかってぐらい。

 ユリアちゃんのお友達だけじゃなく、コルネちゃんのお友達の分も入ってるらしいけど、そっちは数個だそうだ。

 前世の学校の修学旅行みたいで、2人共ちょっと微笑ましい。

 まあ、その友達ってのが、元第…何番だっけ? 王女さまの産んだ子供って所は、微笑ましくないかもしれない。

 まあ、侯爵家の長女と次女なんだから、王女様…っで、いいのかな? が友達だって不思議でも無いのかな。

 それ以外にも、結構な数の貴族家の御令嬢とかもお友達らしい。

 いや、王女様とか御令嬢に、温泉饅頭とかがお土産で良いのか?  あ、饅頭は王都の邸の使用人にも配るのね。

 ん? 使用人にも? も? やっぱ饅頭配るの、王女様とか御令嬢に? 

 ほう、王都では女神印の温泉饅頭は幻のお菓子だと? いや、普通に街でおばちゃんが売ってるけど…何で?

 日持ちしないから? ああ、賞味期限の問題か! そりゃ、言われてみればそうかもしれない。

 馬車だといくら早くとも2週間近くかかる移動距離。

 精々7日程度しか賞味期限のない饅頭だったら、そりゃ口にする事出来ないよな。

 温泉饅頭…アルテアン商会で輸送しようかな…儲かる気配ビンビンに感じて来た。


 そんな雑談をしている内に、領都リーカにある大樹の邸…いや領主邸が見えて来た。

 領主邸の前には、騎士や兵士さん達が綺麗に整列して待ってる。

 その列からちょっと離れた所には、10人ほどの人達が所在なさげに立ち尽くしていた。

 うん、そっちはあの村の人達だね。

 皆にホワイト・オルター号の威容を見せつける様に、ゆっくり領主邸の上空を旋回し、ゆっくりと降下させる。


 さ、こっからが旅の本番だよ~!

 いや、明日には王都に着いちゃうけどね…。

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