第1167話  一歩進みたい

「超重要なお話とは?」

 俺の声にメリルが即座に反応した。

「良くぞ聞いてくれました! まあ、その話をする前に、幾つか他の話もしたいんだが…いいかな?」

 なので、メリルへと最初に視線を送った後、もう一度この場の全員を見回した。

 誰からの拒否の反応はありませんね? 

 んでは、お話しましょう。

「まず最初に、皆も知っている通り、例の土地の調査は完了しました。事前に申し伝えていた通り、あの地に住む人々は既に移住の準備に掛かっております。つまり、パンゲア大陸へと移住するわけやね」

 微妙に変な関西弁が交じってしまった…。

「だが、あの地の若者たちと、父さんが王都から連れて来た騎士さんや兵士さんと、恋仲になったと思われる人が居ます!」

 そう断言すると、女性陣から一斉に『きゃー!』と歓声が上がった。

 いや、父さんから聞いた話なんで、正確じゃ無いですけどね。

「モフリーナにお願いして、あの土地に住む人々のなかで、対象となる若者を明後日の正午頃に、第9番ダンジョンの近くに連れてくる予定です。なので、父さんは騎士さんや兵士さんで該当するであろう者たちを連れて行ってください」

 魔性の女とかジゴロっぽいのが居たりして、複数の人とおかしな約束してたりしたら、オラは責任取れないけどな。

 まあ、父さんは連れて行く者の心当たりはしっかりある様なので、お任せしよう。

「念のために、モフリーナと当日連絡を取るために、俺の通信の呪法具をかしますので、よろしくお願いします」

 そう伝えると、父さんは黙って頷いた。

「次に母さんですが、ここに来た当初の目的は達しました。まあ、無事に赤ちゃんを産むっていう目的だけど…。んで、赤ちゃん…つまりエドワード君も母さんも共に健全で、産後の肥立ちもとても良い。なので、父さんと共に王都へと帰還する事となりました」

 これには母さんが、ニッコリ笑って頷いた。

「出来たら父さんが領地に行くときに、俺がホワイト・オルター号で一緒に送ろうと思うので、急ですが明日中に荷物を纏めてください。コルネちゃんとユリアちゃんも一緒に帰るんだから、荷づくりお願いね」

 コルネちゃんは少し寂しそうに笑い、ユリアちゃんは元気に「は~い!」と万歳した…片手で良いんですよ?

「メリル、ミルシェ、マチルダ、ミレーラ、イネスは、俺が父さん達を王都へと送る間、執務を頼む」

 これには嫁ーずに異論はない様だ。

「ナディア達は、母さん達の護衛も兼ねて、当面王都行きだ。準備をしておくように」

 そう言うと、かなり不満げな顔で妖精達は頷いた。

 アーデ、アーム、アーフェンの本来の役目はメリル、ミルシェ、ミレーラの護衛だたtけど、今は王都で暮らす俺の家族の護衛が役目だ。そもそもナディアなんてコルネちゃんの護衛なんだから、一緒に王都へ行くのは当たり前なのだ!

 だから、不満げな顔をされたって、ここは譲りませんよ?

「ちなみに、陛下…というか軍部からの追加注文のあった、小型のバギーとかその他の品々もついでだから持って行きます。ドワーフさん達、親方衆に出来ている分だけで良いので、明日までに屋敷まで納品に来るように伝えてください」

 隅っこで湯飲みを持って、ずずず…とお茶をすすっていたドワーフメイド衆が、OKと指で〇を作って伝えて来た。

「ユズキは俺と一緒に王都行きだ。流石に貴族が供も連れずに行くと恰好つかないんで。ユズカには悪いけどな」

「了解です」「しっかたないなぁ…今回だけは、柚希かしてたげる!」

 ユズキは、ちゃんとした言葉遣いが出来そうなんで、安心だな。ユズカは…もちょっと勉強しようか。 


 ここでちょっと心を落ち着けてっと。

 冷めた香茶で唇を湿らせ、喉を潤した。

「さ、ここまでが他の話です」

 何故か食堂内に、奇妙な緊張感が漂った。

「サラとリリアさんが、どうやら管理局と通信出来ない状態らしく、ダンジョンマスター達と、目下今後の身の振り方の相談中です。すぐに相談が終るかもしれませんし、数日かかるかもしれませんが…出来ればこの機会に、俺は覚醒への道を一歩進みたいと思います!」

 いや、多分一歩進んだら覚醒なんだろうとは思うんだ。

 多分、誰も人の領域から踏み出す事が出来無いからこそ、覚醒出来ないんだと思うんだよね。 

 流石にいつもと違い真面目な俺の顔と言葉に、さらに緊張感が高まった。

 具体的には嫁ーずの間に。

 多分、俺が何を言いたいのか気が付いてるんだろう。

「なので、覚醒するために、是非とも皆さんに協力して頂きたい事があります!」

 さあ、言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞ言うぞーーーーー!

 嫁ーずよ、心して聞くが良い!

 これが超重要なお話なのだ!

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