第1151話  俺は差別などしない

 照明が点いたとはいえ、夜の寝室で銀ピカ鎧の俺と、メイド服のJCにしか見えないサラが向かい合って床に座る。

 う~~む、第三者から見たら、もの凄くシュールな光景だ。

 

「んで、こんな夜更けに一体どんな話があるんだ?」

 俺達がこっそり管理局を敵認定している事には、まだ気付いていないはず。

 あれはボーディ達の製造した怪しい薬という名のナノマシン的な何かで対策してるしな。

 それ以外でだと…何かあったかなぁ…はっ!

「ま、まさか…お前達…」

 俺がそう言った瞬間、今まで半ば俯いていたサラがバッと音がするぐらいの勢いで顔を上げた。

「大河さん、分かったんですか!?」

「ああ、お前の悩み…俺には痛い程に伝わって来たよ…」

 うむ、このニヒルさはなかなかに恰好良く無いだろうか?

 鎧で顔は見えないけど。

「さ、流石です! このままだと私は…」

 またサラが泣きだしそうだ。

 いくら敵だとはいえ、長年連れ添った…とはちょっと違うな…知った仲だ。

 ここで多少の力になる事は吝かでは無い。

「ああ、ヤバいだろう」

「分かってくれますか!?」

 こんな簡単な事、分からいでか。


 長期間、父さん達と調査隊という名目でリリアさんと2人きりだったんだ。

「うむ。このままリリアさんに調教されたら、変な性癖に目覚めそう…いや、目覚めてしまったんだろう?」

「…………はぁ?」

「俺は差別などしない男だから、お前とリリアさんの性へ…いや、趣味についてとやかく言うつもりは無い。だが、リリアさんは、よりハードに責める様になって来て、お前はそれについて行けない…と」

「…いえ、あのね…?」

「だが、嫌よ嫌よと言いつつも、だんだんお前も気持ちよ…うぉっほんあ! 快か…ごほんごほん! そっち方面も良いと考え始めた…そうじゃないな、身体がそっち方面を求め始めたんだろう?」

「大河さん、何を言って…」

「さっきも言ったが、お前がそっち方面の趣味に目覚め、且つ身体がさらに強い刺激を求め始めたとしても、それを咎めたり差別したりはせん! きっと2人はこの先、止めどない快楽の海に沈んでゆくかもしれない。更なる刺激を求め続ける2人には、あの地室では危険だろう。主に声が響いたり地上に漏れ聞こえたりする可能性のあるあの地下室では」

「………えっと…大河さん?」

「地上に夜な夜な強烈な鞭の音とお前の喘ぎご…悲鳴が響き渡っては、コルネちゃんやユリアちゃんの教育に悪い。しかも、我が嫁ーずがそんな声を聞きつけようものなら、さらに俺への攻撃の手が強まるかもしれない!」

「こいつ、何言い出してんだ」

「うむ、早速明日にでも、完全なる防音工事をドワーフ親方に発注しよう! 工事完成までは欲求不ま…不便をかけるだろうが、必要であればホテル・ニュー大滝の部屋を押さえておくし、休暇もやろう!」

「休暇は嬉しいっすけど…何言ってんすか?」

「俺って思いやりのある雇い主だよなあ…うん」

 俺が腕を組んで、うんうんと頷いていると、ズパパパパパパーーーーン! と残像を残す勢いでハリセンの連打が俺の頭に降り注ぎ、部屋が震えるかという程の大声で叫んだ。

「どこに思いやりがあるんだ、このお馬鹿ーー! 完全に思い違いなんだよーー!」

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