第1102話  雑念が多すぎる!

「んで、結局何の予感なんだ?」

 昼なお暗い森の中で、ひよこが嘴を突き合わせて話し合っていた。

「やっと話が進むのか…はぁ…、まあいいや。あのな、あいつがとうとう解脱しそうな予感がしたんだよ」

「「「「「へぇ~」」」」」

 ひよこ達にとっては、結構大事な予感であるにも拘らず、その他大勢のひよこの反応は意外と冷めていた。

「え、反応それだけ?」

 予言めいた事を言ったひよこは、その反応の薄さにちょっとびっくりしていた。

「いやだって…いつかは解脱するのなんて、わかってた事じゃん」

「そうそう。今更解脱しそうだとか言われてもなぁ…」

「確か、ちょっと前にもこいつ同じようなこと言ってたよな?」

「俺としては、あっちのあいつがこの地に何か送り込んで来るとか言い出すかと思ったけど」

「それな! あいつが解脱するのなんて分かってた事だし、そもそも全然具体的な日時も出て無いし」

「うむ。とうとう解脱しそうって、結局何時の事なんだよ?」

 ぴーちくぱーちく、口々にひよこ達が文句を並べたてる。

「う、うぇ!? いや、その…具体的には、50年以内かなぁ…って」

「「「「「アホか!」」」」」

 とうとうが差す時期が50年以内…そりゃ誰が聞いたって、アホかと言うだろう。

「ぁぅぅ…なんかそんな気がしたんだもん…」

「「「「「男がもんとか気色悪いわ!」」」」」

 散々な言われようである。

 まあ、森の中でひよこが集まって話しているだけの事なので、誰の迷惑にもなっていないのが幸いか。

 いや、もしも誰かがこの光景を見ていたとしたら、一体どのひよこが何を言ったのか頭を悩ませるに違いない。

 それほどに瓜二つなひよこ達の話は、まだまだ続くのであった。



 その頃、遠く離れたダンジョン大陸の塔の上層階で、俺は1人で汗を流していた。

 最近は朝はゆっくりと鍛錬できない時間も多いので、こうして空いた時間を鍛錬に当てているってわけ。


 俺が暇になった理由は、ミヤとヒナに我が家の女性陣がお勉強part.2を始めたから。

 さっきまで、対母さん用の知識を教え込んでいたのだが、今からは俺を取りまく人間関係を教えるとか。

 まあ、確かにメリルなんて元は王女様なんだから、王家の事にもある程度は詳しくならなければならない。

 ミレーラはアーテリオス神国の歴史だとかその他諸々を教えると息巻いていたし、何故かミルシェは野菜の育て方を、マチルダは徹底的に計算能力を向上させるとか言っていた。

 イネスと妖精達は、それをぼう~っと眺めているだけらしいけど、女性らしい話方とか考え方を教えようと思っているとか。

 イネスにそんな事出来るんだろうか?

 

 ま、それはいいや。 

 とにかく、ここに来てからというもの、本当に色々あったよ。

 このパンゲア大陸にやって来てから、そんなに時間は立っていないはずだが、精神的にかなり疲れた。

 まあ、きちんとLガールが別次元で待機してくれる様になったことは、非常に喜ばしいことだ。

 これは調整してくれたモフリーナ達に礼をせねばなるまい。

 だが…だがしかし! 元々、調整するのはミヤだけだったはず。

 おまけでヒナが付いて来てしまったのなんて、完全に予想外だ!

 何でLガールが2人に増えるんだよ! 

 あいつは1人でも十分すぎる程の攻撃力を持ってるって言うのに、もう1人増やしてどーしようって言うんだよ!

 この星を滅ぼすつもりなのか?

 いや、この星を造り出せるほどの技術力をもった管理局が相手なら、確かに戦力増強は望ましいことだ。

 だけど、実際に敵の戦力なんて分からない現状で、あんな対抗戦力を準備しておく必要があるんだろうか?

 

 そんな事を考ていたのだが、これではいかん! 雑念が多すぎる!

 頭をブルブルと振るって、雑念を頭から追い出して、深く深く集中だ!

 俺は空手の型の基本を思い出しながら、ゆっくりと拳を目の前に突き出した。

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