第1038話 …ょぃしょ…
俺が顔からばったりと倒れたもんで、家族全員が駆け寄って来た。
締まらない帰宅の挨拶をした俺が、倒れた理由を説明したのたが、全員にもの凄く呆れられた。
ちなみに、場も落ち着いたので、全員が変身を解いた。
だが、俺が変身を解いたも関わらず、ミヤはずっと背中にくっ付いたまま。
最初に俺をグルグル巻きにした帯は既に解かれているが、何故か背中にくっ付いて離れなかった。
アーデ達がミヤを俺から引き離そうと、全力で引っ張っぱるが、それに抵抗する様にミヤが俺の首に回した手に力を入れたせいで、俺の首が締まって息が出来ずに死にそうになった。
それを見てアーデ達も諦めて(目は諦めてなかったが)引っ張るのを止めたが、本当…こいつどうしたらいいんだろうなぁ…。
「それで…トールさま。その子はどんな魔法を使ったんですか? あんな勢いで飛び上がるなんて、考えられません」
先程の飛行と試射の実験を見ていたマチルダからの質問だ。
なので、俺は真摯にそれ関して答えを返した。
「うん、マチルダよ。ミヤに何度訊ねてもちゃんと答えてくれないのだ。なので、俺にも分からんのだ」
俺の返答に、居並ぶ家族達は、とても微妙な顔をしていた。
ちゃんと答えましたけど、何か?
だが、俺の答えに不満だったのだか、ナディアが声をあげる。
「マスターにも分からないって、おかしくないですか? 確か、そいつはマスターの指示に従うのですよね?」
ナディア君、そいつって、ちょっとお口が悪いよ?
「そうですそうです! いつまでのマスターの背中に乗ってるのは納得きません!」「「そうだそうだ!」」
アーデ君、その主張はナディアの質問とは別問題な気がするんだが? あと、アームもアーフェンも煽るな。
「指示に従うって、ボーディには聞いたんだけどなあ。でも、なぜか説明求めてもちゃんと答えないんだよなぁ」
何でだろうなあ…。後でボーディに相談してみるか。
「ちなみに、今も何度も離れろと言っているんだが、全然言う事を聞いてくれんのだ」
俺がそう言うと、ミヤは両手の更に力を込めて、俺の首にしがみ付く。
前世の時の俺の子供達も、おんぶしたら喜んで降りたくないって泣いたよなあ…。
「まあ、ミヤの事はまたダンジョンマスターさん達に確認するとして…。やはり私が気になるのは、先程の飛行に関する事ですね。魔法の様にも見えますけれど、トールさまが魔法を使われている時とは、何か違う感じがしました」
メリルが難しい顔でそう言った。
俺が魔法って…それ、ただ精霊さんにお願いしているだけど、厳密には魔法なんて俺…使えませんけど…。
「確かに。お兄さまが魔法を使われる時には、精霊の気配が感じられるのですが、先程はそれが全くありませんでした」
コルネちゃんは、変身したら魔法が使えるんだから、精霊さんの気配も感じられるのだろう。
俺は断言出来る。ミヤの能力は魔法では無いと。
一応、俺も魔素を感じる事も出来る(はず)だし、精霊さんともコミュニケーションを取れる。
そのおかげで魔法もどきは使えるのだが、さっきのミヤの動きの何処にもその気配は無かった。
なので、あれは明らかに魔法では無く、魂のエネルギーを元にした能力であると断言できるのだ。
『…ょぃしょ…』
前世で確か何かの雑誌でこの言葉を聞いた気がする。
「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」
俺のその呟きは、何故か全員の耳に届いていたらしい。
『ょぃしょ…ょぃしょ…』
そんなに大きな声では無かったのだが、呟きながら顔を上げた俺は気が付いたのだ。
そう、気付いてしまったのだ。
『…ふぅ…』
妙にこの場が静まり返っていたいた事に。
「へっ?」
思わず家族達の顔を見まわしたのだが、全員の視線は俺のすぐ横に集まってた。
何時の間にやら俺の背から降りて、額の汗(出てないけど)を拭うミヤが立っていて、それを見ていたのだ。
「えっ?」
アーデ達が全力で引っ張っても離れなかったのに、何でこのタイミングで?
あ、もしかしてさっきの俺の呟きって、もしかして誰も聞いてなかった?
ミヤが降りて来たのを全員で見てただけなのか?
「あ、トールさま…何か仰いましたか?」
メリル君、ちゃんと聞いてくれなきゃ困るなぁ。
俺、結構頭良さそうな事を言ったのに…。
※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版
https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790
旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました
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