第1035話 空の1点
刻々と近付いて来る大地は、俺も初めて見る大迫力の映像だ!
前世のTVとかで芸能人がカメラ付きでスカイダイビング体験した時の映像とかは見た事もあったけど、やっぱ映像で見るのと実際に体験するのとは大違いだよな!
いやぁ~、本当に星って丸いんだなあ! それに…多分、青いし!
宇宙飛行士とかも、この光景を見たら感動するとか言ってたもんなあ。
まあ、シールドによって押し潰されて高温になった灼熱の大気がプラズマ化しどいんどん後方に流れていく。
シールドが真っ赤になったり発光したりしてて、ちょっと結界が発光してるんで見にくいんですけど…。
そういや、スペースシャトルとかも大気圏突入の時って、プラズマ化した大気のせいで通信障害起きるとか聞いたような。
ま、ともかく俺は今、間違いなく流星となっているのだ! ひゃっほー!
そんな事を考えてた時もありました。
体感的にはもの凄くゆっくりに感じるけど、よく考えたら減速したとは言え、秒速2~3kmぐらいは出てるはず。
思った以上に減速されずに落下し続ける俺。
どんどん迫りくる大地。
こ、これって、本当に大丈夫なのか!?
『もうすぐ成層圏に入る。オゾン層を超えたら安心』
いや、それのどこに安心出来る要素が?
『オゾン層を…超えた』
あ、はい…良く分からんうちに、オゾン層越えたらしい。
『それじゃ、もう少しでランドセルを大気圏モードに移行して。通常飛行を開始する』
え、今までのは何だったの? 飛行じゃ無かったのか?
『上昇する時は、超加速推進モード。奥歯横に加速装置が仕込んであって、舌でモード変更可能』
待て待て、それじゃ説明になってねーよ! ってか、加速装置って何だよ、それヤバい奴なんじゃねーのかよ!
いや、加速推進モードってのが、そもそも分からんのだけど?
『説明が面倒。だらだら科学的考証に基づいた説明してると、読者が飽きる』
読者が飽きるって、何の話だよ!
ってか、そんな便利な装置があるなら、大気圏突入ももっと簡単にできるんじゃねーのか?
『突入の時は無理。減速方法が無いから』
……加速だけなら出来るって事なの? もういいや、俺には良く分かんねーし…。
『もういい? それじゃ通常飛行モードにチェンジ』
もう良く分かんないけど(だって背中は見えないから)、ミヤは通常飛行モードってのになったらしい。
はぁ…なんか、めっちゃ疲れたよ…でも、ずっと見たかった景色を見ることができて、すごく幸せなんだよ。
ミヤ…疲れたろう? 僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ…ミヤ…。
脳内で懐かしいアニメのラストのワンシーンを思い出している間にも、大地はもうどんどん目の前に迫って来ていた。
「あ、あれじゃないでしょうか!?」
トールヴァルド邸のネス湖に面した裏庭では、変身したマチルダの超高性能な光学観測装置によって、昼間の流星となったトールヴァルド&ミヤの姿が捉えられていた。
「え、どこですの?」
変身をしたままのメリルでも、宇宙から落ちてくる人の姿など、そう簡単に捉えることはできない。
「おお、あれではないか?」
イネスが何とかその姿を捉えて、空の1点を指さした。
太陽の眩い光溢れる青い空の中、よくよく目を凝らしてみると、確かに光り輝く何かがある。
そしてそれは、間違いなく急速にこの場に向かって落ちて来ている。
「こっちに向かって…落ちて…る?」
イネスの指の先で光っていた物体の光が徐々に消えていく。
「もしかして、燃え尽きたの!?」
ミルシェがとんでもない事を言ったが、実際トールヴァルドは某アニメの主人公が天に召される寸前のシーンを回想していた。
そう、(精神的に)燃え尽きる寸前だったのである。
「不吉な事を言っては駄目ですよ」
ミルシェにそう言うメリルも、実は光の収まった物体を見て、ちょっとそう思っていたりもしてたのは内緒だ。
段々と近づいて、はっきりとその姿が全員の肉眼でも見えるようになって来た。
真っすぐにネス湖に向かって落ちて来ていたその物体が、不意にその軌道を変えて上空をゆっくりと旋回し始める。
そして、大きく弧を描く様に回りながら、徐々にその物体が速度と高度を下げる。
マチルダがその姿を観測してから、およそ5分後、ミヤをおんぶしたトールヴァルドが、静かにネス湖の湖畔に降り立った。
そして、裏庭に並ぶアルテアン家の面々に、
「ただいま」
そう言って、パタリと倒れたのだった。
※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版
https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790
旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました
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