第1009話 正式名称は…
「どうやら、メリル達のテストも上手くいった様だぞ」
王城に宿泊するメリルから、往路のホワイト・オルター号内での少しだけ危険な単語を混ぜた会話で、サラやリリア達が何の反応も示さなかったと連絡を受けた俺は、邸に残り食堂でメリル達の報告を待っていた面々にそれを伝えた。
何故か夜になってもパンゲア大陸に帰らないボーディ達も居たが、まだ何か用事でもあったっけ?
「そうですか。これで、次の作戦に移る事が出来ますね」
妙にやる気になっているミルシェだが、君は妊婦なんだから、荒事になったら留守番なんだけど…。
「まぁまぁ、そう逸るでない。そもそも奥方は身籠っておるのじゃろう? ここから先は、大人しくしておるがよい」
俺の心を読んだわけでは無いだろうが、ボーディがやる気満々なミルシェに一言物申した。
「そうだぞ、ミルシェ。我々に任せよ」
何か、普段はポンコツなイネスが、ちょっと偉そうだ。
「そうですね。今のミルシェさんは、無事にトール様のお子を産む事だけを考えてください。無茶や無理はいけません」
マチルダも、結構強めの口調でミルシェを注意した。
「わ…私も…頑張ります!」
ミレーラさん、何を頑張るんですか? 次の作戦? それとも…妊娠?
「わ、分かりました…。そうですね、確かに流れたりしたら大事ですね。大人しく皆様の作戦の成功をお祈りしております」
渋々といった感がありありと出ているが、一応ミルシェは納得して引き下がった。
俺だって、妊婦に無理をさせる気は無いからな。
子供が出来にくいこの世界だから、余計に流産とか絶対にして欲しくないしさ。
「他には、何か報告は無かったかや?」
メリルとの連絡で、他には何かなかったかと訊くボーディ。
「いや、他には特に報告する様な内容は無かったな。いや、国王陛下以下、王城に居た王族は全員あの薬を飲んだらしいぞ」
まあ、管理局やサラ達が、遠く離れた王城の様子をチェックしているとは思えないが、念のためと持たせた薬。
きちんと飲ませる事が出来た様だ。
「本当は、ミレーラ、マチルダ、イネスのご両親たちにも飲ませたい所だけど、急に全員が理由もなく帰郷するとかしたら、かなり怪しいから今のところは我慢な? ミレーラは、ご両親がリーカに住んでるから、出来ればこそっと飲ませてくれ」
嫁ーずの中で、最も近くにご両親が住んでいるのはミルシェだ。
アルテアン領の領都にある父さんの邸のすぐ近くに住んでいるんだから、今度妊娠の報告ついでに顔見世って感じで帰れば自然な感じゃないかな。
「はい、わかりました。明日にでも行ってきます」
ミルシェが出かける時には、護衛って事でアーデ達も同行させるとしよう。
「まずは、管理局への情報漏えいを遮断するための薬の配布は一段落したという事で、次の作戦へと移行しよう」
さっきのミルシェの言葉ではないが、取りあえず作戦は次の段階へ。
って、次の段階って何したらいいんでしょうか、ボーディさん?
「そうじゃな、では次の作戦の前に…お主等に渡したい物がある。モフリーナ、例の物を配ってくれるかの?」
モフリーナは、笑〇の山〇君じゃないんだから…いや、配ってくれるのは座布団じゃないよね?
「はい、ご用意出来ております」
そう言って、モフリーナが目を閉じると、暫くして食堂の扉が勢いよく、ばーーーん! と開いた。
「おまたせちまちたー!」「……」
そう言って入って来たのは、もふりんとカジマギー。
デッカイ木箱を2人で重たそうに持って、食堂に入って来た。
「おお、待っておったぞ、お前達。ささ、例の物をこちらへ持ってくるが良い」
ボーディがちょいちょいっと二人を手招きすると、んしょんしょと2人が(声は主にもふりん)が木箱をボーディの前に持って行く。
あの木箱、どっかで見た様な…って、もしかしてアレか?
「お主は中身を知っておろう?」
ボーディが俺の表情から、俺が気付いたのを察したのだろう。
「俺の予想通りの物なら…アレ…か?」
俺の答えに、満足そうに大きく頷くボーディ。
「そうじゃ、アレじゃ。いや、アレの完成形じゃ。さ、カジマギーよ、箱を開けるが良い」
そう言われたカジマギーは、もふりんと協力して木箱の蓋を留めていた金具を外した。
「では、開封の儀!」「おーぷん!」
カジマギーさん…あなた開封の儀って、本来の意味で使ってないでしょ? ヲタク用語として使ってるよね?
もふりんも、その掛け声は間違ってないけど、何か違う気がするの…俺。
食堂に集まった全員の目の前で、その木箱の蓋は開けられた。
そして、俺の予想通り、その中身は例の日本人形っぽい眠る女の子であった。
「これが我らの技術の結晶である、トールヴァルド専用、決戦用特殊武装Mark.Ⅱじゃ!」
スポンサーの意を組んで、アニメ制作会社がアップグレードしたとか何とか無理やりな言い訳で番組途中で主役機を変えた時の名前みたいだな…。
「正式名称は、決戦用特殊兵装・重戦機LガールMark.Ⅱじゃ!」
「止めろーーー! その名前はギリギリすぎだろーーーが!」
あまりの名称に思わず叫んだ俺は、絶対に悪くないはずだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます