第1010話  意味あったんだ…

「いきなり、何じゃ? 騒々しい男じゃのぉ」

 俺の叫び声に文句を言って来たのは、誰あろうおかしな名称を口にしたボーディ本人その人であった。

「いや、危険だろうーが、その名前は!」

「じゃから、何をお主は言っておるのじゃ。妾の名づけに何か問題でもあるのかや?」

 くっ…こいつ、悪びれる様子もなく、平気な顔で問題あるか…だと?

「その名前は、非常に危険な名前なんだ! そもそも、どういった経緯でその名前にしたんだよ!」

「リトルガールじゃ長いじゃろうと思い、略しただけじゃが?」

 くっ…リトルガールでLガールだったとは…。

「いや、じゃぁ何でMark.Ⅱなんだよ! Mark.Ⅰは何だったんだよ!」

「お主に最初に見せたボディがMark.Ⅰじゃぞ?」

 ぐっ…あれが1号機だった…だと?

「待て待て、あれは太陽電池がどうとか改造するって言ってたじゃないか!」

「いや、改良型を持ってきておる。よく見てみぃ、頭に陽光をエネルギーに変換するシステムが付いておるじゃろうが。そもそも改造じゃったら、Lガール改じゃろ?」

 確かに…あれを改造したんだったら、Lガール改だな…正論だ…。

 黒いおかっぱ髪を良く見ると、確かに銀色に輝くカチューシャが…って、カチューシャしただけなんじゃねーの? これが光り輝く太陽電池?

「いやいやいや、んじゃ重戦機って何だよ!」

「なるほど、確かにこのままでは重戦機とは呼べぬ」

 ほら見ろ!

「じゃが安心するが良い。重戦機と呼ぶに相応しいオプションも用意しておるでな」

 お、オプション…だと?

「身の丈よりも長い砲身で魂のエネルギーを質量に変換して撃ちだすエネルギー砲と、同じシステムで空を飛ぶための飛行ユニットじゃ。まあ、飛行の為に幾分の形態変化もせねばならぬがのぉ」

 …それって装備したら、かなり危険なのではないでしょうか? しかも変形…。

「今は休眠状態じゃ。起動させるときちんとオプションが隠されておる別次元に移動して待機するからの。勿論、お主の思念波でいつでも呼び出せる」

 もう、俺は余計な事は言わない…。

「特殊兵装と言うのも、きちんと理由があるのじゃ。このLガールは一見して人族の幼女に見えるが、実は超高密度のナノマシンの集合体でもあるのじゃ。じゃから、お主の変身した…名前は何じゃったかのぉ…とにかく銀ピカ鎧を強化する事も出来るのじゃ」

 銀ピカ鎧って、お前何て表現すんだよ…。


「そうそう、忘れるところじゃった。他の皆にもこれを渡そう」

 そう言ってボーディが皆の前に突き出したのは、あの掌に乗るほどの大きさの金色の直方体の物体。

「えっと…これは?」

 マチルダがそれを不思議そうな顔で見ながら、ボーディに問いかけた。

「うむ、これの名は、決戦用特殊兵装・Lシリーズじゃ。こいつは金じゃから、ゴールドLとでも呼ぼうかのぉ」

 ゴールドLって…まさか、あれの事じゃないよな? Lシリーズなんだから、なんちゃら軍団とかでもないよな?

 LシリーズのLって、ちゃんとした意味があるんだよな?

「もちろん、色と形状は違えど何体か準備しておる。これはあくまでもトールヴァルドの変身道具を持っておる者達の装備を補助するための特殊兵装じゃから、今回はドワーフの娘っ子には準備はしておらぬが、勘弁してくれ」

 ボーディがそう言って、ドワーフメイド衆に頭を軽く下げるが、別に誰からも文句は出なかった。

「まあ、このゴールドLの色違いは、ブルーLじゃとかレッドLじゃとかあるが、それぞれの適正に合わせた調整をしておる。普段はLガール同様に別の次元に待機しておるが、お主等が呼べば虹色の異次元空間を通り抜けて来るゆえ、安心するが良い」

 著作権的に安心できる要素が無い気がするのは、俺だけだろうか?

「変身した各自の鎧の特殊能力を強化補助する様に調整しておる。こ奴のLガールは単体でも戦力となるが、このゴールドLは鎧の強化用じゃで、単体では何の能力も持たぬことを忘れぬ様に」

 ボーディの説明に、嫁ーずはふむふむと頷く。

「ん? って事は、俺のLガールだけが単体運用できるって事なのか?」

 え、何で?

「うむ、それは魂のエネルギー量の関係じゃ。お主は桁違いのエネルギー保有量じゃからの。このLガールの大きさでもそのエネルギーを十全に使えるという訳ではない。おお、心配しておるのは、単体で運用できるかどうかという事かや?」

 いや、そこは訊ねてないんだけど…。

「これもエネルギーの問題じゃな。無論、お主とのパスが繋がっておるから、まずLガールがエネルギー切れになる事など、まず無いじゃろう。じゃが、奥方殿達のエネルギー保有量ではゴールドL程度とはいえ、単体で運用するのも難しいでの。あくまでも鎧の補助強化にしか使えぬのじゃ。デザインはお主の好みに合わせておる」

 何か、妙にボーディーが真面目な顔で説明してくれたので、嫁ーずは雰囲気に流されて納得しちゃった感じだ。

 ってか、俺の好みのデザインってとこに納得したんじゃないよな? 違うよな?


「Lシリーズは、後程奥方殿各人にお渡ししよう。Lガールは起動させ次第、お主に引き渡そうと思う」

 はぁ、そうですか…もう好きにして下さい。

「起動するには、このLガールに名前を付ける必要がある」

「名付けか…」

 日本人形みたいな見た目だけど、背丈はユリアちゃんよりちょっと小さいだけ。

 見た目には可愛らしい容姿なんだけど…名前かぁ…。

 ふと食堂内を見回すと、全員が俺の名付けを固唾を飲んで待っていた。

 え、じっくり考えたりしちゃだめなの? もしかして、急がなきゃいけない感じ? 

 えっと、どうしよ、どうしよ…えっと、日本人形みたいだし…可愛いけど…。

 えっと…あ~~、もう! 俺にネーミングセンスなんてねーんだよ! 

 どうすべ、どうすべ…あ~、ん~、え~~~~っと…黒い着物で女の子だから…えっと…。

「ミヤ…」

 美しい夜で、美夜ってどうかな…な~んて…。

「ほう、ミヤか。覚えやすく呼びやすい良い名じゃ」

『いい名前だと思います!』

 え、まさか、今ので決定? 

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