第1003話  約50兆倍

 ストレートに話すといっても、言えることと言えない事があるので、皆に言える事だけを伝えねば。

 まずは、サラとリリアさんの事。

 彼女達は、聖なる女神の眷属たる俺の補助の為に、女神ネス様が遣わしてくれたと、全員が思ってる。

 なので、まずはそこから説明しないといけない。

「皆に伝える事があります。皆は聖なる女神ネスの存在を信じているだろうけど、実はそんな女神は存在しません」

『えーーーー!?』

 俺の言葉に、全員そろって驚愕の声をあげた。

「ちなみに、太陽神、月神、大地神も、実際にはいません!』 

『えーーーー?』

 またも、驚天動地って感じの声をあげた…が、若干声のトーンが下がった?

「女神ネスの像も、うさ耳太陽神も、きつね耳月神も、くま耳大地神も、全部俺の創り物です」

『えっと…』

 あ、めっちゃトーンが駄々下がり…。

「ちなみに、ネス様からの神具と言っている物も、全て俺が創った物です」

『……』

 とうとう、黙っちゃったよ…。


 ん? ミルシェがシュピッと手を上げたけど、何か聞きたいのかな? 許可しましょう。

「はい、ミルシェさん」  

「えっと…私達が持っているG戦隊ジェムファイターもコルネちゃんやユリアちゃんやユズカとユズキや御義父や御義母の変身セットもウルスラグナも全部ですか?」

 一息で言ったな…そんな慌てなくていいから、息継ぎしながらゆっくり話なさいって…。

「ああ、うん。ホワイト・オルター号も、父さんの邸の大樹もそうだし、この場に居るナディアやアーデ、アーム、アーフェンや、妖精にもっち君も、ネス様関連は全部そう。もっと言えば、パンゲア大陸とダンジョン塔も、俺が創ったといっても過言では無い…かな」

「「「「トール様は、私達の創造主です」」」」

 ナディア達が立ち上がって声を揃えて宣言? した。

 妖精ともっち君は、その上をクルクル飛び回っている。

 いや、ナディア以外は大樹が生み出した物で、直接俺が手掛けたわけじゃないからね?

「ま、まさか…トール様、この邸も?」

 ミルシェが何かに気付いたように呟いた。 

 そうだよねえ、ミルシェは俺が子供の頃に、この邸をあっという間に建てたの知ってるもんねえ。

「ああ、この邸もそうだが、例のホテル・ニュー大滝もそうだな」

 俺がそう言うと、全員が食堂をキョロキョロと見回した。

「あとは言わなくても気付いたろうけど、ブレンダーやクイーン達もね。ちなみに黒猫ノワール君は、モフリーナのダンジョンから派遣されてきただけで、俺とは無関係だよ」

 一応、ペットについても説明せねば。猫又のノワールが俺とは無関係な事も忘れちゃいけない。

 俺の言葉と共に、全員の視線が食堂の床に寝そべるブレンダーと、その背中に乗っかっているクイーンに注がれ、次いで丸くなって窓の側で寝ているノワールへと。

「…ノワールちゃんは…違うんですね…」

 いや、そんなに驚く事でしょうか、ミレーラさん?

「よく考えてみると、確かにノワールは戦闘には一切参加してませんでしたね…納得です」

 戦闘に参加してたかどうかで、マチルダは納得した様だ。 

「まあ、そうだね。ノワールは何かあった時にモフリーナへと連絡を取る事が出来る、いわば連絡員って立場だね。ちなみに王都の父さんの邸にコルネちゃんが連れて行ったクロちゃんも同じね」

 多分、ほとんどの人は忘れてるだろうけど、クロちゃんも忘れたらだめだよね。

「って訳で、ノワールとクロちゃんは別として、ほとんどの物は俺が創っている。この物を創造する力は、実は管理局の便利グッズによる物なんだけど、それをするために俺の魂のエネルギーってのを使ってるんだ」

『魂のエネルギー?』

 また元気に声を揃えてきたなあ…。実は皆この状況を楽しんでたりするのか?

「そう、魂のエネルギー。実は、俺もはっきりとは分からないんだけど、俺の前世のそのまた前世…なのかな? その時に俺の魂は巨大なエネルギーの一部だったらしい。とある事故で、そのエネルギーが何個にも分かれたらしいんだけど、その内の1個が俺の肉体に宿ったらしいんだ。実は皆も魂のエネルギーをもってるんだけど、それのおよそ…えっとどれぐらい?」

 正確になんて分からん。ここは分る人に話を振ってみよう! ってことで、ボーディさん、おねしゃす!

「うむ、こ奴の魂のエネルギーは、元々そのほとんどを封じられておったのじゃ。これは、現在の肉体の成長と共に徐々に解放されておるで、日々解放…つまりは保有量が増え続けておる。現在では、ざっと一般の人に対して、約50兆倍はあろうな」

 ボーディの言葉で、この場はしーんとなったけど、そりゃ仕方ないだろう。

 だって、俺を含めて全員が、魂のエネルギーが一般人の約50兆倍って想像もつかないからな。

 何となくその巨大さは理解してるみたいだけど、ちょっと困惑気味なのは当然かな。

「ちなみに、お主等…あ~、ドワーフ族を除いた残りじゃが、こ奴の影響で魂のエネルギーが若干増えておるでな。具体的には、寿命が100年程度伸びるだけじゃが…」

『100年ーーーー!?』

 嫁ーずだけでなく、俺も顎が外れそうなほど大口を開けて叫んでしまった。

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