第986話 ヤバイかもしれん!
「それで、御義母様とユズカの御子には、どういたしましょうか?」
「どうって?」
赤ちゃんに一体何を?
「いえ、ですからそのお薬をですね…」
ああ、そう言う事ですか。
とは言っても、赤ちゃんっていうよりも、まだ産まれたばっかりの新生児だぞ?
それに薬を飲ませる必要があるのか? 言葉も喋れないのに…。
前世でだって、新生児に薬って言ったら、点滴とかチューブで井の中に直接流し込んだりしたんだぞ、お医者さんとか看護師さんが。
なのに、カプセルっぽいあんな薬を飲ませる必要があるだろうか。
そもそも、目もまだ開かない赤ん坊なんだから、そこまで気にしなくてもいいんじないだろうか…いや、待てよ?
確かに生まれて間もない赤ん坊では、会話の内容を正確に聞き取ったり、理解する事なんて出来ないかもしれない。
しかし、耳から脳へ、音としては情報が入る可能性は無くは無いだろう。
もしも管理局が、赤ん坊の脳にもアクセスできるのだとしたら?
その思考は読み取れなくとも、音として脳に入っていた周囲の会話を読み取られるかもしれない。
そう、思考を読むのではなく、単なる会話の中継器代わりに使う事が出来る可能性は間違いなくある。
確か、胎児のころは母親の心音だけでなく、腹の外の音も胎児に伝わっていると聞いたことが有る。
あれは耳ではなく、母体や子宮・羊水を通していろいろな音を胎児の体全で骨伝導的に聞いているとか何とか。
ならば、今は耳が聞こえない…かもしれないけれども、空気の振動から赤ん坊に会話が伝わる可能性はゼロではない。
これは、用心するに越したことは無いな。
だけど…あの薬の用法・用量で、赤ん坊の事まで聞いてないぞ?
帰り際に、妊婦に使用しても大丈夫で、胎児に影響ない事まではこっそり聞いた。
だけど、赤ん坊自体に薬を飲ませるにはどうしたら良いんだろう?
薬を粉状にするとか? そんな事をして大丈夫なんだろうか…。
日本で薬をもらった時、砕いりしてはダメな薬が有るとも聞いたことが有る。
厳密には薬ではないだろうが、それでもやっぱ確認は必要だろう。
後でモフリーナに連絡して聞いてみよう。
「エド君とユズノちゃんに関しては、ちょっと俺も考えてなかった。後でモフリーナに確認しとくよ」
「そうですか、分かりました」
聞き分けのいい子は、大好きだよ! って、ちょっと違うか。
「ま、念には念を入れて…だ。出来る限り、サラヤリリアさんに見つからないように、こっそり飲ませてくれ。あ、あとその2人を変に意識したりして、逆に警戒され無いように。あくまでも自然に接してくれ」
「そう…ですね…。どうも意識してしまいそうです…気を付けます…」
まあ、それは当然意識しちゃうだろうけど。
「もちろん、薬を飲ませた全員に、この事は周知徹底をね」
「はい、もちろんです」
この後、ミレーラが上手く皆に薬を飲ませられるよう、俺がサラたちの注意を惹いておくとか、飲ませる時に相手にどこまで話すか、そしてこの密談の内容を誰かに聞かれた時の為、ミレーらのご両親と商売の話で…等と口裏合わせをしたりした。
よし、これで管理局対策は1歩前進かな。
あ、そだ…モフリーナに連絡して、あの薬を赤ん坊に処方するときの事を確認しなきゃ。
赤ん坊って、固形物を上手く飲み込めるんだろうか?
そもそも、管理局が赤ん坊を介して俺たちの会話を盗み聞きしたりするかも定かではないけれど。
いや、待てよ…?
エド君とユズノちゃんって、本当に普通の赤ん坊なんだろうか?
俺みたいに、生まれる前から意識とか前世の記憶とかあったり…しないよな?
げげげっ! 何か、めっちゃ気になってきた。
もしも前世の記憶とか持って生まれてきたりしたら…早めに飲ませないとヤバイかもしれん!
エド君は、父さんと母さんの子供だからって安心できんぞ?
だって、俺の両親なんだし、俺っていう前例もある。
ユズノちゃんなんて、ユズキとユズカって言う、転移者夫妻の子供なんだから、もっと危険かも!
こりゃ、急いでモフリーナ達に相談せねば。
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