第983話  ロリちゃうわ!

 ドワーフメイド衆の方言は、ちょっと何言ってるのか、俺には良くわからなかった。

 俺が困っている見たのか、メリルが事情説明をしてくれる事となった。

 いやいや、最初っから、君達が説明してくれたら良かったんじゃね?

 俺がドワーフメイド衆が何か違うと言ったときに、呆れた顔をしてないでさぁ。

 どうやら俺が知らない事情も、しっかりと把握している様だし。

 ってか、俺以外は、全員知ってるんだよな? 

 もしかして、ハブられてるのか? 泣くぞ? 俺、泣いちゃうぞ?

「何時トール様が気が付くか、全員で賭けをしてました」

 おいっ、メリル!


「実はですね、彼女たちはすでに何度も入れ替わってますよ」

「入れ替わって…何度も!?」

 メリルの説明を受け、俺は改めてドワーフメイド衆をまじまじと見た。

「ずっとお気付きになられなかった様で」

 なぜに、ぷぷぷっと笑うんだ、メリルよ。

 んな! 全員が笑いこらえてる…だと?

「ええ、すでに何度も。つい最近では、御義母様とユズカの出産に際して、経験豊富なドワーフの奥様方が駆けつけてくださいました」

「孫たじぃさぁ、任せておけにゃきいねぇ」

 メリルの話が終わるや否や、ドワーフのメイドさんの1人がそう言った。

 え、まご? 孫の事なのか? 

 って事は、あそこでちょこんと子供用の椅子に座ってご飯を食べてるドワーフのメイドさんは、おばあちゃんなのか!?

 え、マジ? 

 どこをどう見てもお子様にしか見えないんですけど! 

 お肌もツルツルで皴なんて全然無いぞ? 

 髪の毛だって白髪なんて一本も見えないし…染めてんのか?


 俺のそんな心情を読み取ったのかどうかは知らないが、メリルが説明をしてくれた。

「彼女達…いいえ、ドワーフさん達は、種族的に老化が遅いそうですよ。エルフさん、人魚さん、魔族さんも同じらしくて、最も活動に適した肉体年齢で数十年固定されるそうです。寿命は我々人族よりも長く、大体150年程度と言ってました。見た目老けるのは130歳を超えたぐらいからだとか」

 マジっすか!?

 え、ってことは、本当におばあちゃんなの?

 俺がドワーフメイド衆を見つめていると、

「めぐせだばねじゃか~!」「心は10代じゃし~」「まだまだ、イケてらだびょん?」「惚れただな?」

 何を言ってるのか分からないが、何が言いたいのかは理解できた気がする。

 だが…心は10代って何だよ! それに、惚れてねーし!

「…やはり…ロリ…」

 うぉー-い! 何言ってくれちゃってんだよ、ユズカ! 

「ロリちゃうわ!」

「というか、伯爵様って、彼女たちの名前を知らないでしょう?」

 俺の叫びと同時に、ユズカが真面目な顔でそう言ったけど…そういや、名前知らんな。

 今までも、ドワーフさんとかドワーフメイドさんとかしか呼んでない。

 そもそも、名前を何故か教えてくれなかったんだが?

「伯爵様が、何時まで経っても入れ替わりに気付かないから、あえて彼女達は名乗ってなかったとか」 

 …もしかして……ドワーフのメイドさんにまで弄ばれてたのか、俺?

「でも、またこっそり入れ替わるので、まだトール様には名前は内緒らしいですよ」

 ミルシェの追加情報に、俺はがっくりと肩を落とした。

 もう、好きにして…。


 結局、ドワーフメイド衆は誰も名前を教えてくれなかった。

 どうせ教えてもらっても、すぐに忘れるだろうって? 記憶力皆無だろうって? 母さんそれはちょっと失礼じゃないか?

 いつの日か、また俺に内緒でこっそりと誰かと入れ替わるのだろうが、次はすぐに見つけてやるんだ!

 え? どうせ見分けすらつかないだろうって? う、煩いわユズキ!

 ちゃんと見分けぐらいつくぞ! 

 え、さっきとドワーフメイド衆の並びが変わってるけど、どう変わったか分かるかって?

 んっと…あのメイドさんがあっちからこっちにきて、さっきはこっちのメイドさんがあそこに座ってた…どうだ、正解だろう!?

 違う? 間違い? 並びなんて変わってない? だ、騙したな、ユズキ! 

 やっぱり見分けついてないじゃないかって? 

 そ、そですね…。

 うん、大きな事言って、ごめんなさい…。


「あ、そうだ。ちょっと仕事で内密の話があるんで、ミレーラだけこの後執務室に来てくれないかな」

 食後のお茶を愉しんでいる最中、俺はメリル達と和やかに談笑していたミレーラに声を掛けた。

「あ、はい…あの…内密と言うと…もしかして祖国の事…でしょうか?」

 俺の言葉の中の内密にという部分で、何かを感じたのか、ミレーラがそんな事を俺に向かって訊ねて来た。

「あぁ~…ちょっと内密な話なんで、ここでは内容まではちょっと…」

 俺の奥歯に奥歯に物が挟まった様な俺の言葉に、嫁ーずも何か察した様だ。

 無論用事はミレーラの祖国である、アーテリオス神国に関する事などでは無いのだが、俺の家族であればそう考えるだろう。

 遠い隣国の出身のミレーラに内密の話と言われれば、ミレーラの過去を知る家族であれば尚更だ。

 この場に居る家族全員が、内密の意味をそう取るように暗に俺が匂わせた結果なのだが。 

「はい…では後程…」

 何を言われるのか不安そうなミレーラ。


 ふっふっふ。

 別に難しい事を言う訳じゃないよ。

 管理局…サラとリリアさんにも感知されずに、色々な話を出来るのが、現在はミレーラだけだって事だけなんだよ。

 さてと…ではこの後、ゆっくりと本題に入ろうかね。

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