第952話 あの地へと派遣
「随分と前置きが長くなってしまったが、つまりはあの魔法陣は魔法が使える何者かが起動させておるという事じゃ」
ほっほ~、なるほど!
「お主、この事態を軽く見てはおらんか?」
…おかしい…言葉にもしてないはずなのに…。
「いえ、トールヴァルド様は、口に出さなくとも何を考えているのか丸わかりなのですが」
「…バレバレ…」
モフリーナとモフレンダに追撃を喰らった!
「まあ、良いわ。その事実を突き止めた妾達は、現在もふりんとカジマギーをあの地へと派遣しておる」
「おいおいおいおいおいおい! そりゃ危険なんじゃないのか!?」
あのナディア達ですら、海の彼方に放り出されたんだぞ?
「問題はない…というか、抜かりはないのじゃ。魔法陣には間違っても触れささぬし、危険を感じたら即座にダンジョンへと帰還する様に言いつけておる。もっとも、妾とカジマギー、モフリーナともふりんは同じダンジョン領域にさえおれば、精神的につなげる事が出来るのじゃから、危うくなったら連絡ぐらい入ろうて」
「そっか…安全なんだな?」
幼女だけをあんな所に送り込むぐらいだから、それなりの安全マージンは取ってるんだろうけど…ちょっと心配だ。
「もちろんじゃ。2人には重要な任務を言い渡しておる」
「魔法陣の調査じゃねえの?」
え、違うの?
「あれもあるが、さっきも言った魔法陣を起動させた者…いや、正確には魔力を注入した者との接触じゃ。それが敵えば、あの地の謎は一気に解明されるぞ」
「おぉ!」
ボーディは、はっきりとそう言い切った。
あの後、色々と話をしたダンジョンマスターズは、カジマギーともふりんからの連絡が来次第、また話に来るそうだ。
すぐに魔法陣を起動した奴と遭遇できるか分からないとの事で、少し時間が必要らしい。
勿論、起動した奴を見つけたからといって、すぐに接触できるはずもなく、ちゃんと相手を見極めたうえで慎重に接触するらしいので、時間がかかるのは仕方ない事だと思う。
それで、本日は一旦ダンジョンへ行った後、パンゲア大陸へと戻るそうだ。
んで、帰る前にもう一度嫁ーずに挨拶するというので、取りあえず食堂へと俺達は戻ったのだ。
「では、奥方殿よ。くれぐれも色々と自重するのじゃぞ? すでにお主達だけの身体では無いのじゃからな?」
おう、ボーディ、良い事言うねえ。
「奥様、身体を冷やさぬ様に。あと、お酒類は子供に悪い影響を与える可能性が高いので、お控えください」
確かに確かに! 当然のことだが、きちんと注意してくれるモフリーナには感謝だな。
「…油…塩…ダメ…」
油分と塩分がダメって言いたいのかな、モフレンダさん?
3人のダンジョンマスターの言葉を、真面目な顔で受け止めたメリルとミルシェは、小さく頷いた。
「大奥方とユズカも、もう間近じゃろ? 何かあれば妾達は力になるゆえ、何時でも連絡して欲しい」
嫁ーずも母さんもユズカも、とてもにこやかにダンジョンマスターずにそれぞれ言葉を返した。
見送りは不要というボーディに甘える形にはなったが、食堂で別れた3人は、ドワーフさん達が先導して多分裏口へと向かったのだろう。
裏庭にはパンゲア大陸直通の扉もある事だしな。
ってか、あそこから来れるんだから、あっちの大陸との移動って一瞬だよな。
さて、姦しい3人のダンジョンマスターずが帰ったとはいえ、まだ部屋は姦しい…当たり前か。
だって、男は幾ら数えても3人で、対する女は、その4倍…。
一応、ドワーフメイド衆もオン案として数えてるぞ?
前に、ロリッ子だと口を滑らせたら、『わっちは立派な成人だで! せずげだだばセクハラだど!』っと、怒られた事がある。
うん、だって成人って言っても、俺の腰よりちょっと大きいぐらいなんだもん…JSぐらいにしか見えないもん…。
ま、まあ、そんなわけで、我が家は女性比率が高すぎる。
今日は来てないが、ここに人魚さん達がもしも仕事の手伝いに来たら…考えるだけで怖い…ぶるぶる…。
女子高に放り込まれた男子高生って、きっとこんな風に居心地悪いんだろうなあ。
特に、今は母さんという女衆のラスボスの存在が、俺の肩身を更に狭くさせている気がしないでもない。
うん、今日は目出度い報告を聞いたばっかりだから、少しぐらいはこの心地悪さも我慢しなければなあ。
あれ? そう言えば前世での俺は、2人の子持ちだった。
けど、嫁さんが妊娠した時…俺、何言ったっけ? どんな気持ちだったっけ?
…おかしいな…どうにも思い出せない…あれ、あれ、あれれ?
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