第934話 待て!
その日の夜は、ドワーフさん達による和食もどきが大々的に振る舞われ、騎士や兵士の皆さんに大いに喜ばれた。
特に主食である米飯は、つやつやぴかぴかに炊き上げられ素晴らしい味であることに加え、味噌や醤油を使った料理は、その味だけでなく、それらが炙られ焦げた香りまでが大好評であった。
よく異世界転移とか転生物などで日本食を求めてやまない人たちがいるが、俺の世界には普通に存在していたので助かる。
俺、味噌も醤油も造り方なんて知らんもん。
知識チートだとかで、色んな物を造り出してる奴が小説とかに出てくるけど、そもそもそんな知識を一般人が持ってるか?
何か発酵させて酒を造ったとかって話を読んだことあるけど、俺の周囲に造り方知ってる奴なんていねーぞ?
宝石…特にダイヤモンドをブリリアントカットしたとか、板ガラスを造ったとか言うのももた事あるけど、そんな知識や方法を知ってる奴が都合よく異世界転移とか転生するって変じゃね?
俺だって、社会見学で行ったところで見た海水からお塩を造る方法とか、趣味でばらしたりしてたバイクや車なんかは、ある程度は知識はある。
けど、例えばこれも小説で見たんだけど、石鹸作るのに塩析するって…知らんかったわ。
その小説の世界設定なんて地球の中世ヨーロッパ…いわゆるナーロッパだぜ?
ダイヤモンドのカットだって、どうやってやってるんだ? 確か高速回転してるダイヤモンドの粉末がついた砥石っぽい円盤で削ってたはずだけど、それを書いてた小説を読んでもそんな説明一切書いてなかった。
ただ、削って一番美しく光るカットをしたって…ありえんだろ! ナーロッパでどうやってカットしたかが重要なんだよ!
地球にだって遥かな昔からダイヤモンドって色々なカットがされたし研究されたけど、滅茶苦茶高度な技術だったんだぞ?
輝きを求めたカットの試行錯誤の末、やっとこさ17世紀ぐらいにブリリアントカットとそのカットの為の技術が誕生したんだ!
そんあ大層な技術を持った奴が、普通に日本に住んでるか? いないだろ!?
あ、ちょっと熱くなってしまった…。
とにかく、俺は苦労もせずに和食というか日本食というか、それに必要な物は手に入れる事が出来たって事。
大した知識も無いので、ドワーフさん達が頑張って稲作や大豆を栽培できる様に、森の樹々を切り拓き、農地開拓のために補助金をばんばん出すぐらいしか出来ないのだ。
以前、父さんが連れて来た小隊がこの砂浜で訓練した時も、やっぱ好評だったこの和食。
今回も、騎士や兵士さん達が喜んで食べてくれるのであれば、王都で売り出しても良いかもしれないな。
うん、一度母さんに相談してみよう。
随分、話しが逸れてしまったけど、大好評のBBQ大会は、結構夜遅くまで続いた。
どうも、日本酒っぽい例の米酒をドワーフさんが持ち込んだ様で、それが騎士や兵士さんにも振る舞われたせいかもしれない。
今夜ぐらいは、大いに食って呑んで羽目を外してくれて結構毛だらけ猫灰だらけ。
明日の予定としては、朝食後に砂浜で訓練の予定らしいので、二日酔いでダウンしなければ好きにおし。
俺と嫁ーず、妖精達は、飲めや歌えの砂浜をそっと後にして、ホワイト・オルター号へと戻った。
ちなみに、ドワーフさん達も、いつの間にか居なくなっていた。
あ、そうそう。
人魚さん達には、今は手出しをするのを禁止するのも忘れない。
いきなり捕食しようとしたら、獲物が森の中に逃げるかもしれない。
地上で走って逃げる獲物を追いかけるのは、人魚さん達は苦手。
だから、逃げ場のない崖のあの宿泊施設に追い込むまで、『待て!』させた。。
全員、涎ダラダラではあったが、いう事は聞いてくれた。
ついでに、当日までに精の付く魚介類を獲りまくってくると、砂浜に熱い視線を送りつつも、海へと潜っていった。
ぱっと見た感じ、数百人は居た気が…。
まあ、気にするのは止めよう…。
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