第920話 ここは地球ではないのだよ!
俺は人魚さん達によって執務室にて捕獲された。
何故か嫁ーずも、全力で全面的に人魚さん達に協力体制を敷いている様に見える。
えっと…何で皆さんは、人魚さん達に協力を?
「もちろん、この先の事を考えると、私達が例の場所に出向くこともあるかと思いますので、今後も協力して頂くためです」
嫁ーず代表のメリルがそう言うと、人魚さんの1人とがっしりと握手をしていた。
えっと…人魚さん達がいるからか、言葉をにごしてはいるが、例の場所って…ひよこが居る所の事だよね?
もしかして、君達も出向くつもりなの?
「お義母様が、『アルテアン家の総力を挙げる時が来たのだ!』と仰っていたではありませんか。当然ですが、私達も行きます」
そう言えば、確かに母さんがそんな事を熱く演説してたね。
「それに、ナディアさん達の様子を見る限りでは、普通の兵では難しいでしょうし」
まあ、確かにそれは言えるな。
メリルとの話は、ちょっと危険な情報に触れようとしている。
なので、そっと人魚さん達の様子を見てみたのだが…全員綺麗にこっちは無視していた。
もしかして、人魚さん達って、すごく空気を読める種族なの?
「ご安心ください。彼女達とは色々と契約をしておりますので、この場での出来事に関しては、完全に守秘してくれます」
「契約!?」
マチルダの言葉に、思わず叫んでしまった俺。
「ええ、契約です。我が領や我が家の極秘事項に関する書類の処理もお願いしているのですから、約定を結ぶのは当然の事かと」
た、確かに!
「初めてお手伝いいただいた時に、すでに人魚族との間に、しっかりとした契約を結んでおりますが?」
「知らねーよ! 初耳だわ!」
我が家と領の政治と経済を取り仕切るマチルダだから、抜かりはないのかもしれないが、教えて欲しかった。
「契約書にはトール様のサインも頂いておりますが?」
え?
「もしかして、気付かずにサインしていた…とか?」
は?
「ですが、すでに決裁を終えた契約ですので、有効です」
ま、まあ…決済処理を終えた契約だったら、仕方ないね。
ん? マチルダ、ちょい待て。
「その契約っていつから?」
「初めて彼女達にお仕事をお願いした時にですが?」
…そりゃそうだよね。
って事は、結構前に契約したって事か。
お仕事を頼むんだったら、当然契約も交わしてるよね…。
「っと言う分けで、トール様には彼女達の種族の繁殖の為、若くて元気な男性の用意と、場所の提供の義務があります」
そっかぁ…それが条件だったのかあ。
言われてみれば、最初に人魚さん達にお仕事を頼んだ時の交換条件ってそれだったよなあ。
まさか、あれがすでに契約されていた話だとは、思いもよらなかったよ。
『領主様~、よろぴく!』
人魚さん、こんな時は会話に入ってくるのね。
ああ、うん…頑張って集めますとも…。
そんなドタバタもありましたが、兎にも角にも俺のお仕事は、とてもスムーズに処理出来たのであった。
人魚さん達への生贄問題を残して。
いや、リアルに考えてみよう。
今までの人魚さん達の凶宴…いや饗宴において、何名かの人魚さん達が見事に懐妊することに成功? した。
だが、人魚さん達は結婚などは求めていない。
ただ繁殖がしたいだけなので、そこら辺は実は男にとっては嬉しい事なのではないだろうか?
避妊もせずにヤル事をヤリまくって、その結果相手が妊娠しても責任を取れとも言われない。
もしや、これは男にとっては、天国なのでは?
俺はその中に混ざりたいとは思わないが、それを歓迎する男もいるのではなかろうか。
まあ、人魚さんの凶乱期間中は、一切男性の帰還は認められず、枯れるまで絞り取られる事になるのだけれど。
今まであまり細かい事まで人魚さん達と話したことはなかったが、どうも男性は見た目よりも精力重視らしい。
見た目ハンサムな優男より、多少不細工でも何度でも頑張れる男の方が良いとの事なんだろうが…ちょっと人魚さん達が怖く見えるのは、気のせいだと思いたい。
むぅ…今までの大お見合い会とかの時って、必死になって若くて見た目がそこそこの男を集めてたけど、別にそんな事は気にしなくても良かったのかも。
これは、父さんに王城勤めの独身の騎士とか兵士を連れて来て貰ったら、簡単に手配できるのではないだろうか?
騎士とか兵士って、王城勤めだとあんまり女性との接点もないし、飢えてるのも多いはず。しかも、無駄に体力だけはあるんだから…あ! 良い事思いついた!
騎士や兵士の休暇、もしくは実地訓練とかの名目で、この地に1部隊ほど定期的に連れてきて貰ったらどうだろうか?
飢えた男と飢えた人魚さん達。
これはナイスなアイディアかもしれないな…ぐふふふふふ…。
あれ? ひょっとしたら、男側からなら参加料も取れるかな?
『大河さん…それって、どっかの婚活パーティどころか、乱交パーティの主催者の思考ですよ?』
サラ、ここは地球ではないのだよ。
『いや、そりゃそうですけど…倫理的に問題あるのでは?』
サラに倫理観があるとは驚きだ。
『ちょ、ちょっとは…あるんです…よ?』
へ~、そりゃおったまげ~!
『ば、馬鹿にしてますね! 信じてませんね?』
うん、信じられる要素が皆無だし。
『……………』
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