第903話  …しぼんだ?

 エネルギーが欲しいというならくれてやる!

 あの山向こうで起きている事実を、俺に教えてくれ!

 とか、一大決心した主人公の如く言いましたが、そこまで大した決心は要りませんでした。


「あ~、1人で盛り上がっているとこ、悪いのじゃが…お主の役割はエネルギー供給装置みたいな物じゃぞ?」

「ですね。まだ完全な調査が済んだわけではないですが…大凡は分かっておりますし…」

「…ウザ…」

 何か、3人に酷いこと言われた気がした。

 特にモフレンダ! 誰がウザいんだよ、誰が!

「って、モフリーナにはこの件に関して、大凡でも分かってるのか?」

 確かさっき言ってたよな。

「ええ、正確にではありませんが、大凡でしたら」

 へっ? マジっすか!

「じゃ、じゃあ、今分かっている事でいいから、教えてくれ!」

 ナディア達がああなった原因を知りたい!

「…駄目…まだ…」

 モフレンダが、ぼそりと呟いた。

「まだ?」

「まだじゃ」「今は駄目です」「…そう…まだ」

 取り付く島もない。

「えっと…んじゃ、調査後だったら教えてくれるのか?」

 すると、3人は首を縦に振った。

「お主に教えてしまうと、ここを出た後に色々と管理局に知られてしまうやもしれぬ。じゃから、しっかりと調査を行い、準備が整った後に報告するとしようぞ」

 あ、なるほど。

 つまり、ボーディが言いたいのは、俺に原因とかを教えてしまうと、『俺が原因を言っている事』が管理局に筒抜けになるってわけね。んで、管理局に知られても大丈夫なタイミングを見極めて、俺に教えてくれるって事か…納得した。

「なるへそ…了解した。んで、俺は何をすればいいんだ?」

「…さっき言った…もう忘れた? …痴呆症?」

「毒舌だな、モフレンダ!」

「モフレンダがここまでの毒を吐くのはお主だけじゃぞ? まあ、良いわ。取りあえず、このダンジョンにお主のエネルギーを大量に詰め込んでおくのじゃ。モフリーナ、頼んだぞ」

 モフレンダが真っ赤な顔してボーディーをぽかすか殴っているけど、それって痛く無さそうだな。

 ボーディに頼まれたモフリーナは、水晶で出来た髑髏を俺に差し出した。


 え~っと…水晶髑髏って、オーパーツじゃね?

 アレ? そう言えば、確かほとんどの水晶の髑髏って、近代に加工されてたとか発覚してなかったっけ?

 それ、本物? な、分けないか…モフリーナが作り出した人造物だよな。

 そう勝手に結論付けて、俺が水晶髑髏に手を伸ばそうとした時、

「トールヴァルド様、これにエネルギーを注いで下さい。ただし、この部屋を出た後にです」

 モフリーナが、説明を始めた。

「この部屋は外界との繋がりの一切を断っておりますので、今この場でエネルギーを込められましても、この水晶の容量以上は受け入れる事が出来ません。ですが外に出た後でしたら、キャパをオーバーした分を、ダンジョン自体で保有する事が出来ます」

 ほう、便利なんだな。

「ところで、その髑髏って…容量はどのくらい?」

「私の塔を3階層ぐらい増設できる程度でしょうか?」

 それって、凄いのかどうか良く分からん。

 まあ、いいや。

「んじゃ、外に出たらエネルギーを目いっぱい込めるよ」

 俺が上腕二頭筋を見せつける様に、ボディービルダーみたいなバイセップスをする。

 唸れ俺の筋肉よ! 今こそ鍛えあげたこの筋肉のすばらしさを、全力全開で披露するのだ!

「いえ、領域を広げるだけですので、この髑髏3個分で結構です」

 なんか、冷めた目でそう言われた。

「そのポーズ…何じゃかキモイのぉ…」

 キモイ言うなや、ボーディ!

「…顔…キモイ…」

 モフレンダも、俺の事キモイって言った!

「ま、まぁ…私も、少々…その顔とポーズは趣味ではないと言いますか…」

 そう言って、モフリーナも俺から目を逸らした!

 ボディービル界では、当たり前のポージングだぞ!

 ダブルバイセップス・フロントもダブルバイセップス・バックも、逆三角形の鍛え上げた肉体を強調する素晴らしいポーズだぞ!

「お主の趣味は分かったから、早よそのポーズを止めよ」

「べ、別に趣味じゃねーし! 趣味じゃねーよ!」

 ほ、本当だからね!? 俺の趣味じゃないからね!

「で、では外に出ましょうか…それと、私もあのポーズはあまり良い趣味ではないかと…」

 モフリーナにまで趣味とか言われた!

 頑張って力んだけど…俺はしょぼぼーんって項垂れた。

 ちなみに筋肉もしょぼぼーんってなったのは言うまでもない。

「…しぼんだ?」 

 しぼんでねーよ! あ、いや…しぼんだかも…筋肉が…。

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