第883話 相談は大事です
その日は、取りあえず一旦解散となった。
まずは山脈向こうの現状調査を終わらたナディア達の帰還を待ってから、話の続きをしようという事になったからだ。
実際問題、あっちの状況が分からなければ、これ以上はただの想像だけの話になってしまうからな。
そう言う訳で、全員が日常へと戻る事となった。
俺は執務に戻り、日々の仕事を確実に減らすためサイン…減らすためにサイン…減らす…サイン…サイン…さい…ん?
何だ、この書類?
えっと、何々…『ホテル・ニューオオタキの現状報告』…?
ああ、例の人魚さん御用達のサバト会場になった、俺が造った滝の側のホテルの事か。
作成者はメリル他、嫁ーず4人。
あれって、確か嫁ーずとユズユズに全部任せたんだったな。
確か…ネス湖の畔の結婚式場での式とセットでのお泊り施設としてのブライダルプランに活用したんだよな。
内容はっと、どれどれ…ほう、なかなかの売り上げだな。
あれ? でも何で職員に人魚さんが採用されてるんだ?
客室の半分は、新婚さん以外が宿泊してる…いや、人魚さんが賃料負担して借りきってる!
な、何でだ!
そこに男性だけで宿泊するって…待て待て待て待て!
これって、ホテ〇ルとかデリ〇ルみたいな出張型風俗か!?
あ、いや…自分達で借りきってる部屋なんだから、あのホテルの半分が風俗店になっちゃったって事なのか!?
そんな所で、式を挙げたばっかりの新婚さんが初夜を迎えるって、駄目じゃねーか!
ん? 新婚さんは正面玄関を使用して夕方にチェックインして、翌日の昼前にチェックアウトか。
んで、人魚さん達は昼から夕方まで営業…利用者は裏口からの出入りがルール………。
住み分けは一応出来てるのね。
でも駄目だろ…色々と…。
んで、メリルたちからのホテルに関する提案か。
何々、街道をもう1本敷いて人魚さんの風俗利用者と新婚さんのホテルへの交通を分ける?
裏口を完全に風俗専用として、ホテル内も完全に分離したいと。
まあ、現状ではまずないだろうけど、中で人が鉢合わせしてもいやだろうしな。
風俗側の各部屋にの防音設備の追加と大河からの出勤しやすいように、近くまで水路を引くって…出来るだろうか?
これは、結構な大規模工事になりそうだから、精霊さん達に要相談だな。
そういや、精霊さんは見た目は日本の漫画とかに出て来る幽霊みたいに、漫画のふきだしっぽいとんがり尻尾のちょっとぷっくら丸い形で、小さい手がついてる。
妖精のもっち君は、完全な潰れた丸で、鏡餅っぽい。
どっちも丸っこくて可愛いんだけど…最近、俺ではなく嫁ーずや母さんに絶対服従の表情豊かな妖精のもっち君より、俺にだけ懐いてくれる精霊さんの方が好きかもしれない。
うん、理由は今言った通りだ。
精霊さんは、たとえ母さんであろうとも嫁ーずであろうとも、言う事を聞かない。
もちろん精霊さん達の姿が見えて無いってのも理由の一つだけど、俺のエネルギーをちゅーちゅーするのが大好きだから…。
いや、理由なんてどうだっていいんだ。
俺にだけ懐いてくれる精霊さん、俺も大好きだ!
ってな事で、精霊さん…いやさ、精霊建設の親方達には、ホテルの増改築件は相談せねばな。
うん、この件は改善を前提にした保留という事で。
お、そろそろ日暮れか。
今日の仕事も9割は終える事が出来たか…はぁ、疲れた。
そういや、ナディア達は大丈夫なんだろうか。
調査に出かけてから、俺から連絡しようと何度か呼びかけたんだけれど、返事が無い。
あの山の向こうは魔素が薄いのかな?
安否が気になるが、あのナディア達や蜂達だ。
多少の敵なんて苦にならないだろう。
だが、やっぱ気になるよなあ…。
その夜、食事も終えて一日の疲れを風呂で癒したあと、寝室の巨大なベッドに俺は横になった。
もちろん、誰にも邪魔されずに色々と考えたいから、ガッチリ寝室は施錠済みだ。
天井を見上げて考えるのは、父さんと母さんの先の大戦の話。
俺の想像では、まだ見ぬ未知の種族と文化・文明の存在。
この大陸は管理局局長曰く、俺が生きて来た地球をモデルにして造り出したらしいのだが、それにしては違う所が多くないか?
もしやモデルにするにあたって参考にしたのは、異世界物の小説とか漫画とかアニメなのかも。
サラやリリアさんなら、その辺の事も知ってるかもしれない。
この辺も含めて、一度じっくり相談してみるか……。
「そうですね。相談は大事です」
ぬぉ!
「私達にも相談をしてくださいね」
にゅっ?
「あ、あの…何の相談です…か?」
ほぇ?
「それは、もちろん私達との子供の名前でしょう」
何で!?
「そうだんですか?」
下手な洒落だな、おいっ!
「いや、メリルにミルシェにミレーラにマチルダにイネス…どっから入って来た!」
『入り口からですけど、何か?』
施錠してただろうが、がっちりと!
『解錠しましたけど?』
だから、施錠の意味!
1人になりたいから施錠してたんだよ!
『でも、考え事は終わったんですよね?』
お、おや…?
『ならば、OKですよね?』
あ、そ…そうなのかな…?
『お嫌ですか?』
「い、嫌じゃないです…」
俺が返事を言い終わるかどうかというタイミングで、嫁ーず全員が俺に抱きついて来た。
『ちっ! リア充のハーレム野郎が!』
今、サラの声が聞こえた様な気がするが…。
気付くと、ベッドの上は、色合いこそ微妙に違ってはいるのだが、肌色の女体が俺に絡みついて来ていた。
どうやら久しぶりなので、嫁ーずは燃え上がってしまっている様だった。
明日見上げる太陽は、きっと黄色いんだろうなあ…。
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