第828話  どーーんと来い!

 さて、それではドワーフメイドさん達が用意してくれた朝食を頂くとしましょうかね。

 我が家では、家族もメイドも執事も全員で食卓に着くのが習慣になっている。

 メイドだからとか執事だからとかの理由で、別に食事をするのも無駄な事だと俺が考えてるからだ。

 とは言っても、それは貴族の家としては珍しい事で、普通は別にするそうだ。

 王都の父さんの屋敷でも、隣の領都リーカにある父さんの屋敷でも、一応は家人と使用人との食事は別だ。

 母さんもコルネちゃんもユリアちゃんも、もちろんそんな事は知っているのだが、ここは俺の屋敷なので、流儀には従ってもらう。

 まあ、母さん達も俺の考えには賛同してくれているから、特に文句を言われる事も無いのだが。

 ちなみに、寝坊したサラとリリアさんは、何食わぬ顔で朝食のパンを喰っていた。

 サラはお代わりもしてたけど、マジで図々しいな、あの馬鹿メイドは。

 あとで仕事を押し付けてやろう。


 ところで、帰宅してからずっと気になっていたん事なんだが…、

「な、なあ…メリル。そのぉ…もっち君はどうなったんだ?」

 帰宅してからずっと姿が見えないもっち君。

 どうにも気になって、食後のお茶の席でメリルに尋ねてみたのだが、

「うふふ…」

 何故か返って来たのは、意味深な微笑みだけ。

「えっと…母さん?」

「うふふふふ…」

 母さんも同じく意味深な微笑み…。

 もしかして、コレって聞いたらヤバイやつなのか?

 はっ! もしや、もっち君は拷問の末、命を落としてしまったのか!?

「マスター…、別にもっち君達は天に召されたりはしてませんけど…」

 俺の事を呆れ顔で見ていたナディアがそう言うと、そっと俺の背後を指さした。

「えっと、そこに3人…? 居ますけど」

「えっ!?」

 ナディアの言葉に慌てて振り返ると、『(・ω・?)』 何か? って顔のもっち君が浮かんでいた。

 あっれ~? ずっと姿見て無かったんだけど…もしかして隠れて俺を監視してたの?

「トールちゃん、ずっとあなたの頭の上に飛んでたわよ」

 母さんの言葉に、この場に居た全員がうんうんと頷く。

「もしかしてさ…王都にいた時も、父さんの頭の上に居たのかなあ…?」

「お兄さま、それは当然です。常にお父さまの行動を見ていますよ、彼等は」

「わたし、おとうさんのうえにとんでるのみたことある~!」

 俺の疑問に答えたのは、コルネちゃんとユリアちゃん。

 ああ、やっぱりそうなんだ。

 もっち君に監視させるとか聞いてたけど、屋敷の中だけの事かと思ったら、24時間常時監視してたんだな。

 いや、予想はしてたし忘れていた分けでは無いんだが、何か妙に納得した。

「そっか…常に父さんの頭上で…ん? それじゃ、何で今は俺の頭の上に?」

 更に湧く俺の疑問に答えたのは、妙に生暖かい全員の視線だけだった。

 ねえ、もしかして俺も監視されてるの? 

 ねえってば、誰か答えてよ! ねえ、ねえってば!

 勿論、誰も答えてなどくれませんでした。

 そっかぁ…俺も監視されてたんだ…そっかあ…。

 

 まあ、浮気なんてする気も無いから、監視されても問題は無い。

 けど、あの俺の宝箱の中の薄い本を読むときまで監視されるのは怖いな。

 せっかく新しい隠し場所に宝箱を移した(前の場所は、ばれました)のに、全部筒抜けってのはまずい。

 今回は王都で新刊を購入して来ていないが、もしも買って来てたら大変な事になる。

 ううむ…もっち君をどうにかしないと、新刊の購入も難しいか…俺の唯一の楽しみが遠くなってしまう。

 

 そう言えば、朝食を喰い終わったら、さっさと地下室に引きこもったサラとリリアさんだが、もしかして欲求不満なのか?

 リリアさん、サラの事を調教? それをサラも受け入れて、2人で地下室にしけこんだ?

『違うわ! ちょっと昨夜色々あったから疲れてるだけだよ、この変態が!』

『その所見は、甚だ心外です。少々、昨夜問題が起きたため、対処で疲れただけです』

 問題ねえ…サラと新たな世界の開拓を試みたが失敗したとかかな?

『全然違うわ! そっちから思考を切りかえろ! このエロ男が!』

『…それも良いかもしれません…新世界への扉を…』

『リリア!?』

 うむ、取りあえずは放っておいても大丈夫な様だ。


 ちょっと思考を並列化してっと…。

 サラとリリアさんが、昨夜色々とあったと言うって事は、もしかして管理局での問題かな?

 最近、妙に静かだったから、もしかして管理局が何か企んでるとかかな…ありそうだ。

 2人の言葉で、何となく管理局が何か仕掛けて来るって予感がビシバシしてる。

 うん、覚悟は出来たぞ。

 何でも、どーーんと来い!

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