第822話 監視!
しつこく泊まって行けという王家の皆さんのお誘いもあり、一晩メリルは里帰り…ってのは変か…実家に泊まる事になった。
俺は我が家の女王様…もとい母さんからの指令通り、父さんの様子をチェックするために、王都のアルテアン侯爵邸へ。
何故かメリルからの依頼で騎士さん達に護衛されて父さんの住む屋敷へと向かたのだが…もしかしてこの人達って監視役?
まあ、別に浮気するつもりも無いので、大人しく騎士さん達が用意した馬車に乗って父さんの元に向かう事に。
ただ、王都にある某本屋さんに寄れなかったのは残念だ。
兄×妹系の薄い本の新刊が発売されているはずなんだが…今回は入手できないな、うん。
横目で本屋さんの前を通り過ぎるのを恨めしく眺めつつ、ほんの少し馬車に揺られたらアルテアン邸に到着。
相変わらず玄関前に馬車が到着すると、
「ようこそいらっしゃいました、アルテアン伯爵様」
『ようこそいらっしゃいました、アルテアン伯爵様』
折り目正しく執事服を着こなした壮齢の執事長のセルバスさん筆頭に、綺麗所粒ぞろいのメイドさん達が最敬礼でお迎えしてくれた。
父さんの趣味なのか、巨乳メイドさんが増えてる気がする…。
「ああ、出迎えご苦労。アルテアン侯爵様は?」
以前、普通に話してたらセルバスさんに怒られた事がある。
使用人である自分達に、友人の様に接しては駄目だと。
少なくとも他の使用人や貴族など賓客の前では、特に言葉遣いには注意して欲しいってね。
こんこんと説教されたので、大勢の目がある所では、ちょっだけ偉そうなトール君なのだ。
「はい、伯爵様。只今、侯爵様は応接間で伯爵様のご到着をお待ちになっておられます。すぐにでも面会できるかと思いますが、如何いたしますか?」
「では、侯爵様の都合が着くのであれば、すぐにでも」
「了解いたしました。では、応接間へご案内させて頂きます」
そう言って、セルバスが先導して俺は玄関をくぐった。
その時、視線は真っすぐに執事の背中へ。
下手に視線を動かすと、滅茶苦茶に綺麗なメイドさんが視界に入っちゃう。
いや、まっすぐ前を向いていても視界には入ってくるのだが、誰かを凝視でもしようもんなら、そのメイドさっが俺が宿泊する部屋に夜にやって来るのだ。
正確には使用人さん達が寄って集ってそのメイドさんをひん剥いて、俺の部屋に放り込むのだ。
メイドさん達にとって、俺は主人である父さんの実の息子であり、聖なる女神ネスの眷属でもあり、王族を娶った男。
言っては何だが、そこそこ良い男だし、日頃の鍛錬からか身体も引き締まっている。
つまりは、俺って結構良い男なのだ。
そんな男に見初められたのだから、さっさとお手付きになって妾とか愛人になってしまえ…と、言う事らしい。
決して俺にそんなつもりが無くとも、こんなに大勢の使用人さん達が揃った場で、俺が目をつけるという事は、そういう意味になるんだとか。
一度、前世での知り合いに似た娘がメイドの中に居たので、ちょっとびっくりして視線をとめたら、その夜にその娘がタオルでグルグル巻きにされて部屋に放り込まれたので、もの凄くビビった事がある。
その時は、嫁ーずも一緒だったので大変な騒ぎとなった…主に俺が酷い目に遭った…苦い思い出がある。
どんな酷い目に遭ったんだって? 想像に任せるよ…朝見た太陽は黄色かったとだけ言っておこう…。
こんな恐ろしい魔境…じゃなかった王都に住んでいるんだから、母さんが不在の時の父さんなんて、毎夜の様にメイドさんが寝室に放り込まれてるはずだ。
もしもそんな事になってたら、俺は全てを母さんに話すぞ、父さん。
母さん、怖いもん。
とか考えてたら、応接室の前に到着した。
セルバスが扉をノックし、入室の許可を得たうえで、扉をゆっくりと開いてくれた。
「おお、やっと来たか! 待ってたぞ!」
応接室には、とってもいい笑顔の父さんが、ソファーに深く腰掛けていた。
そして俺は見た。
父さんの周囲を飛び回る妖精さん達ともっち君を。
そういや、こいつらが完璧に監視体制を敷いてるんだったな。
浮気なんて父さんに出来るはずも…ん? 待てよ…。
嫌な予感がした俺は、並列思考を使って、表面上はさっきの巨乳メイドさん達を思い出しつつ浮気の算段をしている…ように見せかけて…。
バッ! っと振り向いてみた。
そこには、『Σ( °ω° )』ビクッ! となった、もっち君が2体ふよふよと浮いていた。
そうか、やけにあっさりメリルも王城に泊まったと思ったら…俺もなのか!?
俺も監視されてたのかーーーーーーーーーーーー!
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