第812話  双六どうなったかな?

 朝食後から始めた、トールヴァルド邸大双六大会は、お昼前には終盤戦へと差し掛かっていた。


 コマが進んだ結果がどうなったかというと…。

 メリルはドジョウ髭をつけて付け黒子をほっぺに着けていた。

 ミルシェは運がいいのか、うさ耳カチューシャ以外の見た目はそのまま。

 ただし、踊ったり腕立てさせられたりと、結構肉体的な罰ゲームの餌食に。

 ミレーラは、顎髭とどっかのパーティーグッヅの様な眼鏡付のデカ鼻を付けて、アフロのかつら&うさ耳カチューシャを被っている。

 マチルダは…何というか運が無いというか…一人称はオラだし、語尾はにゃんだし、きつね耳と頭を貫通する矢のカチューシャ。

 更にはグラサンに、ちょび髭付きで、とどめにおでこには犬と書かれていた…ことごとく酷いマスに止まってるな…。

 イネスも見た目には特に変化なしだが、やっぱりミルシェ同様に肉体系の罰ゲームの餌食になっていた。

 ユズキは、ことごとく告白系の罰ゲームの餌食となっていたのだが…その告白内容は、砂糖をゲロゲロ吐きそうな内容だった。

 そしてその告白を聞いて満足気なユズカは、目の周りを黒く塗られてアライグマのコスプレ。頭にはきつね耳カチューシャ。

 サラとリリアさんは、何故か完璧に罰ゲームマスを躱している…怪しい…。

 コルネちゃんは、くま耳を付けただけだが、結構似合ってて可愛いぞ!

 ユリアちゃんは、うさ耳にちょび髭で語尾がにゃん…めっちゃ可愛い。

 母さんは、何故か妊婦は免除のマスばかりに止まっているので、何も無し…神か? ゴッド・母ちゃ…いえ、何でも無いです。

 そして俺は、おでこの真ん中に付け黒子、ほっぺにバッテン・マーク、ぐるぐるビン底眼鏡に、ゾウさんの鼻…微妙。


 まあ、そんな感じで双六は進んでいたのだが、ここでランチタイム。

 ドワーフメイドさん達が作ってくれたサンドウィッチを、この玄関ホールでわいわいおしゃべりしながら食べていた。

 互いの姿を見て笑い合ったり、この先の罰ゲームマスを見て震撼したり。

 ん? 約1人とっても静かなのは、マチルダか…このゲームが終わるまでが罰ゲームだからな…一言も喋らなくなった。

 そう言えば、このゲームの目的は、輪廻転生局によるマインドコントロールからの解放だったんだけど、誰にも何の変化も起きないなあ…マインドコントロールなんて無かったんだろうか?

 実はこんな状態でも、俺はこっそりと例のヘアピン(脳波遮断装置・たっちゃん)を着けているので、サラ達に思考が読まれる事は無いはずだ。

 まあ、どうやらゲーム中に俺の思考を読もうとしていたのか、チラチラ2人共俺の方を見ては首を傾げていたが、得意のポーカーフェイスで知らん顔してやった。

 今頃、自分の身体の中にある、超小型ポジトロン電子頭脳の不具合でも疑ってる事だろう。

 ふっふっふ…上手く彼奴等を欺く事が出来てる様でだな。

 この、脳波遮断装置・たっちゃんは、なかなか使えるぞ。

 今後もちょくちょく何かこっそりとする時には着けよう。

 さてさて、食事も終えて一服したら、双六の続きを開始しましょうかね。



『ってな具合で、一日中双六して終わりましたけど、あれでいいんですか?』

 薄暗い地下室で、跏趺坐でリリアと向かい合って冥想するサラが、今日の出来事を管理局長に報告していた。

『ああ、それで構わないよ。ちゃんと思考が読めない振りをしたかい?』

『ええ、それは完璧に演技しましたので、ご安心を』

 リリアがその問いに答えた。

『なら、いいよ。彼は思考を遮断できたと喜んでるんだろうけど、全部こっちには筒抜けなんだけどねえ』

 そう、トールの考えなんて全部丸っと筒抜けなのである。

『僕は見てなかったけど、双六の結果は?』

 そう言えば、と局長が訊ねると、

『双六作成者がビリという結果でしたね』

『そうそう、作った人がどんケツとか、笑わせますよ~』

 リリアとサラが、トールがビリだと報告した。

『それはそれは。それで君達は?』

『罰ゲームは全て回避しましたけど、何か?』

『あんな恥ずかしい格好とか嫌ですからね~♪』

 そう宣うリリアとサラ。

 その返事を聞いた局長は、頭を抱えて…た気がする…2人に、

『そんな事したら、管理局が何か手を回したと言ってる様なもんだろうが! 何dね全部回避するんだ! わざとどっかの罰ゲームでもしろよ!』

 局長の仰ることはご尤も。

『嫌ですよ、恥ずかしい』

『そうだそうだ! 証拠も残してないんだから、ばれるはず無いですよーだ!』

 病や体調不良などという物から最も遠い存在である管理局長は、この日初めて頭痛というものを味わったそうだ。

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