第757話  呪法具開発に伴うあれこれ

 何だか熱くなってしまって、どうやら本題から外れてしまった様だ。

 つまり、今ある物の改良版は、ちょっと開発を保留にしようって事になった。

 そもそも、温水シャワー付きの便座は、現在普及しているポータブル式シャワー洗浄機の10倍以上のお値段になってしまうだけでなく、すでにこの世界にある物なんだから開発を急ぐ必要も無い。

 結局は、呪術式加熱調理器具と呪術式縫製機械、呪術式計算機が開発のメインとなった。


 呪術式加熱調理器具は、量産するために材料の吟味をして行くうち、どうやら本体を薄い鉄板で造るのが最も加工しやすく量産も可能であり、小型化にも適しているという事で、改良は一気に進んだ。

 これには父さんの領地の工房を任せている数人の親方が非常に興味を持って、とても熱心に日々研究をしてくれている。

 噂では、親方衆や工房の職人さん達の食事を奥様達が造っても、仕事だ何だと言ってすぐに食べてくれない事が発端とか。

 怒った奥様連中が料理を作ってほったらかしにするという無言の抗議も意味を成さなかったため、とうとう奥様連中はストライキを起こして、食事を作るのをストップしたとか。

 んで、慌てた工房の人達は奥様連中に土下座で謝ったらしいのだが、やはり仕事量が多いからか食事の時間がずれがち。

 そこにたまたま俺の呪術式加熱調理器具の話が舞い込んだ。

 聞けば冷めた料理も、調理したての熱々に出来ると聞いて、奥様連中にこの呪法具の話をしたそうだ。

 すると奥様連中、時間を気にせず作り置きが出来るとあって、猛然と親方衆や職人衆に、全力で開発しろと迫ったとか。

 いや、俺も近い考えで開発しようと思ったんだが、なるほど大勢の職人を抱える工房だと、確かに食事も大量になるわな。

 食べる時間だってマチマチになりがちなのだから、これは当然か。

 これって、もしかして一番先に完成させなきゃダメなんじゃね? と、親方衆と話し合った結果、とても熱心に親方衆が研究してくれてるって訳なんだ。


 次に、呪術式計算機。

 実は、地味~に、これの開発は進んでいる。

 マチルダに話したところ、こいつの需要もとんでもなく大きくなるとの事。

 俺は、地球での卓上電卓とかポケット電卓とかをイメージしていたんだが、マチルダの中では違った。

 それは、地球での商品で言えば、レジスター。

 通称、レジ。

 スーパーやコンビニで見かける様な、あのレジ。

 昭和だったら、計算が終わったら、チン! って音がして、お金の入ったトレーが飛び出して来る、あのレジ。

 商売人であれば、絶対に欲しがるはず! と、強く開発推進を求められた。

 それならば、いっそうの事、マチルダがやってみるか? といったところ、ガッチリとユズカとタッグを組んで、開発に乗り出した。

 理想は、強盗は押し入っても持ち出されない様な物で、叩こうが蹴ろうが燃やそうが、お金が取られ無い物…。

 それ、レジじゃ無くて、金庫じゃね? って、話を聞いた俺がまたまた口を挟んでしまったのがいけなかった。

 ならば金庫と一体型で開発しよう! と、滅茶苦茶張り切って、ユズカと共に奮闘中だ。


 そして、最後に登場するは、呪術式縫製機械。 

 俗に言う、ミシンだ。

 多くの人がミシンと聞くと、イギリスの産業革命を思い出すだろう。

 しかしである、実はミシンは産業革命時、イギリスでは量産されていないのだ!

 いや、正確には編み機は発明はされていたのだが、広く普及するまでには到らなかった。

 イギリスの産業革命は、紡績機と機織機が主であり、縫製は手縫いが主だった。

 現代のミシンの構造とほぼ変わらぬ構造を持ったミシンの開発は、なんと遠く離れたアメリカで、特許まで取得されたのだ。

 また話が脱線してしまった…。

 このアメリカで製造されたミシンがどんな物だったのかは、実は俺は良く知らない。

 だが、子供の頃、家にあった足踏みミシンは良く覚えている。

 中学になる頃だったか、その足踏みミシンにモーターを取り付けて電動化するという、画期的な改良も見た。

 なので、大体の構造も分かっているんだが、実はどうやって縫った糸がほつれないのかは知らん。

 下糸と針に通す糸の関係性は覚えているんだが…どうやってそれが組み合わされるんだ?

 その辺の構造に関しては、全く知らん。

 だが、ドワーフメイド衆がこのミシンに、もの凄い興味を示した。

 ちまちまとした細工とかが大好きな種族であるドワーフ。

 何故か村から大勢やって来て、まだ試作すらままならない段階から、熱心に開発に取り組んだ。

 我が家のドワーフメイド衆が音頭を取り、寝る間も惜しみ、我が家の仕事すらもほっぽり出して開発に取り組んだ。

 無論、メインの呪法具に関しては、俺とユズキが担当したのだが、細かな注文が山の様に舞い込み、四苦八苦した。

 その結果、ドワーフさん達は発見してしまったのだ。

 上糸が布を付き通り、輪となり下糸を通すという、聞いてても良く分からん原理を実現化し、とうとう開発してしまった。

 しかも、家庭用ミシン程度の大きさで。

 完成品の全てがドワーフさんの村でテストを繰り返され、改良に改良を重ね、市販化出来る所までこぎつけたのだ。

 このミシンは、はたしてグーダイド王国だけでなく、この世界の文化を一気に加速させる起爆剤となるのだろうか!?


 なりませんでした。


 だって、ドワーフさん達が凝り過ぎて、ミシンの原価が屋敷を買えるぐらいに高くなってしまったから。

 なので、現在、絶賛廉価版の開発中です。

 ちなみに、試作品はドワーフさん達が全部取り込み、村に運び込んだ。

 何を作っているのかと思ったら、なんと毎日ぬいぐるみを作ってた。

 それも、めっちゃファンシーなの…。

 せっかくのトンでも技術で、君達は一体何してるの?



※こっそり新作投稿しています。

 姫様はおかたいのがお好き

 https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730

 不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!

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