第742話  忘れてたよ

 俺達がパンゲア大陸での式典に出席をしていた丁度その時、どうやら暗黒教ダークランド皇国との戦争の後始末というか、被害に遭った各国の復旧支援がひと段落した、我が国の第3王子様…つまりはメリルの兄が帰国したそうだ。


 荒野と化した各国の跡地には、まだまだ掘っ立て小屋よりもちょっと豪華かなって程度の家々が立ち並び、行商のキャラバンやダンジョン目当ての冒険者さん達が続々と詰めかけているという。

 元々は、人族の国や獣人族の国なんかがあったらしいのだが、暗黒教ダークランド皇国の進軍と、腐った野盗が荒らしまわり、止めを俺達が刺したって事になるんだが…。

 まあ、それも戦争中って事と戦争と野盗の被害者達を救うっていう大義名分で強引に正当化してしまった。

 結局は、歴史は勝者が作るって言葉の通り、戦勝国の言い分が全て通ってしまうと言うのは、何とも言えず心苦しくはある。

 俺個人としては、戦争なんてしたくも無い。

 だけど、今まで散々やらかして来た事だし、そもそも多くの人々よりも確実に力があのは確かだ。

 文字通り、戦争を終わらせる力が。

 そもそも敗戦国の末路なんて、前世の世界史で散々見て来た。

 敗戦国であるという歴史は決して消す事が出来ず、敗戦の影響は人々の価値観に多大な影響を及ぼす。

 敗戦国の人々は虐げられ見下げられ、歴史は勝者にとって都合がいいように歪められたうえ不都合な事は隠される。

 個人的な感想かもしれないが、敗戦国の末路は悲惨だと思う。

 だからこそ、暗黒教ダークランド皇国の宣戦布告という大義名分があった今回は、いくら戦争が嫌いだと言っても力を持っている俺が出ないわけには行かなかった。

 まあ、力ってのが単なる暴力的な力だけで無く、財力も人脈も含めた俺個人の力なわけだが。

 この先、あの大陸で…いや、パンゲア大陸でも、戦争なんてもんが起きない様に、復興に関わった第3王子やべダム首長さんに頑張って貰いたいところである。


 さてさて、実はこの王子様ご帰還の一報を聞いたのは、自宅に戻ってすぐの事。

 ドワーフメイドさんが、あたふたとしていたので声を掛けたら父さんから通信が入ったとの事で、慌てて折り返し掛け直したのだ。

 その時に、復興に関しては一応の目途が付いたらしいので帰国したらしい…と、父さんは言っていた。

 らしいので…らしい…って、変な表現だなあ…っと感じていたが、まあ大したことでも無いとその時はスルーした。

 ただ、王子様が帰還した、復興の目途が立ったという事で、王都では祭典が催されるとか。

 そこに、戦争で多大なる貢献をした我が家が…もっと正確には、俺と父さんにも参列せよと、陛下からお声が掛かったそうだ。

 面倒くさいが、我が国のトップからのお声がけであれば、拒否するのは大変失礼。

 なので、日時を聞いて予定を空けようとしたのだが…なんと、約2ヶ月後だという。

 まあ、日時や段取りなどを確認出来たので、あとは母さんや愛妹達の様子なんかをダラダラと話をして、通信を切った。


「って事で、また王都に行かねばなりません。具体的には式典の2日前の早朝に出発します。それまで各自で抜かりなく準備をしてください」

 俺達にはホワイト・オルター号という巨力な飛び道具があるので、遥か最果ての領地であるアルテアン領からでも、全力飛行であれば、わずか1日足らずで王都まで行ける。

 それが2ヶ月も先なんて…と思って、

「何とも気の長い話だなあっ」

 俺はポロリと呟いてしまったのだが、それを聞いたメリルは、

「そう仰いますが、私達の様に空を飛んで移動出来る者などいませんから、仕方ないのではないでしょうか」

 と、言われてしまった。 

「ああ、そうか…そう言えばそうだな。蒸気自動車も増えたとはいえ、まだ馬車がメインだもんなあ…」


 忘れてたよ。

 俺ってガチャ玉を結局は自分の生活向上のためとか、遊びでしか使って無かったんだなあ。

 うん、これからはもっともっと人々の生活の役に…どうやって立てたらいいんだ?

『げっへっへ…兄さん兄さん、耳寄りな情報がおまっせ?』

 サラよ、お雨はどこの情報屋だ?

『むろん、管理の局のモンでやんす』

 ああ、はいはい。

 んで、耳寄りな情報って?

『前にこの世界の法則を捻じ曲げる理を創造したじゃないですか?』

 えっと…なんだっけ、それ?

『あんた、自分で創ったの忘れたんかい! 呪術! 言霊とかこじつけて漢字を使った呪術陣作成! そんでそれを利用した道具造り!』

 おお! そうだ、蒸気自動車とか御守りとか色々な物に利用してたあれな。

 んで、それが何か?

『あんたねえ…この世界の法則を捻じ曲げたのに、作ったのそれだけじゃね?』

 ああ、うん…そうだね…。

『もっと、バンバン創りなさいよ! あんたが新たに創った理で製造した物を誰かが使えば、ちょびっとずつでもエネルギーが管理局に送られるんだっちゅーの!』

 だっちゅーのは古いなあ…

『やかましいわ! もっと色々と造れよ!』

 まあ、確かにそうだな。

 俺は頭悪かったから、漢字とか詳しくないが、ユズキが居れば色々できそうだしな…。

 でも、耳寄りな情報って?

『ふっふっふ…それはですねえ…』

 ふぁっ? マジか!?

『んで、地球の…で、…を…して…』

 おぉ! んじゃ、あの…も、…も、わかるのか!?

『それはお代官様次第ですなぁ…』

 お主も悪よのぉ…

『ぐっふっふっふっふ…』

 ぐっふっふっふっふ…

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