第729話  ななな星人

 あ、そうだ!

「ナディア、アーデ、アーム、アーフェン、妖精さん達にもっち君、全員集合!」

 さっきの執事さんの言葉を聞いたら、俺も出来る事はしなくちゃな。

 ん? 嫁ーずは来なくてもいいぞ? 母さんの傍にいてやってくれ。


 さて、それでは応接室の隅っこで円陣でも組みましょうか。

 集合をかけたナディアを筆頭とする妖精族全員で、応接室の隅っこに陣取る。

「あ、あのぉ…全員集合しましたけれど、どうかしたんですか、マスター?」

 円陣組んで最初に言葉を発したのはナディア。

 何故だかヒソヒソ声だけど。

「実はな、今回この屋敷の」妖精さん達ともっち君を交代で連れて帰ろうって感じで来ただろ?」

 思わず俺もヒソヒソ声。

「はい…そうですけれども…」

「予定変更だ」

『!!!』

 それに驚いたのは、何故か妖精さん(小)達。

「いや、さっきまでは連れて帰ろうと思ってたんだよ? でも、母さんの妊娠が発覚したら、そうは問屋が卸さない…じゃない、そう事は簡単じゃないだろ?」

「ええ、まあ…それはそうですが…」

 ナディアも天鬼族3人娘も、これには頷くほかない。

「では、妖精たちはこのままこの屋敷で奥様の警護ですか?」

「うむ、さすがはナディアだ、その通り!」

 あ、なんか集まった妖精さんが拗ねてる? いや、いじけてるのか?

 中にはガビーーン! って顔の妖精さんもいるな。

「あ、えっと…妖精さん達は、帰りたかった?」

 妖精さん達の顔を見ていると、俺としてもちょっと心苦しいものがある。

『はい…』

 全員で口を揃えてそう言った。

 むぅ…そうか…でも、何でそんなに帰りたいのかな?

『たまには新鮮なエネルギーを補給したいです』

 んんん?? 意味が分からんぞ?

「ちょ、あなた達! マスターのエネルギーの詰まった水晶をあげたでしょう!?」

 そういや、度々ナディアは空の水晶にエネルギー込めてくれって持ってきてたけど、あれか?

『鮮度が違うのです!』

 そっかぁ…鮮度かぁ…。

 あんたら、いっつもちゅーちゅーしに来る精霊さん達と一緒やね。

『マスターの傍にいると、マスターの身体から新鮮なエネルギーが、こう…ふわぁ~っと漂って来るんです…それを吸収したら、もう快感ですよ!』

 いや、そんな感情たっぷり込めました! って感じのセリフを、よくもまあ妖精さん達全員で口を揃えれたね…俺、びっくりだよ。

 ん? 待てよ?

「なあ、ナディア…できる限り俺の傍に居ようとしてるのは、そのためなのか?」

「ななななななななな…んの…こここここここことでしょう…か?」

 ななな星人&こここ星人発見。

「いや、その慌てっぷりが全てを如実に物語ってるな…うん、よし決めた!」

 ナディアは俺の見えないところで俺のエネルギーを吸収して、か・い・か・ん…ってしてたのか。

 そうかそうか、それならば…

「王都の妖精さん達は、俺と帰るぞ。代わりにナディアを母さん付きとする」

 俺がそう言うと、ナディアが見るからに、がーーーーーん! と、ショックを受けていた。

「もっち君は、ナディアの補助と、コルネちゃんとユリアちゃんの警護をローテーションだ」

 もちもち妖精のもっち君は、『(*`・ω・)ゝ了解!』って顔してた。

 うん、任せて大丈夫っぽい。

「まままままま、マスター! 私も湖のお屋敷に帰りたいなあぁ…なんて…」

 半泣きのナディアが縋りつくように俺に訴えかける。

「そっか、我が家に帰りたいのか、ナディアは」

 俺の言葉に、即座に首をすごい勢いで前後に振りまくるナディア。

「じゃあ、迎えに来るよ…来年の今頃」

 次に俺の口から飛び出した言葉に、しおしおしお…と、女の子座りで床にへたり込むナディア。

 そんなナディアを、きゃっきゃうふふと突っついている天鬼族3人娘だが、

「んで、アーデ、アーム、アーフェンは、ナディアと交代要員な。あ、我が家のもっち君もとここに残るもっち君も、その時に交代するんでよろしく」

 そういうと、ナディアの横に3人娘が絶望に染まった顔でへたり込んだ。

 いや、お前ら交代で来るのは来年だぞ? 今からへたり込んでどうするよ?

「ちなみに、全員1年ごとの交代な」

 もっち君は、ふ~~んって感じで特に何のリアクションもしてないが、その他は全員がうな垂れていた。

「あと、妖精さん達は帰ったら、嫁―ずとユズユズに付いてお仕事をしてもらう事になるからな」

 お仕事自体は問題ないのか、『は~~~い』と元気よく返事をする妖精さん達であった。 

 元気の良い返事は頼もしいけど、仕事に着いたら驚くぞぉ。

 何たって、かな~~りハードなお仕事だからなぁ。

 ふっふっふっふっふ…。

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