第705話  命令だ!

 俺、只今、絶賛困惑中。

 目の前には、俺を神と崇め祈りを奉げる、3人のホムンクルス。

 それを呆然と見つめるダンジョンマスターズの3人&ちびっこ2人。

 振り返ると、今日が無の目で俺を見つめる嫁ーずの5人&ドワーフメイド衆の4人。

 頭を抱えてるサラとリリアさんとナディア。

 ぷっ! と噴き出したユズキと、お腹を抱えて笑うユズカ。

 何だコレ!?


「私に魂を吹き込んで頂いたのは、貴方ですね…神よ…」

 見た感じJDっぽいホムンクルスのディー・アーナが、俺の前で跪きながらそう言った。

「え~っと…」

 続いて、美少女JC系ホムンクルスのテーラ・マテールが、

「邪神の眷属により傀儡人形として造られた我身ですが、神の御力でその呪縛より解放されました」

「えっと、えっと…」

「我々に与えられたのは真っ黒な闇と色の無い世界でした。そこに光と多くの色を与えてくださったのは、神の御心なのでしょう」

 めちゃくちゃイケメンのヘーリ・オースが感動した様な顔で俺を見上げていた。

「んっと…」

 俺、どう答えたらいいんだろうか。

『さあ、我々に命令を!』

 3人が揃って俺に命令をしてくれって言ってきたけど、どうすんだ?


「じゃからお主等を造り出したのは、サラとリリアの協力を得た妾とモフリーナとモフレンダじゃ! そ奴はお主等が目覚める為のエネルギーを注入したにすぎんのじゃ!」

 ボーディが怒鳴りながら俺とホムンクルスの間に割りこんで来た。

『だから?』

 ホムンクルス3人がハモッて一言。  

「じゃから、妾達に従うのじゃ!」

 まあ、その為に造ったんだし、ボーディの言う事はご尤もです。

『嫌ですけど?』

 だけど、ホムンクルス3人が、またもやハモッて一言で斬って捨てた。

「ふんぎゃーーーーーーー!!!」

 あ、ボーディが頭を掻きむしりながらのたうち回ってる…。

「テーラ・マテールさん…どうしても私達には従ってくれる気はないのですか?」

 モフリーナが美少女に尋ねると、

「そもそも、この身体を造ってくれたというだけで、何故あなたに従わなければならないのですか?」

「あう…」

 モフリーナ、反論できず。

「………だめ?」

 モフレンダが、自分よりも少々大人な雰囲気のディー・アーナに尋ねた。

「駄目」

 会話が瞬間で終了し、モフレンダは膝を抱えてしくしく泣き始めた。


 さて、状況を整理しよう。

 つまり、ボディを製造して様々な知識とかを植え付けたダンジョンマスターズではなく、起動の為のエネルギーを注入した俺崇め奉っているって事だよな?

 んで、ダンジョンマスターズの言う事は聞かないらしく、ホムンクルスの言葉からして、俺の命令に従うって事だよな?

『大河さん…壊したのはリミッターじゃなく、どうやら基本的な行動原理を壊しちゃったみたいですね…』

 行動原理って?

『それは、まあ…私の造語ですけど。要は、あらゆる行動の原点とも言える、生物の根本的な部分と言いますか…』

 あ、何となくサラの言いたい事分かったかも。

 つまり、精神的とか社会的とか遺伝子的に、何を優先するとかいう思考とか情動とか本能的なやつだろ?

『あ、そうです! そんな感じのアレです!』

 んで、それを俺が壊しちゃったと。

 元はあの3人が上位存在になるはずだったんだよな?

『まあ、そうですね…はい』

 それが俺になったと。

『そうだんたんですね!』

 どうした、ナディア?

『それはとても喜ばしい事では無いですか、マスター!』

 何が喜ばしいのですかな、ナディアさん?

『あの3人は、いわば私の後輩! 先輩として色々とマスターの事を教えなければ!』

 ナディア、すとーーーっぷ! どうどう、ハウスだハウス!

『マスター、私は馬でも犬でもありませんが?』

 お前、あいつ等に何を教えようとしてるんだ?

『ある事ない事全部ですけれども』

 無い事まで言ってどうすんだよ! ってか、教えんでいい!

『え~~~~!?』

 え~じゃない! ってか、ちょっと性格変わり過ぎじゃねーか、ナディア?

『気のせいです』

 いや、気のせいじゃないと思う…。


 サラが言うように、あの3人の中の基本的な指示命令系統とかが壊れちゃったんなら、元に戻せばいい。

 あ、壊れた物は元に戻せないだろうけど、元通りの命令系統を作っちゃったら言いわけだよな?

 なら、答えは簡単じゃねーか。

 よし、善は急げだ。


「あ~、ディー・アーナ、ヘーリ・オース、テーラ・マテールよ、よく聞きなさい」

 俺は3人のホムンクルスに向かって、言葉をかける事にした。

 さっき、『さあ、我々に命令を!』って、確かに聞いたからな。

 だから、命令だ!

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