第698話  ヤバイ奴やんけ!

 俺、さっき確かに起動とか思ったよな。

 こんな場合は、覚醒させるとか思うのが普通じゃないのか?

『ああ、それは当然ですね。この素体の中身には私達と同じ超小型ポジトロン電子頭脳と複合素粒子電池を搭載しておりますから』

 リリアさん…それって、結局のところ管理局のテクノロジーなのでは?

『そうは言われますが、モフリーナ、モフレンダ、ボーディの3人も、ほぼ私達と同じシステムを搭載しておりますよ?』

 えっ!? んじゃ、ダンジョンマスターって…

『ええ、準管理局員ですが、何か?』

 あ、うん…そういや、それっぽい事を以前聞いた気がするわ。

『でしたら、遠慮なく起動しちゃってください』

 あの時の起動みたいな事をすんの?

 この衆人環視の中で?

『いえいえ、素体から伸びているケーブルの先に、それぞれに対応した水晶が有りますので、そちらにエネルギーを注入していただければ大丈夫です』

 リリアさんの言葉を聞いた俺は、改めて素体をよく見て見ると、シーツの下から点滴のチューブの様な物が伸びていた。

 その先を辿ると、ソフトボール程の水晶に繋がっていた。

 あれ1個か…リリアさん?

『あれだけで、十分です』

 うむ、了解した。


「良い名を頂き感謝する、トールヴァルド・デ・アルテアン殿。では、最後の頼みじゃ…3人に命を!」

 命って、ボーディ…あんた、そんな軽く言ったりしたら、嫁ーずが…

「え、命!?」「トール様は神?」「ああ…神よ…」「もしや、無くなった人も生き返られられる?」「うむ、流石我が旦那だ!」

 ほら、変な風に解釈しちゃったじゃねーか

 ってかメリル、命じゃねーよ! ミルシェよ、俺は神じゃねーし! ミレーラ、俺に膝まづいて手を合わせるな! マチルダ、それはないぞ! イネス…は、まあいっか。


 そんな大喜びの嫁ーずをよそに、俺は名付けした3体のホムンクルス的な素体の男女を見つめた。

『いや~大河さんは、そもそも将来は神様になるんだし、あながち奥様方の言っている事も間違いでも無いというか…』

 ん? そういや、サラにそんな事を昔に言われた記憶があるな。

『そもそも、貴方様はすでに神レベルのエネルギーを保有してるのですから、もう神を名乗ってもで良いのでは?』

 リリアさん、それは駄目だろう? ってか、俺が神になるのは、人生を謳歌した後の死後だったんじゃねーの?

『あ、既に現在においても、半分ぐらいは神様になってます。主に性的な部分で』

 おい! どういう意味だよ、サラ! 

『連日連夜、あれだけ搾り取られても元気な人って、この世界に居ると思いますか? 性心的に!』

 えっと…それに対するお答えは、私の与り知らぬ事でありますわよ、サラさん。

 ってか、精神の“せい”が性って漢字に聞こえた気がする…。

『毎回、あの万年欲求不満嫁達全員が満足するまで…足腰断たなくなるまで責める事が出来るなど…もはや魔神…』

 俺は魔神なのかよ、リリアさん!

『って事で、大河さんは魔神に決定!』『貴方様は、性欲魔神へとレベルアップしました』

 決定すな! ってか、どんなレベルアップなんだよ!

 性欲魔神だけは絶対に嫌だ!

『あ、大河さん、朗報です!』

 え、何?

『管理局長から、正式に性欲魔神として認定したって連絡きました』

 管理局長ーーーーーーーー!! この…お馬鹿ーーーーーー!!

『凄いですね…貴方様は、管理局の常識すら打ち破ってしまったのですね…』

 違うから! それ、絶対に違うからな、リリアさん!

 絶対に局長の嫌がらせだからな!

『あ、大河さん続報です』

 もうヤダ…何だよ、サラ…

『毎夜の如く、大河さんのリビドーを注ぎ込まれている奥様ですが…』

 はぁ…

『彼女達も神の世界に足を踏み入れてます! 良かったですね!』

 な、何だと!?

『ああ、それは当然ですね。貴方様のエネルギーを注ぎ込んでいる様な物ですから』

 あ、いや…そうかもしれないけど…え、リリアさん、本当に?

『これで大河さんが将来神へと至っても、5人の眷属が付いて来る事が決定しましたね』

 ……マジっすか…そうっすか…決定したんすか…そうっすか…未来永劫、搾り取られるんすか…

 

 ん? ちょっと待てよ?

 そういや、父さんってば母さんに滅茶苦茶搾り取られてるけど、父さんってどうなってんの?

『あ、大旦那様も、神の世界に1歩踏み込んでます』

 へっ?

『いや~凄いですねえ! 大奥様も、もう1歩で神の世界にご招待です!』

 いや…え、サラ、それってマジで言ってるの?

『マジです!』

 ど、どうして一般人の父さんと母さんが?

『それを説明するには、非常に長い時間が必要なのですが、簡単に説明をすれば、貴方様の影響です』

 ま、待て待て待て待て! リリアさん、どういう事だよ!

『貴方様はその身に有り余る程のエネルギーを保有しております。それは人の身に収まる様な量ではありませんので、普段から周囲に微量ですが漏れ出ております』

 えっ、漏れてるの?

『ええ、漏れてます。しかし微量とはいえ、元の量が量ですので、一般的な人族の数百人レベルの魂のエネルギーとなります』

 はぁ…そりゃ元が何億人分だっけ? もう忘れちゃったけど、元と比較すりゃそれぐらいなら確かに微量か。

『普段はそういったエネルギーはこの星に吸収されたり、輪廻転生管理システムが回収しておりましたが…ご両親は呼吸と共に体内に取り入れてました。貴方様が生れて来てから、ずっと』

 ちょっと待て! って事は、コルネちゃんは? ユズユズは? ドワーフメイド衆たちは?

『全員、がっつりとエネルギーを吸収してますよ? もう、この世界の人族とは別種の生物となりつつあります』

 ……ユリアちゃんは、まだ付き合い短いから…

『ああ、ユリアーネ様ですか? あの娘はそもそもあなたが生み出してますので、すでに神…妹魔神ですけど?』

 あ、そうだった…いや、そうじゃ無くて、妹魔神ってなんだよ!

『それじゃ、妹天使といったところでしょうか?』

 何ソレ! メチャクソ可愛いじゃねーか!

『ええ、ユリアーネ様は別格ですので』

 いや、そうだろうけどそうじゃ無くって、俺の影響って身近な人をどんどん神にしちゃうの!?

『まあ、神といっても貴方様の様に本物の神では無く、亜神といったレベルが限界でしょうけれど』

 それでも、それでも…俺って、メッチャヤバイ奴やんけーーー!


 リリアさんの説明を黙って聞いていた俺は、未だ王たる者の素体が眠るベッドの前で、床に手を付きガックリ項垂れた。

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