第697話  センス無い?

「あれ? 駄目だった?」

 やっぱ名づけのセンスねーのかな…俺。

「いえ、そういう訳では無く…その名前に、どんな意味があるのかと…」

 マチルダが、そう尋ねてきた。

 うむ、それに答えるのは吝かでは無い。

 よろしい、回答しましょう。

「ディー・アーナとは、ネス様のおわす神々の世界に置いて、狩猟や貞節を司る月の女神、ディアーナ様のお名前をお借りして、姓と名に分けさせて頂いた物なのだ」

「え!? 女神様のお名前を勝手にお借りして、変えちゃってもよろしいのですか!?」

 あ、しまった! そうだった…女神の名前とか付けちゃったら、大変な事になる…のか?

「いえ、マチルダさん。トール様の事ですから、きちんと聖なる女神ネス様より拝借する許可は得ているのではないでしょうか?」

 何か、勝手にメリルがサポートに回ってくれたぞ?

「ええ、あー、ごほん。ネス様より、この地の統治者の1人に対し、この名前をを授けるという事は、いわば祝福の様な物である」

 By 口から出まかせ。

『なるほどー!』

 うむ、全員が納得…誤魔化された…かな?

「ほう? 月の女神の名ディー・アーナ…良い名ではないか。アーナ国とするが良いぞ、モフレンダ」

 カジマギーの言葉に、いつの間にかその背に隠れていたモフレンダは、コクコクと頷いた。

 いつの間に来たの?


「では、真ん中の者にも名を。妾の眷属じゃ」

 そう言ってカジマギーが促した先には、少年というよりも青年に近い男性型のホムンクルスが横たえられていた。

「ああ、うん…えっとヘーリ・オース…で、どうかな?」

「ほう? ヘーリ・オースとな?」

 安直すぎたかな?

「そう、ヘーリ・オース。この地を常に照らし続ける太陽神、ヘーリオス様から頂いた名前だ」

 やばい! 完全に俺のセンスが無いのがばれ始めた!

「うむ、その名も良いな。では、我が眷属の収める国は、オース王国としよう」

 あれ? これで良いのか? 

 良いんだな? だったら、俺ってば、調子に乗っちゃうぞ?

 視線をさらにその横、まだ少しだけあどけなさが残る、嫁ーず一同よりも、どっちかというとサラに近い少女にも、

「って事は、その横に眠るのは、モフリーナの眷属だな? そうだな…テーラ・マテール。農耕と大地の女神様、テラ・マーテル様からお借りした名前だ」

 やっちゃった! めっちくちゃにノリと勢いだけで名前つけちゃった!

「良い名だと思います。では、私のダンジョン地区は、マテール王国としましょう」

 モフリーナも、めっちゃ納得してた。


 そして3人分の名づけが終わるや、全員から拍手喝采を浴びた俺。

 何ナニなに? スタンディングオベーションなの? そんなにいい名づけだった!?

「素晴らしいですわ、トール様!」「やるじゃない、トール様!」「感動…しました…」「良き名と思います」「まぁまぁだな!」

 ああ、うん…嫁ーずの評価点は、結構良かったみたいだ。

 ドワーフメイド衆も、一生懸命に小さな手で拍手してくれている。

 ユズキとユズカは…こしょこしょ話てるけど…なんだ?

「あれは、ローマ神話に出て来る神様の名前だね」「へ~さっすが私の柚希! 良く知ってるね!」

 ユズキにはバレバレだった。

 ナディアは…ん? 何か考えてるっぽいけど…どうした?

「………私には名前しかないですね…この先、ナディア・アルテアンを名乗らせてもらおうかしら……」

 何だか違う事を考えていた。

 ってか、アルテアンを名乗るなよ? 結婚したみたいになるから、絶対にダメだぞ?

 あ、いや…俺が創り出したから、俺の子供みたいなもんか? 

 そうなると、アーデ、アーム、アーフェンは…3人も、元は俺の魂のエネルギーからだったっけ…やっぱ、子供みたいなもん?

 いやいやいや、絶対にダメダメダメ! 

  でも、嫁達には、一応聞くだけ聞いてみるか?


 ってな事で、俺が一番悩んでいた名付けと言う試練の時は終わった。

 後は、3人にエネルギーを与えて、起動させたら終わりだな。

 ん? 起動? 機械じゃないのに、何でそう思ったんだ、俺? 

 はっ! もしかして、サラやリリアさんの様な身体なのか、こいつら?

 んで、俺が直感的にそれを察したとか…いや、まさかねえ…。

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