第668話 閃いたかも!
夕方の仕事を終えた俺は、夕飯までの空き時間を利用して、王都の屋敷に居る母さんに連絡をした。
『あら、それじゃネス様からお母さんの装備が貰えたのね!?』
ま、母さんには報告しないとね。
時間が出来たので、母さんに通信を入れたら、
『きゃ~~~! あなた~~~! 装備もらえたんですって~~~!』
めっちゃ喜んでるよ。
『と、トール! 俺の分もか!?』
『父さんのもだよ』
通信の呪法具からは、野太い声で咽び…泣いてはいないな。
うおぉぉぉぉ! とか叫んでる声が聞こえる。
『それで、トールちゃん…いつ母さんにくれるの?』
まあ、そう来るよなぁ。
『実は、ホワイト・オルター号は、ネス様の所用でまだ帰って来てないんだよ。だから、戻ってきたら持って行くね』
別にネスの用事じゃないけど、ダンジョン大陸に行っちゃったのは本当の事。
きちんと整備出来たら、もうホワイト・オルター号を使わなくたって、ダンジョンからダンジョンまで一瞬で行けるけど、今は無理。
『あら、そうなのね…それじゃ、楽しみに待ってるから。あの人にもそう言っておくわね』
『うん、楽しみにしててね。それじゃ…通信終わり』
よっし! これで母さんにも伝える事が出来たし、もうやり残しは無い…よな?
『えっと…マスター?』
この声は…ナディアか。
どうした?
『私達は、いつまでこちらに居れば良いのでしょうか?』
えっと…王都は嫌?
『そういう分けではありません。コルネリア様もユリアーネ様もいらっしゃいますので、楽しく過ごさせて頂いておりますが…』
おりますが?
『大樹の近くにおりませんと、エネルギーが溜まりすぎて大変な事になるかもしれないので…』
ん? どゆ事?
『いえ、あの大樹ですけれども、機能はマスターもご存知ですよね?』
え~~~っと…妖精を生み出すんだよな?
『ええ、勿論そうです。マスターが注入してくださったエネルギーを基本的には使用して、妖精を生み出しております』
うんうん、だよね。
それの何が大変な事に?
『実はですね…周囲のエネルギーも微量ですが、常時吸収しているのです』
…そんな機能付けた覚えはないぞ?
『ええ、私も聞いた事が有りません。けど、現実問題、そうなのです』
まさか、進化したとかじゃないよな?
『それは私には分りかねますが…要は、エネルギーが溜まりに溜まっているのです』
別に溜まってても…いや、待てよ?
もしかして、妖精を生み出すって形で、エネルギーを消費しないと、何か不味い事になるのか?
『はい、その通りです。あまりにもエネルギーが溜まると…多分、あの樹が…伸びます』
マジか! ただでさえ、領都の屋敷の屋根より高い、あのこの樹何の樹気になる樹が、もっとデカくなるのか!?
『そうだと思われます。どんどん大きくなると…屋敷を飲み込みます…確実に』
お、ちょ…やべぇじゃねーか!
『私達が戦争に出かけるので、妖精を生み出す機能はロックしてあります。ですので、かなりの日数放置しちゃってて…』
父さんの屋敷についこの間行ったけど…裏庭の樹まで見て無かったわ!
『そろそろ、妖精を生み出してやらないと…』
危険って事か。
『はい…』
むむむ…ホワイト・オルター号も無いから、ちょっと王都まで~! とか言って、迎えに行くのも難しいな。
『どうしましょう?』
待て、ちょ~~~っと待て! 何とか考えてみる。
明日にでも、もう一回連絡するから、それまで待ってくれ!
『了解しました』
やっべー! まさか、ただ屋敷の裏に生えてる樹が、そんな事になってるなんて想像もしなかった!
切り倒すってのは無理だよな…すでに領民にネスの樹として認知されちゃってるから、いきなり切ったりしたら大騒ぎになる。
妖精をバンバン産ませたら良いのか? ナディアがロック掛けてるとか言ってたけど、俺でも解除できるんだろうか。
もしも出来なかったら、時間と手間の無駄だよな。
一番いいのは、出来るだけ早くナディアをこっちに連れ戻す事か。
でも、どんな理由をつけたらいい?
元々は、コルネちゃんの付き人的な役割を持たせて創った、妖精の女王ってイメージなんだが。
アーデ、アーム、アーフェンは、嫁ーずの、もっと言えば、メリル、ミルシェ、ミレーラの付き人として創ったんだし。
ん? 今、何かピンッと閃いたかも!
これは、嫁ーずに相談だ!
てなもんや三度笠で、夕飯後に緊急家族会議開催!
「え~実は、かくかくしかじかって事なので、あの大樹には産まれるのを待つ妖精さん達が居ます。タイミングを逃してしまうと、あの大樹の中で妖精さん達は、生れないまま死んでしまいます」
俺の嘘情報を交えた、ちょっとだけショッキングなお話しに、嫁達の顔が青ざめます。
「妖精さんが死んでしまう、つまりネスの眷属が死んでしまうのです!」
がーーーーん! って顔の嫁ーず。
「なので、緊急でナディア達を呼び戻します。しかし、そうなるとコルネちゃんとユリアちゃんの護衛に支障があるのは明白」
うんうんと、嫁ーずだけじゃなく、ユズユズまでも頷く。
「そこで、いっそうの事…コルネちゃんだけでも呼び戻そうかと思います」
ここで、全員が、何で? って顔になる。
「コルネちゃんも、もう12歳です。侯爵家の一員として、色々と勉強しても良い頃合いです。折しも父さんの領地では、毎日の様に処理しなければならない書類が、がんがん溜まっています。きょ…父さんの屋敷のメイドさん達と、ナディアが付いていれば、きっとうまく処理も出来るはずです」
これには、全員が納得顔。
でも、口を滑らせるところだった、危ない危ない!
NGワードの巨にゅ…を口にしたら、きっと俺の明日は無かっただろう。
……………物理的に。
いや、メリルもミルシェも順調に育ってるんだよ? どことは言わないが…。
「なので、明日にでも王都の父さんに連絡をし、OKが出たらアルテアン運輸で蒸気自動車を1台貸し切りにして、来てもらいますので、皆もそのつもりでいてください」
旅の途中に野盗だの獣だの魔物が出たって、ナディアと天鬼族3人娘が居たら、瞬殺っしょ。
なので、そこは何の心配もしてない。
方針も決まった事なので、今夜はゆっくりと…え、何で奥様方は俺の手をがっちりと掴んでるの?
え、天鬼族が戻って来るまで、搾れるだけ搾り取る? 人魚さん達を見習って…って、見習わんでいいから!
こらイネス! 足を持つな! マチルダよ、その縄をどうする気だ? メリル、意気揚々と俺の部屋の扉を開けるな!
鍵はガッチリ新作を取り付けたばかりなんだぞ! 何でスペアなんて持ってるんだよ! 蛇の道は蛇?
いーーーやーーーだーーー!
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☆新作始めました。こちらも、どうぞ <(_ _)> よろしくお願いします
断罪の刃 闇を照らす陽の如く
https://kakuyomu.jp/works/16816927861644288297
ちょっとダークなお話し…かな?
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