第643話  駄々っ子か!

 その後の皇都は、さっくりばっさりとこの世から消え去って貰いました。

 いや~さすがこの俺が創った新燃料だな。

 爆発的な燃焼力の威力がすさまじい!

 結界で覆った皇都の汚物を、ゾンビごと綺麗さっぱり消毒してくれた。

 綺麗さっぱり焼き払った後は、精霊建設さんが、これまた綺麗さっぱりと更地にしてくれました。

 精霊建設さん、マジ優秀!


 さて、更地となった皇都の地下に眠っているボーディのダンジョンだが…土の精霊さんの先導で跡地というか元あった場所まで俺を始めとして家族やボーディたちと行くと、地面がボコボコウネウネと気持ち悪い動きをしたかと思うと、地下から汚い西洋風の棺桶の様な物が吐き出された。

 いやぁ…それはも盛大に、ペッ! って感じで地面が吐き出したね。

 それを見たボーディは、『な、何じゃそりゃー! もっと丁寧にあつかうのじゃー!』と、俺に文句を言って来たが…知らんがな。

 精霊さん達がやった事まで俺のせいにしないで欲しいもんだ。

 取りあえず取り出した棺お…もとい、ダンジョンは、ホワイト・オルター号にて回収。

 石材の様な材質で出来ている様で、素手では重すぎて動かせなかったので、ウルスラグナに乗り込んだサラとリリアさんが、結構雑にカーゴルームに放り込んでいた。

「もっと丁寧に扱うのじゃ! 妾の命とダンジョンハートの次の次の次の次ぐらいに大事な物なのじゃ!」

 ボーディがギャーギャー騒いでいたが、あの2人のする事だ…諦めろ。

 ところで、次の次の次の次って優先順位低いな!

 しかも、ぐらいって…本当に大事なのか、ダンジョン?


 とにかく、ボーディとカジマギーとダンジョンを積みこんだホワイト・オルター号は、やっとこ本陣まで戻る準備が完了した。

 あの気持ち悪い寄生虫も、意味不明なラスボスも綺麗さっぱり消えたこの場所で、もう俺がする事は無くなったからな。

「さあ、本陣に戻ろう! んで、さっさと全部を終わらせて家に帰るんだ!」

『おーーー!』

 ほぼ全員が天に手を付き上げていたが、約1名だけ難しい顔をして考え込んでいた人がいた。

 誰あろう、我が家のゴッド・ママンだ。


「トールちゃん。お願いがあるんだけど?」

 えっと…上目遣いで媚びる様なそんな姿で、一体俺は何をお願いされるんだろう?

 母さんのお願いって、今までの経験上…大体、無茶振りが酷かったんだが…。

「お母さんにアレを1機、ちょ・う・だ・い♡ アレがあれば、お母さんも戦えるわ!」

 いや、可愛くちょうだいとか言われても。

「欲しいの欲しいの、ほしーいーのーー!」

 アレって、もちろんウルスラグナの事だよな。

 ってか、駄々っ子か!

「戦うって…母さん、何と戦うつもりなんだよ?」

 ただ遊びたいだけだろ?

「え~っと…」

 ホレ、母さんの目がめっちゃバタフライで遠泳してるぞ。

「えっとえっと…そう、世間の荒波と戦うのよ!」

「……………」

 思わずジト目で母さんを睨んでしまったのは、きっと許される事のはず。

 何気なく周囲を取り囲む我が家のメンバーも、全員がジト目だ。

 ユリアちゃんは分からないかもしれないが、コルネちゃんは明らかに、『世間の荒波って…』と、呆れてるぞ。

「じょ、冗談よ、冗談! いざという時の為に備えるのも大事だと思うの!」

 いざって時ねえ…そんな時が来るのか?

「確かに、いざって時に備えるのは大事だけど…」

「そうよね! そうでしょう? 備えは大事よね! 備えあれば憂いなしっていうものね!」  

 俺を説得できたとでも思ったのか、やたら早口でまくし立てる母さんだが、

「大事だけど、あれって俺の命令でしか起動しないよ?」

 王都でも領都の屋敷でもいいけど、どこに置いてたって俺の音声入力でしか起動しないんだぞ、ウルスラグナは。

 でっかい置物になっても邪魔なだけなんじゃね?

「あ…」

 母さん、今頃気付いたのか、目に見えて落ち込んじゃったよ。

「ねぇ、トールちゃん…何とかならない…?」

 お願いされてもなあ。

 ウルスラグナは、ちと強力すぎるからなあ…仕方ない。

「しゃーないなあ…一応、ネス様に聞いてみるよ。もしかしたら、父さんと母さんに貰えるかもしれないから」

「本当!?」「トール、俺もか!?」

 あ、父さんも興奮しちゃった。

「まだ貰えると決まった分けじゃないから! それにコルネちゃんとかユリアちゃんみたいな装備じゃないかもしれないよ?」

「「ぜんぜんおっけーよ(だ)!」」

 2人の返事が見事にハモった。

「はぁ…。全部終わって、俺が家に帰ってからね。貰えるようなら、通信入れるから」

「「約束ね(だぞ)!」」

 良く息の合った夫婦だよ、ほんと。

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