第635話 平坦な道
カジマギーと呼ばれた幼女は、金色に輝く髪の毛を持ち、背中に少し小ぶりなコウモリの様な羽をもつ少女だった。
ボーディは、一言二言その様所と話をすると、不意に俺の方を向いて、
「再度主に問うが、この地は妾の好きにさせてもらって良いのじゃろ?」
まあ、この問いかけに対する答えは1つしかないんだが。
「イエス!」
俺の答えを聞いたボーディは満足げに頷き、
「ではカジマギーよ、打ち合わせの通りに、あ奴を永遠に逃れられぬ迷路に落としてしまうのじゃ!」
「我が主の命ずるままに」
偉そうなボーディーの言葉に、深く頭を下げるカジマギー。
何の小芝居? とか俺が考えていると、カジマギーが右手を小さくなった結界球のすぐ下へと向けた。
「おお、そうじゃった! カジマギーよ、これをそなたに与える。これを使ってダンジョンを造るがよい。但し、この地ではこの球を閉じ込める為だけのもので良い。他に色々とエネルギーは使うで、大事に取っておくのじゃ」
ん??
「了承致しました、主様」
ボーディから恭しく俺のエネルギーの詰まった水晶を受け取ったカジマギーは、再度あの球に向かい直して、水晶を左手に持ち、右手を球のある場所へと向かい伸ばした。
「…………」
何かを小声で呟いたな、と思った瞬間、いきなりあの球が地面の下に吸い込まれた。
いや、それは正確な表現じゃない。
あの球のあった場所に、球と変わらぬ大きさの穴がぽっかりと開いていた。
その穴の中に、瞬時にあの球が落ちたって事なんだろうな。
カジマギーは未だに穴に向かって何かブツブツと呟いているし、そんな幼女を後ろから見守るボーディ。
ふたりの邪魔をしない様に、そっと穴に近づき中を覗くと…真っ暗で何も見えん…
え~っと、これってどれぐらいの深さがあるんだろう?
「ん? お主、この穴が気になるのかや?」
そんな俺を見ていたボーディが声を掛けて来た。
「そりゃ、あいつの落ちた穴だろ? 気にもなるって…で、どんぐらい深いの、コレ?」
「そうさのぉ…お主が理解しやすい様に答えると、あの球が20万個分らいかのぉ」
俺が理解しやすい単位か、何故あの球になった?
いや、それはどうでも良いが、あれが直径1mだとしたら、ざっと20万m…って事は、200km!?
確かこの星の直径が、3,300kmぐらいって聞いた事あるから、半径は1,650kmだから…すごく深い?
「その深さじゃと、かなりの熱量をもっておるでの。あ奴もそうそう活動できまい」
そりゃそうだよなぁ…
「お、そろそろ終わる様じゃぞ。全部終わったら、この穴も元に戻しておこうかの。カジマギー、頼めるかの」
「仰せのままに」
どうやら地下の脱出不可能な迷路作成作業が終わったらしいカジマギーが、ボーディにそう答えると、またもや穴に向かって手をかざしブツブツと呟くと穴がだんだんと縮まっていき、やがて綺麗さっぱり消えてなくなった。
「よし、これで全部終わったのじゃ。次は妾のダンジョンにも手を付けようかの」
分かってはいたが…あまりにも簡単な終わり方だなあ。
これだけ散々引っ張って、こんな終わり方で良いんだろうか…。
『大河さん…私、こんなあっけない終わり方で良いのかって、ちょっと思っちゃいました』
あ、やっぱりサラもそう思う?
『だって…この戦争の最大の山場って、ここじゃないですか! この数か月、どんだけ頑張って来たと思ってるんですか!』
いや、サラが頑張ってたかどうかは、評価が分かれるところだと思うが、確かに山場ってここだよな。
『どう評価が分かれるか、このサラちゃんの目の前でじっくりと解説して欲しい所ではありますが…とにかく、最大の山場が、パツキンロリ幼女に瞬時に平坦な道に均されちゃったんですよ!? 主人公として、これでいいんですか? 読者が納得しますか?』
俺が主人公かどうかはおいといて、読者ってなんだよ!
お前、ちょいちょい誰かが俺の事を見てる様な事を言うよな?
『え? 何を言ってるんですか。リリアがまた小説化してくれますよ?』
リリアさん…まだ懲りずに小説投稿してるのかよ…
『ええ、頑張って投稿してるらしいです。大賞の賞金はしょぼいですが、出版確約だそうですよ。漫画化されたり、はてはアニメ化もあるかもしれません! そうしたら、印税ウハウハですよ!』
じゃぁ、また落選決定だな。
『何故です?』
だって、どうせ俺の人生って、山も谷も無いから…。
『言えてますね…どんまい、大河さん』
うん、ありがとう…。
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