第606話 秘儀
俺のメンタルをガリガリと削った、事件は一先ず終わりを告げた…らしい。
おしおきだの超強打の矯正だのとサラを引きずって行った嫁達だが、もともとサラとは長い付き合いだし、その性格も良く知っているので、単にサラが俺にちょっかいをかけてじゃれていただけだと言う事は、百も承知らしい。
ナディアを始めとした妖精達と妹達は、本気で怒ってた様だが。
とにかく、サラを引きずり込んだ食堂で、がっつりと小麦粉をこねてパン作りさせていたというので、お仕置きなんてしてないだろう。
作らせてたのが、フランスパンに似たバゲットやら、デニッシュやら、クロワッサンを各大量生産だったとか。
俺は知らなかったのだが、これらのパンは、手作りだと滅茶苦茶大変なんだとか。
作った事ないから、知らんがな…。
パン作りに精通してる人がいたら、是非とも教えて欲しいもんだ。
ちなみに、失敗作のバゲットは、関係者が美味しく頂いたそうです…ってか、サラに食わせたらしいけど。
さて、そんな事が飛行船内で行われているなんて知る由も無いトール君は、取りあえずシールドの設定変更をします。
イメージとしては、ヒルコよりも少しだけ大きく半球状のシールドで囲い、一番天辺には排煙用の穴を開ける。
この穴があまり大きいと、色々と問題ありそうなので、小さ目で何個も開けておく。
次いで、同じように酸素供給用の小さめの穴を、地面からほんの少しだけ上の位置に、全周にわたって開ける。
完全燃焼の為には、炉の内部の温度を冷やさない事が大切なので、吸気・排気共に、最小限の穴にしなければならない。
そして酸素供給は、一ヶ所だけでは不完全燃焼になり、炭化するだけで終わってしまう可能性がある。
その為、穴の位置は慎重に考える必要があるのだ。
ここで穴と表現はしたが、実際にシールドの任意の位置に穴は開けられない。
なので、煙や二酸化炭素などだけを通す場所、酸素だけを通す場所を、あえて穴と表現した。
って事で、次はその他にシールドを通過できる物を設定。
精霊さん方は出入り自由にし、俺の創った物は、外から中へと通す。
炎や有害物質は通さない様に設定しているのだが、問題は熱だ。
気温よりも高くなった排気と共に、内部の熱エネルギーも外に排出されてしまう。
熱を通さないなんて設定は無理な様なので、エネルギー損失は仕方ないにしても、周囲への被害を考える必要がある。
なので、風の精霊さんと水の精霊さんで、排気を冷却してもらう様にお願いした。
酸素の供給も、風の精霊さんにお願いして、送風機の代わりをして貰う。
着火は火の精霊さんだし、あのヒルコが穴を掘って逃げ出さない様に、大地の精霊さんががっちり固めてくれるそうだ。
つまりは、シールドの中は疑似焼却炉となり、内部にはヒルコの焼却時に出る可能性のある、水蒸気や塩化水素、硫黄酸化物や重金属などなどの有害物質と、ヒルコの灰だけが残るようになっている。
それを、シールドを解除した後に、吸いとーる君で残らず吸い取ればお終いってわけだ。
さてさて、これで、大体の設定は出来たと思う。
後は、決行の時を決めるだけだな。
『大河さん…助けて下さい…』
ん? 何だ、サラか。
調きょ…おしおきは終わったのか?
『調教って言い掛けましたよね? ねぇ!?』
ちっ、聞こえたか。
『否定しない!?』
んで、どうしたんだよ。
『クロワッサンって、大変なんですよ…』
ほう?
『硬っいバターをパン生地に練り込んで、何回も折り返すんですよ…腕がパンパンです…』
そうか、ご苦労。
『もちょっと、労わってくれてもいいんじゃないですか!? デニッシュも作ったんですよ! 似た様な行程で、肩もバッキバキになったんですよ! バゲットって、何ですかアレ! 滅茶苦茶作るの難しいですよ! 上手く形にならなかったら、容赦なくやり直しなんですよ! 駄目出しされた失敗作が山盛りですよ!』
ふ~~~~~ん。
『ちょ! サラちゃんの苦労話を聞いて、感想それだけ!?』
だって、サラの自業自得じゃん。
『…よよよ…大河さんに乙女の胸を揉まれて、サラちゃんの心は深く傷ついたというのに…』
胸? 俺には何か柔らかい壁ぐらいにしか感じなかったぞ?
『柔らかい壁!?』
だって、すとーーんってしてて、デコボコも無かったしなぁ。
『なぬっ!?』
あ、でも!
『でも?』
俺の胸筋の方が、大きかったのは確かだな…今の俺って、Bカップぐらいの大きさあるぞ、大胸筋。
『……それはどういう意味ですか?』
男の胸よりも小さいって、女としてどうなの?
『うっきーーー! サラちゃんは、成長期なんですーー! これからバインバインになるんですーー!』
いや、リリアさんが、100%成長しないって言ってたぞ。
『……リリアめ…こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か…』
ああ。そのネタは過去にやったから、別のでお願い。
『ネタじゃねーわ! くっそー! リリアに復讐だー!』
復讐て、どうせ返り討ちにされるんだから、大人しくしとけばいいのに。
『その通りです。ですので、私の持つ48手ある秘儀でサラの心ごと粉砕です』
『うげっ! リリア!』
そりゃ聞かれてるだろ…この念話。
48手って、相撲じゃないんだから…ほどほどにしときなさいよ、リリアさん。
『ええ、大丈夫です。最後は仏壇返しでヒィヒィ言わせますから』
相撲じゃ無くて、そっちの48手かよ!
あれ? 相撲にも仏壇返しってあったよな…一体、どっちの事なんだ?
『ふっふっふ…知りたいですか?』
…敢て聞かないという選択肢を選ぶことにします…。
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