第602話  何か言ったっけ?

 え、火の精霊さんも耐えられるか自信ないの?

 俺の目の前にずらっと並んだ火の精霊さんは、申し訳なさそうに(?)小さくなっていた。

 いや、もともと小さいけど…じゃなくって!

 そっかぁ…耐えられるか自信ないんだ。

 確かに閉じた場所での大火力だと厳しい…い?

 あれ? もしかしたら結界の中で大火力を使ったら、酸素ってどうなるんだ? 

 

 確か燃焼ってのは、可燃性の物質と酸素と熱の3要素によって成り立ってて、どれか1つでも欠けたら消火できるとか。

 火災の時の消火の原理ってのは、熱を奪うための大量の水か、酸素を奪うための泡とかの消火剤を掛ける事のはず。

 閉じた空間で劫火なんて、完全に酸素が無くなって、途中で消えるじゃねーか!

 あかん…せっかく創造したけど、そこまで考えて無かった…


「えっと、大河さん。また1人で考えてませんか? こんな時こそ、相談ですよ、そ・う・だ・ん」

 そうは言うけどな、サラ。

 これはかなりの難問だと思うぞ?

『はあ…何をそんなに悩んでるんでしょうねえ、貴方様は』

 リリアさん、何かいいアイディアあるの?

『本当に、お馬鹿さんですね。貴方様が創ったシールド発生装置って、絶対に半球状のシールドしか発生出来ないんですか?』

 ん~っと…あれ? もしかして出来るのかな?

『そもそも、シールドとは物理・非物理を含めた障壁を指す言葉です。ほとんどの人のイメージでは、壁か球形や半球形の物が多いようですが、形状に決まりは有りませんよね?』

 ……うん?

『そこは言い切りなさい! 貴方様が皇都に入ってコソコソと影に隠れて創造してたのは何ですか?』

 俺の新しい秘密兵器…

『もっと具体的に!』

 えっと…俺の魂のエネルギー量次第で、強度と形状を自由に変える事が出来る武器。

『それで、貴方様が創りあげた結界は?』

 物理的な脅威から皆を守る為の球か半球状の障壁? あ、任意の人とか物とかの出入りを制限する事も出来るよ。

『その2つの違いは?』

 攻撃と防御…かな?

『基本的には同じ物でしょうが!』

 ほえ? そうなの? いや、そうかも!

『って事はですよ? シールドが半球状でなくとも大丈夫なわけです』

 おお! 言われてもれば確かに!

『そこで、形状を変える事が出来るのであれば、私からの提案はズバリ! ロケットストーブ型のシールドです!』

 ロケットストーブって、あの自作でよく見る奴?

『そうそう! ストーブの内部にある、ヒートライザーや下部のバーントンネルを筒状のシールドで構成するのです』

 ん? ってことは…アレを中心にした煙突と、アレから横に酸素取入れ用の経路を創るって事?

『きちんと延焼を防ぐために、周囲を冷却出来る様にストーブ本体もシールドで創るのです。ま、これは半球状でも構いません』

 おお! 煙突効果か! って事は…ヒートライザーの中で燃焼する?

 まてよ、酸素取入れ用の経路に、もしも風の精霊さんを使ったら…

『そうしたら燃焼温度も速度も上がりますね。ついでに煙突効果を促進させる為には、ヒートライザーを長くする必要があります。しかも、長くすれば周囲への熱や炎での被害も少なくなります。止めにストーブ本体を冷却するのも、精霊さん使えばいいじゃないですか』

 そうか! 水の精霊さんと土の精霊さんで断熱効果も持たせるわけか!

『ちょっとしたシールドと科学の知識があれば、簡単に解決できる問題ですよ。やっぱ、馬鹿?』

 うるせー! いや、でもありがとう。

 これならシールド発生装置の設定次第でどうとでも出来そうだ。

『この代償は高くつきますからね?』

 お、お手柔らかに願います…。


 そうと決まれば、各パーツ毎にシールド発生装置を創らねば!

「大河さん、大河さん」

「どうした、サラ? 今から創造しなきゃならんのだから、しっかりとイメージを固めてだな…」

 忙しいんだから、話しかけるなよな。

「リリアに騙されてるの、わかってます?」

「へっ?」

 いや、煙突効果って完全に俺でも忘れてた、すっごい現象だぜ?

 そんな大事な物を思い出させてくれたリリアさんが、一体何を騙そうってんだ?

「あんた、自分でシールドの説明の時に言ってたの、もう忘れたんですか?」

 俺、何か言ったっけ?

「任意の人とか物とかの出入りを、制限する事も出来るんじゃ無かったんですか?」

 その通りだけど?

「なら、酸素とか煙とか熱とか精霊さんの出入りも簡単に出来るはずでは?」

 あああああああああああああ!!!!!!!

「要は、シールド発生装置の任意で出入り出来る物を、今回の作戦用に設定し直せば良いだけなんじゃないんですか?」

「そうだ、その通りだ! リ~リ~ア~さ~ん?」

『ちっ! バレたか!』

 何が、この代償は高くつだよ! そんな苦労する必要ねーじゃねーか!

『さてと、お風呂でも入りましょうかねえ~』

 オイ、コラ!

『なんですか? 一緒に入りたいんですか?』

 入らんわ! ってか、良くも騙してくれたな!?

『良いじゃないですか、色々と役に立ちそうな知識を思い出せたんですから。』

 そうだけど、そうだけども! 

 でも、何か釈然とせん!

『んじゃ、お風呂いってきまーす!』

 あ、コラ! ちょ…マテ、コラ!


 ちくそー、後で覚えてろよ。

 まあ、確かに有益な知識ではあるけどな。

 まてよ、小型のロケットストーブなんて量産出来たら…もしかして、儲かっちゃうかも?

「商売人やなあ…』

 うるせーよ、サラ!

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