第601話 確認…してない
アイディアが決まれば、あとはさっさと創造だ。
部屋にこっそりサラを呼んで、そそくさと創造に勤しむとしましょう。
「うっし! これで創造完了だ!」
皆のアイディアを元に、俺が改良…って程じゃないが、ちょっとだけ手を加えた物が完成した。
「ふぅ…なんて面倒な物を創造するんですか…疲れましたよ…」
サラが、出てもいない汗を拭う仕草を見せた。
もちろん、そんな嘘は俺には通じない。
「汗なんて出て無いぞ」
「知ってます~! ちょっとした雰囲気です~!」
語尾がイラつく伸ばし方だが、今回だけは大目に見てやろう。
だって、俺がよく知らんメタンハイドレートの知識を大幅に補完してくれたのは、他ならぬサラだからな。
「無知な誰かさんのおかげで~ー、この天才超絶美少女サラちゃんの頭脳を使ったから疲れたんです~!」
大目に見てやる…
「大体~、メタンハイドレートなんて~、子供でも知ってる物質を知らないなんて~、サラちゃんびっくりです~」
お、大目に…見てや…れるかー!
「やかましーわ! 俺の創造をサポートすんのがお前の仕事だろーが! ネチネチうるせ―わ!」
思わず拳骨を落としておきました。
ど頭のど真ん中に。
「!!!!!!!!!」
頭を抱えて蹲ってるサラは無視だ!
ところで、メタンハイドレートとは、一体なんじゃらほいと思ってる人も多いだろう。
まあ、地球なんかでは海底に眠る次世代エネルギーだとかいろいろ言われてる、エネルギー資源だ。
簡単に言えば、天然ガスの一種であるメタンが、深海の更に下の地層の中で、極低温で超高圧に晒されて出来た、氷状の物質で、非常に不安定な性質を持ってはいるが、高いエネルギー変換効率を持つ物である。
高効率でエネルギー変換できるという事は、すなわち燃焼時に余計な物質を排出しにくいと言う事で、化石燃料の様に自然界に多大な影響を与える事が少ないと言う事だ。
つまり、良く燃えるだけでなく、公害の元を排出しない、とっても優秀な燃料ってわけだ。
俺が転生する前の世界では、ものすごく将来性が期待された物質だったが、まだまだ安定して産出は出来ない。
石油みたいに、掘ったら噴き出すって物ではなく、掘りださなきゃならないんだから、まあそれも仕方ない。
さて、そんなとっても優秀なメタンハイドレート君だが、そのままだと燃える氷だ。
俺のいた世界の採掘方法は、メタンハイドレートの層まで掘る事が出来たら、ハイドレートを溶かしてメタンを取り出す方法が主流だったとか聞いた事がある。
要は、燃える氷を溶かして天然ガスを取り出すって事だけど、ガスだと創造しても使い難いのは、誰でも想像できるだろう。
なので、ある物質と混ぜ合わせて使う事にした。
ある物質とは? それは、油だ。
モフリーナにアルテアン領から持って来てもらった油とは違う。
ぽつりと誰かさんが漏らした、石油だ。
この世界にもあるらしい石油だが、いまだ誰にも発見されておらず(管理局は除く)、誰にも使われていないとの事なので、この世界に無い物として管理局からも創造の許可も下りたってわけだ。
誰かにその存在を認識されない限り、その世界にある物とは認められないって事らしいけど、この辺りのルールも結構いい加減なんだな。
もしもどこかで石油を使われてたりしたら創造できないのだが、その時は面倒だがその使われている石油を取り寄せればいいだけだ。
とにかく許可が下りたので、俺は石油とメタンハイドレートを数千トンずつ創造し合成してカードにした。
作戦は、こうだ。
まず、結界であのヒルコを逃げ出さない様に完全に囲む。
次に、メタンハイドレートのカードから、大量のハイドレートをヒルコにぶっかけて埋め尽くす。
とどめに着火剤がわりの石油をその上からデコレートして、火の精霊さんに一斉点火してもらう。
そしてこんがり焼けたら、吸いとーる君で灰も残さず吸い取って終了てわけだ。
簡単だろ?
部屋でサラと創造を終えて一息ついていると、おずおずといった感じの念話がナディアから届いた。
『マスター…今更ですが…結界の中で燃やすのですよね?』
もちろんだとも、ナディア君。結界の中で、劫火で焼き尽くしてやるのだ。
そうしないと、周囲にとんでも無く被害が広がってしまう。
結界で閉じ込めるのには、この炎と熱を閉じ込めるって意味もあるんだよ。
『そんな劫火の中で、火の精霊さん達は…大丈夫なんですか?』
あ…!
えっと…火の精霊さんって、どこまで耐えられるんだろうか?
『もしかして、確認されて…ないとか?』
確認…してない。
精霊さーーーーーん! ちょっと集合してくださーーーい!
特に火の精霊さんは、ダッシュでお願いしまーーーす!
大至急確認したい事があるんで、マジで急いでくださーーーい!
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