第559話  夜露死苦

 まずは敵軍からホワイト・オルター号の威容がギリギリ目に入る所に着陸し、父さんと騎士さん達を降ろした。 


 陽の光の下に輝く鎧は、王国の騎士さんの物は限りなく黒に近い藍色。

 元々父さんが使っていた鎧は、黒竜の鱗をふんだんに使った一品で、家紋とネスの姿を描いた藍色の藍色のマントを纏っていたのだが、それをどうやら真似たらしい。

 神国の騎士さん達は、メタリック調の白っぽい鎧。

 どの鎧もピカピカに磨き込まれていて、とても輝いている。

 真昼間に直視したら、目が痛くなりそうだ…ってか、グラサンが必要だ。


 騎士さん達を降ろしたホワイト・オルター号は、ゆっくりと離床して30mほどの高度を維持して、騎士さん達の進軍に合わせてゆっくりと進む。

 巨大な飛行船と、光り輝く鎧を身に纏った精鋭の騎士さん達を見た敵軍は、大いにどよめいた。

 長く伸びた敵軍の先頭に居た兵士達は、足元もおぼつかないようだが、幾人かは立ち上がって剣を構えているのは確認出来た。

 ざっと見ただけで、最前線に数百人は兵士が居るだろうが、立ち上がったのは1割にも満たな兵士だ。

 さらに空中からならば良く見えるのだが、地平線まで敵軍の列は続いている。

 眼下には数万は確実に敵がいる事だろう。

 しかし、空から見下ろす眼下の光景は異様な物だ。

 こんなに目立つ飛行船がやって来るというのに、ほとんどの兵はへたり込み、立ち上がる事も出来ない様だ。

 いや座っているだけならまだ良い。

 寝たまま身じろぎもしない兵も多く見られる。

 もしかして…作戦を実行するまでも無いのかな?

 このまま父さん達が突入しても、あっさりと敵軍を殲滅できそうだ。

 いや、まあ…無駄に命を散らす事も無いんで、やっぱ作戦を発動しよう。

 

 ってな事を考えている内に、いよいよ敵軍の先頭に声が届く所まで近づいた。

 王国と神国の騎士さん達は、父さんを先頭に進軍していたが、敵軍を目の前にしてその歩みを止めた。

 そして父さんが背負っていた巨大な剣を大きく振りかぶると、目の前の地面に突き立てた。

「アーテリオス神国とグーダイド王国へと宣戦布告をして来た、暗黒教ダークランド皇国の諸君! 私はグーダイド王国で侯爵位を賜っているヴァルナル・デ・アルテアンである!」

 目の前の大勢力を前にして、一切臆することなく、力強い声で語り始めた。

「我らは、水と生命の女神ネス様、そして太陽神様、月神様より、暗黒教ダークランド皇国の諸君がこれまでに行って来た非道な行為を止めよと神託を受けて来た。このまま投降すれば良し、抗うと言うのであれば、我が剣の錆びにしてみせよう!」

 あれ? 段取りと違うぞ! ネスの言葉が先じゃ無かったか?

 父さん、もしかして、微妙に緊張してるのかな? 

 ま、いっか。

 空中3D映像投影装置・改(俺命名)にて、敵の全軍に見える様にネス様と太陽神&月神をデカデカと空に映し出す。

 父さん、空を見て、ちょっと慌ててるな…もしかして段取り思い出したか?

 では、3、2、1、どーーん!

『我は、水と生命の女神ネス』

『我は、太陽神である』

『我は、月神である』

 空に浮かぶ美しき巨乳女神と、その左右に控えるウサ耳とキツネ耳のロリッ娘神様。

『大地神を蔑ろにし、存在せぬ闇の神などを信奉するなど、其の方らの行為、断じて許し難し。大地神よ、ここへ!』


 ネスの呼びかけで顕現したのは、淡い茶髪にちょこんと丸い可愛いケモ耳がついた新しい巫女さん…!?

 なんかもの凄く着崩してて、どっかのレディースっぽく見える気が…。

 額には喧嘩上等と書かれた鉢巻をし…? 手には日光と書かれた木刀…? 

 あれ? 俺、こんなデザインにした記憶無いんだけど?

 もしかして背中に夜露死苦とか書いてないよな、その巫女服!?

 もしかして、サラかリリアさんが手を加えたな! 

 

 いや、まあデザインはこの際いいや…事前に確認しなかった俺も悪いんだし。


 さあ、本邦初公開! とくと御覧じろ! なんとクマ耳の娘の大地神ちゃんです!

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