第512話  打ち合わせしよう!

「砂浜での訓練は、足腰を鍛えるのにうってつけだと感じました。あと、奥様の言葉を聞き逃す訳にはまいりません…」

「大規模な模擬戦は、良い経験になりました。あと、奥方様に逆らってはいけません…」

「伯爵様の奥様方は、お強いですねぇ。私も、もっと鍛えなければ!あと、大奥様は笑顔でも声が…」

「いや~コルネリア様とユリアーネ様は、さすがネス様の巫女様と神子様だけありますなあ! あと、命が惜しいので奥様の話は…」

「私、海は初めて見ました! 感動です! あと、人魚さんは何というか…エロいですな~。あと、侯爵様の奥様は怖いです!」


 何となく騎士さん達に、この砂浜での訓練の感想を聞いてみたのだが、何故か必ず最後に母さんへの感想を口にしていた。

 もちろん、母さんの姿が見えない場所限定でのお話し。

 俺だってまだ死にたくないんだよ。

 確かに、母さんと直接対峙しなければ、あの怖さは分からないだろう。

 父さん直属の部下とか聞いてたもんだから、公爵付きの騎士って事はエリートなんじゃね? とか思ってたんだが…騎士さん達も、かなり色々と苦労しているらしい。

 それでも俺は騎士さん達に物申したい。

 あのゴットばば…んんっ…裏ボ…んんんっ…いつまでも若く美しいお母様と、10年以上も付き合ってきたんだ!

 早くに昇爵されて自分の屋敷を持って家を出たけど、そりゃもう一緒の間、何度死ぬか…んんんんっ…すごく楽しかったです。 

 くっ…心の中でも本音で話せないとは…これがトラウマか!? (解:違います。それは恐怖です)

 とか馬鹿な事を妄想しながらも、そろそろ帰宅の時間。

 海上に待機させているホワイト・オルター号を呼び寄せて、全員乗り込んだのを確認したら、いざトール君の街までれっつごー!

 

 そろそろ、サラとリリアさんも帰って来てるはず。

 ナディアや天鬼族3人娘は、今回の計画に欠かせない人材だ。

 正確には、計画の事前準備に欠かせない…だな。

 ユズユズは、あれから船室に引きこもって、ずっと御守り呪法具製作準備にかかりっきりだ。

 この国の未来が掛かってるんで、おちゃらけユズカでさえ、めちゃ真面目…に、一応は見える…大丈夫かなぁ…。

 いや…まあ、その辺はユズキも居るんで、多分大丈夫だろう。大詰めは俺も手伝うつもりでいる。

 それよりも、帰宅してからのナディア達との話の方が、今は大事だ。

 一応、嫁達にも話は通しているので、ここはしっかり話さねばな。


 そんなこんなを考えていると、まだ夕方であるはずなのだが、山の麓で平地よりも少しだけ早く日が暮れる俺の領地へと、ホワイト・オルター号が到着した。

 いつもの如く、我が家の裏庭に船体を寄せて、両親や妹たち、我が家のメンバー全員とペット達、騎士さん達を降ろした後は、ネス湖の中へ沈めておきます。

 少なからず潮風の影響で、船体に塩が付着するから、しっかり綺麗な真水で洗浄しなきゃね。

 基本的にシールドで保護されている船体だけど、乗り降りの時なんかは、どうしてもシールドを解除するんで、潮風が入ってきちゃうから、きちんとね。

 そもそも錆びない気もするけど…まあ、気分の問題だよ。


 ホワイト・オルターが湖にゆっくりと沈んで行くのを見届けた? 騎士さん達は、父さんの解散という号令で、わいわいと宿へと戻っていった。

 お疲れでしょうから、温泉にゆっくりつかって休んで欲しい…母さんもずっと近くにいた事だし、気も張ってただろうからね。

 我が家のメンバーは、屋敷の中へ。

 夕方でも煌々と明かりの魔道具が照らす玄関ホールには、ナディアを筆頭に天鬼族3人娘に妖精さん一同とサラとリリアさんが並んで待っていた。

『お帰りなさいませ』

 俺達に向かって、みんなで綺麗に揃った声のあいさつと、、きっちりと腰を折った綺麗な礼で迎えてくれた。


 ナディア達は別として、サラとリリアさんにそんな礼をされたら、何か裏があるんじゃないかと、穿った目で見てしまうのは、おかしい事なんだろうか?

『絶対におかしいです! サラちゃんを何だと思ってるんですか!』

 え? ぽんこつナビ。

『うっきーーーー!』

 あ、ぽんこつとナビの間に、お猿も追加で。

『貴方様、それは失礼と言う物です。サラの評価は間違ってませんが、私は普段から礼儀正しいのです』

『なっ!?』

 普段か…ら?

『何か?』

 イエ、ソウデスネ。レイギ…トテモタダシイデス。

『大河さん! リリアに言ってやってください! 私は出来る女なんです! あと、今気が付きましたが、お猿ついかしたら、ぽんこつお猿ナビじゃないですか!』

『何故か思考がカタカナで流れ込んできましたが、どういう意図があるのでしょう? 是非とも説明をお願いします』

『大河さん!』『貴方様?』

 ああ、もう煩い煩い!

 ナディア、アーデ、アーム、アーフェン! つでに妖精さん達に、蜂達よ! 今から会議を行うので、会議室に集合!

 ついでに煩いサラとリリアさんは、お茶とお茶菓子、あとは大量の紙と筆記具の用意だ!

 急げ! 戦までもうあまり時間が無いぞ!

『了解しました、マスター!』

『はぁ…では、私はお茶の用意を。サラは紙と筆記具をお願いしますね』『へいへい…』

 よし、夕食までに、大まかにでも打ち合わせをすますぞ!

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