第513話  地図作製

 小会議室に、ナディア、アーデ、アーム、アーフェンの4人と、妖精さん達、そして実働部隊でもある蜂達、おまけとしてサラとリリアさんが勢揃いした。

 まだダンジョン大陸から戻って来たばかりで、最新の情報を手にしていないナディア達には、この王国が宣戦布告を受けている事や、暗黒教ダークランド皇国の現状と進軍状況に関して説明をした。

 その上で俺は、皆を見回したあと、

「では、まずナディア達の得たこの大陸の地理情報を描き出してくれ」


 そう、俺が欲しかったのは情報。それもこの大陸の詳細な情報だ。

 その為にナディア達をこの大陸…実際は暴走してこの星全土を調べて来たようだが、要は正確な地図を作りたかったのだ。

 まあ、出来る事なら前世でも見た様な、緯度経度や等高線がきっちりと退かれた物がベスト何だろうが、少なくとも周辺の国家や大体の地形が分かれば問題ない。

 俺の号令に従い、ナディア達が神を広げ、天鬼族3人娘は幾つものインク壺を蜂達の前に並べる。

 妖精さん達は、幾枚も並べられた紙を綺麗に並べて、描きだすための起点を決めると、それを見た蜂達は、一斉に前足をインクに浸して、器用に地図を描き始めた。

 見る間に白い紙に濃紺のインクで線が引かれていく。

 線は曲がりくねったり、時には真っすぐに、またある時は他のせんとくっ付いたり交差したりと、白紙を賑わせていく。

 そしてその線の出来を確認しながら、ナディア達はペンを手にして捕捉として文字を書き足してゆく。

 サラとリリアさんは、真剣なその作業を邪魔せぬ様、インクの残量を確認しては継ぎ足したり、新たな紙を準備したりと、意外にも有能な仕事ぶりを見せた。

 誰も一言もしゃべらない

 ひたすらペンや蜂達の前足が紙を引掻く音と、紙を入れ替える時の少々耳障りな音、そして全員の呼吸の音だけが、静かな会議室という空間を支配していた。


 ちなみに一心不乱に皆が地図を描いているこの紙なのだが、我が王国では普通に植物紙が広まっている。

 もちろん皮紙も公文書などでは一部使われているのだが、どっかの誰かが一枚の皮紙のために、家畜を潰すのは無駄であり、高価になってしまうため、研究して植物誌が出来たとか何とか。

 前世の地球の歴史の様なパピルスは存在せず、この世界でも普通に服に使われている木綿などと麦藁などを原料としている。中高年の方には薄い茶色のザラ紙やわら半紙と言って、小学校などで馴染のある紙であろう。

 このわら半紙のサイズは、地球で言う所の半紙サイズとほぼ同じである。

 豆知識として付け加えるのであれば、習字でお馴染の半紙とは、書道で使われる全紙…約136cm × 70cmを半分にした大きさだから半紙なのである。

 お正月に書き初めに使う縦長の物は半切と言い、呼び方が違うので注意して欲しい。

 これを知っていれるだけでも、周囲からはちょっと物知りな人に見えるだろう。

 いや、これはもう完全に余談なんだけど…

  

 などと、いらん事を考えている間に、この星の全世界地図が完成した。

 繋げて並べれば、縦横約9mにもなるであろう巨大な地図である。

 しかも、無駄にメルカトル図法でこの紙に投射している。

 どこでこんな知識を身に付けたんだろう、蜂達は…。

 何でこんなサイズになったかというと、4方向を担当した妖精達のせい…では無く、蜂達が細かい計算が出来なかったから。

 縮尺というものを正確に理解できない蜂達に、とにかく縮尺を合わせて線をひく様に、ナディア達が急遽教えたのだが、何とか正確に縮小出来たのが、このサイズなのだ。

 まあ、出来上がった物を縮小していくのも、紙のサイズが決まっているので、そんなに難しい事では無い。

 だって、この大陸と俺が創ったダンジョン大陸以外は海ばっかりだもん…全星地図なんていらんのじゃない?

 この地図のほとんどが空白なんですけど…。

 膨大な数の紙を手作業で確認して縮小していくのは大変だけど…嫁達にでもやらせるかな…

 

 それはそれとして、とにかく正確な地図が出来上がった。 

 では、今度はこの地図を見ながら、周辺諸国や暗黒教ダークランド皇国の侵攻ルート上の地理などの本格的な打ち合わせをしようか。

 ここでは狭いんで、あのだだっ広い地下室を使おう。

 あ、サラはこの紙をくっ付ける事が出来る糊っぽいのを用意してくれるかな? 

 リリアさんは、嫁達と父さん達…とにかくドワーフメイド衆を除く、全員を地下室に集合させてね。

 ドワーフメイド衆には、お茶とお茶菓子の準備を頼んで置いて。

 ナディア達は、手分けしてこの地図を地下室へ運んで。

 よっし、そんじゃ作戦開始だ!

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