第505話  格好いいな、それ

「これは…ユリアーネなのか…?」

 遥か遠くで訓練していた、父さんと騎士さん達が砂浜を駆けて来て、父さんがユリアちゃんを見た時の第一声がこれだ。

 種人格でり、隊長格でもある父さんの娘に対して、騎士さん達が何かを言えるわけも無いのだが、全員の目が語っていた。

『マジで隊長の娘ってヤベエ!』


 母さんやドワーフメイド娘達もやって来て、ユリアちゃんを中心に取り囲んだ。

「す、すっごーい! 凄い凄い! ユリアちゃんすっごーーい!」

 コルネちゃんは、驚きすぎてしたが回らないのか頭が回らないのか、凄いを繰り返していた。

 嫁達は、お口をあんぐりと開けて、ユリアちゃんをただただ見つめるだけ。

 ユズカは、大興奮で、

「ユニ〇ーン…じゃないね、これはフェ〇クス? いや~神様も趣味に走ったねえ~!」

 ユズキは冷静に、

「これはデス〇ロイモードですね?」

 などと分析していた様だが、サラやリリアさんも言っていたが、俺には良くわからん。

 俺の中は、あくまでもモデルは天空〇記シ◇ラトなのだ。

 しかし、デスト〇イモードか…格好いいな、それ。


 しばらく光の粒子の中で浮かんでいたユリアちゃんであったが、段々と落ち着いてきたのか粒子の輝きも薄れて行き、やがて抉れた砂浜の真ん中に静かに降り立った。

 見た目…蟻地獄に捕まった蟻みたいだな…

 俺は迷わずその蟻地獄の中に滑り込み、ユリアちゃんへと駆け寄った。

「ユリアちゃん、何処か怪我してない? 痛い所無い? 気分は悪くない? ええ…っと、とにかく大丈夫?」

 俺自身も焦ってたのか、ただただ心配だったのか、言葉がおかしい気もする。

「ん? どこもいたくないよ、おにいちゃん。なんか、このへんからこえがきこえたんだけど、それをきいたら…んっと、からだのなかからなにかが、ぱーーん! ってはじけたみたい! すっごくきもちいい!」

 うん、抑圧されてたエネルギーが解放されたのかな? でも最後の一言は、お兄ちゃん以外の人の前で言わない様に。

「そっか。それで、ユリアちゃん…ちょっとここから出たいんだけど…あそこまで出れる?」

 俺が指さしたのは、3m以上の高さがある、皆のいる砂浜の一角で、コルネちゃんのすぐ傍。

 この穴の中から見上げると、皆で穴の中を覗き込んでて、ちょっと面白い。 

「ん~? できそう…」

 ちょっと自信なさげだが、そう言ったユリアちゃんに、俺からアドバイス。

「良し、それじゃ~力をいっぱい溜めて、あそこに向かって、ジャンプだ!」

 俺のアドバイス(になってるのかな?)に従い、両手を握りしめてちょっと中腰で力をグググッと溜めた後、ユリアちゃんは、

「むむむむむむ………じゃ~んぷ!」

 俺の目の前から、小さな砂煙だけを残して消えた。

 比喩では無い、本当に一瞬で消えた…どこいった?


『ひゃあぁぁぁあああぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁ!!!』

 微かに耳に届いた可愛いユリアちゃん声を辿り、俺は…いや、全員が空を見た。

 そして、バタバタしながら落ちて来るユリアちゃんを目にした。

 呆気に取られている皆をよそに、俺は…いや、我が家で装備を持つ全員が、瞬時に変身していた。

「変身!」

 俺が、

「メタモルフォーゼ!」

 コルネちゃんが、

『ジェムファイター・ゴー!』

 嫁達が、

「いっくよー!」「いざ、参る!」

 ユズカとユズキが、それぞれ変身して、ユリアちゃんを受け止めるべく空へと…ちょっと待て待て待て!

 おいおい、そんなにいっぺんにユリアちゃんに向かったら、事故起きる事故が!

 俺の心配をよそに、ユリアちゃんはまたもや光の粒子に包まれて、落下が急激に緩やかになった。

 俺達が何とか上手くぶつからない様、それぞれが当たる寸前に互いを躱して着地して、未だ落ちて来ているはずのユリアちゃんを見上げた。

 そのユリアちゃんは、ゆっくりゆっくりと輝く球状の粒子に囲まれたまま降りて来た…また穴の中に…。

 周囲の皆も、そのゆっくりと降りてゆくユリアちゃんを目で追う。

 そしてユリアちゃんは、何事もなく無事に着地を果たした…元の穴の中だけど。

「びっくりした~」

 着地したユリアちゃんの言葉に苦笑いする俺達だったが…みんなの表情は仮面で見えるはずも無かった。

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