システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

第503話 この世界の子供は…

　翌日の朝早く、サラとリリアさんは少しだけ大型の蒸気式自動車でダンジョンへと向かってもらった。

　もちろん、ナディア達を迎えにダンジョン大陸へと行くためだ。

　まあ、ついでにある秘策を実行可能かどうかを例のあの人に確認してもらい、可能であれば一緒に連れ帰ってもらおうと思っての事なのだが。

　あと、問題ある転移者を一掃してもらうのも今回の2人のミッションでもある。

　何で自分でやらないのか、という疑問を持たれるかもしれないが、やっぱり俺は命を断つという行為に多少なりとも忌避感を持っているという事なのだろう。

　現に大量の転移者達を何とか生かせないかと、あの大陸を創ったんだから。

　まあ、元より一生をあの大陸に縛り付けるつもりだったのだから、総合的に考えれば俺だって十分に酷い奴だし、たとえ直接手を下さなかったからと言っても俺がやろうとしてた事は決して許される物でも無いし、その覚悟も当然ある。

　実際には、既にモフリーナ達がダンジョンに多くの転移者達の命を取り込んでいるとは思うが、2人にはその確認と更なる加速が目的だ。何の加速かは言わずとも分るだろうが、要は転移者達の命の刈り取りという事だ。

　ってな分けで、俺が目が覚めると同時に、2人はダンジョンでモフリーナと落ち合うために、家人に知られる事なく、そっと出て行った。

　もうモロバレだが、例のあの人ってのはモフリーナの事でした。

　さてさて、昨夜のユリアちゃんはコルネちゃんと一緒に寝たらしい。

　というのは、2人が一緒に寝室に向かったと後で母さんに聞いたからなのだが、少しの間に随分と仲良くなったものである。

　妹が欲しかったコルネちゃんと、記憶や知識ではコルネちゃんの存在を知っていて姉としての情愛を記憶の中に刻まれていたユリアちゃん。

　妹を可愛がりたい姉と、姉に甘えたい妹。

　小さくとも女は女と言う事なのだろうか？　同性で仲良くお喋りしながら夜更かしした様だ。

　男である俺では駄目らしく、ちょっと寂しい。

　お兄ちゃんなのに…お兄ちゃんなのに…がっくしである。

　母さんはそんな姉妹を微笑ましく見守っている様だが、きっと両親とコルネちゃんと暮らす様になれば、厳しい躾けが待っているのは、まず間違いない。

　この世界…というか、俺が知っている国では学校という制度は無い。

　ほとんどの場合は、親や近所の世話好きな方が、読み書き計算を教えている。

　貴族などは、しっかりとした家庭教師を付けて勉強をさせるが、結構な費用が発生するためごく少数だ。

　専門の職を手に付けたい者だけが、学校の様な場所で知識を身に付けるのだが、教師役は現役の職人。

　なので将来はその教師の元で見習いになったり、職場を紹介されたりするので、本来の学校とは少し違う。

　職人組合での専門的な研修の様な感じかな？　

　この世界では、10歳から見習い職人として働き始めるのが一般的であるという事から分かる様に、勉強などに時間を取られている暇はないのである。

　見習いも多種多様で、それこそ農林畜産や商業・漁業に始まり、お針子さんや料理人の様な各種職人や、冒険者や兵士・騎士といった戦闘特化型の職などがある。

　自分の希望や能力と照らし合わせ、将来就きたい仕事の見習いになるのが、一般的な子供の進路なのだ。

　日本で言えばまだ小学生の内から、将来の事を考えなければならないなんて、世知辛い世の中である。

　まあ、10歳からミルシェも我が家で使用人見習いを始めていたぐらいだから、誰も辛いとは思わないのかもしれないが、前世の日本を知っていると、少なからず考えさせられる物もあるのだが…それを言い出したらキリがない。

　なので、心苦しくはあるが、こればっかりは見て見ぬ振りを貫いている。

　出来ればその辺も変えていければいいのだが、慣習と言う物はすぐに変えるのは難しいのもまた真理。

　なので、じっくりと数十年単位で変えていければ良いなと考えている。

　ちなみに我が家では、母さんが読み書きも計算も歴史までも教えてくれた…かなり厳しかったけど。

　話が逸れたが、きっとユリアちゃんも近いうちに母さんの勉強地獄の洗礼を受ける事だろう。

　父さん？　ああ、あんな脳筋が人に物を教える事なんて無理無理。

　あの人は大人しく剣でも振ってればいい。

　たまに訓練を付けてくれるけど、自分を基準として教える様な人の訓練について行ける人がいるんだろうか？

　きっと王都の騎士さん達も苦労している事だろう。

　一流の選手が、必ずしも一流の指導者では無いという、良い見本だ。

　っという訳（どういう訳？）で、家族団らんの朝食の後は、以前BBQした砂浜までホワイト・オルター号で行きます。

　これはユリアちゃんの装備の能力と、秘めたる力の開放と確認の為。

　ついでに最近運動不足である、装備を所有する者達のストレス発散を兼ねた、ちょっとしたお出かけだ。

　さて、能力を全開放したユリアちゃんを見た、皆の反応はどうかな？