第489話  ご乱心!

 このだだっ広い空間で、とりあえずユリアちゃんの身体能力をチェックしてみた。

 7歳児とは思えない程、高スペックで有る事だけは判明した。

 ユリアちゃんの身体能力のチェックの為に、俺も変身して相手をしたのだが…どっこいどっこいだった。

 変身しても7歳児と同等の、16歳複数の嫁持ち男子って…しかもまだユリアちゃん、能力封印状態だし…

 これは本格的に俺の装備も考えた方がいいかなぁ。


『大河さん、装備の充実は構いませんけど…何と戦うつもりですか?』

 いきなりサラがそんな事を言ってきたけど、そりゃ~強い敵とかじゃないかなあ?

『ユリアちゃんの封印解除したら、全解決な気がしますけど』

 いや、ほら…何だ、そのぉ…そう! 子供にばかり負担をかける訳にはいかないだろ?

 しかも女の子だしな! もしもお顔にキズでも付いたら、お嫁さんの貰い手が無くなる!

『あんたがあの子のボディーを超高スペックにしたからでは? そもそもあの装備の防御を抜ける攻撃が想像できないんですけど?』

 え? 戦車砲の直撃とか受けたら怪我しちゃうんじゃない? 

『どこのバトル小説ですか! この世界に戦車なんて有りませんし、持ち込めません!』

 でも、魔法で再現とか…

『あんた、もう忘れたんですか? この世界で魔法使える人族は、超希少なんですよ? 装備を身に着けてホイホイ魔法使ってるあんたら一家がおかしいだけですからね?』

 魔族さんは治療魔法とか得意じゃん。あと、火種作ったり飲み水確保したり、涼をとったり、牧草地を耕したり…

『ラノベでおなじみの生活魔法とか言うやつですよね? それであんたが創った装備の防御力を抜けるとでも思ってんですか? 頭の中身はスッカラカンなんですか?』

 酷い言われようだが…確かに言ってる意味は理解できる。

 しかしだな、今回の様に大量に転移してきた場合、特殊能力を持ってるやつが来るかもしれないじゃないか。恐怖の大王だって、かなり危険だった気がするぞ?

『転移者に関しては、言っている様な危険性は確かに有ります。しかしですね、恐怖の大王戦でだれか怪我したり危険な目に有ったりしましたか?』

 おお? んんん…? そういや、見た記憶がないな…

『あれだけこの宇宙で危険視されてたカズムでさえ、あんたらの敵じゃ無かったってのに、これ以上危険な奴が本当に来るとでも?』

 もしかして…無い?

『ここまで言っておいてなんですが、確かに絶対では有りませんけど…私やリリアレベルがやってくればあの装備ぐらいでしたら充分に対処できるし、まず間違いなく一人になら勝てますけどね』

 そうか、って事は次の敵は、サラ…お前か!

『何でですか! 誰があんたら化け物一家と事を構えるか! サラちゃんの清い体を穢していいのは、野獣の様にこの体を求めるショタだけです!』

 そうか。残念ながらそんなショタは現れないぞ。この先、一生お前は清いままなんだな。

『うっきーーー!』

 ふっ…勝った!

『あ、そういえばサラっと流してましたが、ユリアちゃんのお嫁さんの貰い手が無くなるとか何とか…嫁ぎ先を考えてたんですか?』

 馬鹿なことを言うな! コルネちゃんもユリアちゃんも、嫁になんぞやらん!

『はぁ…またそれですか…』

 あったり前だ! 嫁に欲しければ俺を倒して行け!

『いやいやいや、あんたに勝てる相手って一体どこに嫁にやる気なんだよ!』

 最近、コルネちゃんも12歳になって色々と成長してはいる。それはもう色々と。

 だが、それを愛でていいのは俺だけだ!

『真正の変態や…。まあ、大河さんでも権力には勝てないだろうから、王族から嫁にと請われたり…』

 何だと!? おいサラ、どこのクソ王家だ! 今すぐに殲滅してやる! 

『もちつけ、このシスコン野郎! 仮の話に決まってるでしょう!』

 仮の話でも許さん! そうだ、今すぐ帰ろう! ホワイト・オルター号で王城に乗り込むぞ!

 妄想で俺の可愛い可愛いコルネちゃんを穢すとは許すまじ! ホワイト・オルター号の秘密兵器を全弾撃ち込んでくれるわ!

『アホか! 太陽神のサンライト・ハンマーと、月神のミーティア・キャノンを至近距離で撃ち込んだら、王都なんざ跡形も残らんわ!』

 ふっふっふ…構うものか!

 コルんちゃんを穢そうとする王都のゴミ虫なぞ、残らず殲滅してくれるわー!


「シスコン兄貴が乱心でござる! 乱心でござる! 誰かーーー! 至急、応援を頼むでござる!」

 ユリアちゃんが、嬉しそうに装備を身に着け走り回るこの広い空間に、サラの絶叫が虚しく響いた。

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