第468話 重大発表
聞かない。絶対に俺が寝ている間に何があったのか聞かない。
聞くと取り返しがつかない事になりそうだから、絶対に聞いたりしない。
きっと、俺の尊厳とか威厳とか…元から無い気もするけど、とにかく聞かない!
俺は軽く身だしなみを整えた後、着替えてそっと扉を開けた。
着替えた時、下着が何故か新品に代わってたりもしたが、聞いたりするもんか!
廊下を歩き食堂へと向かうと、何やら楽し気な嫁達の声が食堂から聞こえてきた。
「…リラックスしたら…」「…言った通りでしょう?」「あ、あんな大胆な事…」「じっくりと見れば、なかなか良い身体つきに…」「本当に何しても起きないな…」
…俺、今入っても大丈夫だろうか?
「おお! ギャップ萌え作戦成功ですね!」「やはり殿方は、異性の意外な一面でコロリと逝くのですね…勉強になります」
…こいつらの仕業では無かったのか…
「にんぎょさん、すげえなや!」「だてに男をたぶらかしてねえずら!」「んだんだ!」「あやかりてぇあやかりてぇ!」
人魚さん達の仕業かーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
うちの女性陣に何て事を教えたんだ! 個人的には嬉しいけど、意識のある時にして欲しかった…じゃなくて、
「こらーーー! 俺が寝てる時にナニしてんだーーー!」
ドワーフ娘衆の言葉を(最後までしっかり)聞いた俺はドアを蹴破り、怒鳴りながら食堂へと跳び込んだ。
全員が呆気に取られてはいたが、声を揃えて俺に返して来た言葉は、
『ナニですが、何か?』
「うぎゃーーー! 全員サラ色に染まっちまったーーーー!」
「失礼な!」
サラの口癖が、嫁達の言葉となってしまった…サラが何か言ってた気もするが、
「そう言う事は、本人の意思を確認してからするものだろーが!」
言ってやったぞ!
『ナニをされたと思ってるんですか?』
「あれ?」
そう言えば、俺って寝てる間に何されたんだろう?
『意識が無かったんですよね?』
「あ、うん…そうだね」
『それでナニをされたと?』
鋭いツッコミが炸裂するが、俺は返す言葉を捻りだせなかった。
「あ、えっと…そうだ、ミルシェのパンツが落ちてたんだよ! 部屋の隅っこに!」
俺はずっとポケットに入れていた布地の小さな物体を突きつけた。ミルシェに。
「それは、この間のですね…もう、トール様ったら…えっち♡」
あれ? 俺が悪いの? 俺が悪者になってる気がするけど…気のせい?
「それでトール様は、ミルシェのショーツを大事にポケットに入れていたと…何故仰って下さらないのですか? 私ので宜しければ、幾らでも差し上げましたのに♡」
あの、メリルさん?
「わ、私のでよければ…ここで脱ぎます…きゃ♡」
えっと、ミレーラさん?
「トール様は奥ゆかしいのですよ…後で執務室で…うふっ♡」
マチルダさんや~い!
「何だ、それならちょうど脱いだばかりのがあるから、洗濯場から持ってこよう!」
いや、イネスよ。それは違うぞ。
「貴方様がそういうご趣味であったとは…ここにちょうどサラのパンツがありますから、どうぞ」
「ちょ、リリア! 何でお前が持ってんだよーー! 返せーーー!」
リリアさんとサラは通常営業っと。
もしかして、俺は踏み込んではいけない女性陣の闇を覗いてしまったのだろうか?
あざとくもあり、絡め手の様でもあり、あからさまな話題転換だった様でもあり、俺の自滅であった様な気がしなくもないが、もしかして聞いてはいけない事だったのかもしれない。
もうこの話題には触れない様にしよう…あと、部屋のカギはもっと増やそう…絶対に嫁の中に鍵開け名人が居るに違いない。
取りあえず、食事するために来たんだから、席に着いてご飯でも食べようかな。
軽く食事をした俺は、女性陣がきゃいきゃい姦しいのをあえて無視する。
「え~ごほん! あんな事やこんな事やそんな事は横に置いて於いて。まずは実務に関して話したいと思う。ユズユズも呼んできてくれ…って、居たのね。え、廊下で聞いていた? 何でユズカ爆笑してんだ? 抱腹絶倒? いい加減にしろ!」
どうやら廊下で俺達のやり取りを聞いていたユズユズ・コンビも食堂に入って来た。どうやらこれで全員集合したってわけだな。
では、改めてダンジョン大陸に関して報告しようかな。ついでに火御華に関しての報告もしておこう…いや、先の方がいいかな?
「え~…ってもういいや。皆さんご存知のダンジョン大陸での出来事に関して、重大発表がありますので、心して聞くように」
こういう時のお約束。静まり返った食堂に、誰かが唾を飲み込む、ゴクリという音が。
「俺に新しい妹が出来ました~!」
『はぁ~~~~~~~~~~~!?』
サラとリリアさんを除く、全員の声が食堂に響いた。
こだまでしょうか、いいえ、だれでも…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます