第461話 起動します!
見た目は銅鐸そのもなのだが、とても可愛らしくデフォルメされた絵の描かれたカードがそこにはあった。
「こ…これで満足ですか、大河さん?」
尊いサラの犠牲の上に、だが。
何があったのかは、あえてここでは口にしないでおこう。
ただ一言だけ。
いきなり管理局への許認可申請を強制しただけでなく、ガチャ玉の開封まで無理やりやらせた結果、ボロボロになったとだけ。
「あんた、全部言ってんじゃねーか!」
そうだっけ? まあ、それはそれとして。
「んじゃ、モフリーナに呼び戻してもらおうかな」
俺は懐から通信の呪法具を取り出して、モフリーナを呼び出した。
「んじゃ、もう早速始めちゃおう。恐怖の大王をささっと始末したいからな」
ダンジョン管理室に戻った俺は、モフリーナに指示をして火御華を例の隔離室から連れ出す事にした。
もちろん、最初に無味無臭の睡眠薬をお世話スライムがスッと近づき首元に注射したので、無意識状態でだ。
モフリーナがお姫様抱っこで抱えてやって来た火御華であったが、モニター越しに見ていたのとは違い、想像以上にデカかった。
身長は、2m近いんじゃないか? 俺や父さんよりも明らかにデカい!
「では、リリア様。こちらのベッドに寝かせればよろしいですか?」
驚く俺をよそに、モフリーナとリリアさんによって、着々と精神体の移植準備が進んで行く。
「ええ、そちらで結構ですわ。では、着ている物を剥ぎ取ってください」
な!? それは近くで凝視していいのか? 当然、良いんだよな?
「あ、大河さんはこっちに来てくださいね」
「あっちいけ! でしゅ」
サラともふりんに、部屋の隅っこに連れて行かれた…俺が指示したのに、見れないとは…いや、女性の裸体を見たいとかじゃないからね! 本当だからね! って、何で女言葉になってんだろ、俺…
その後、部屋の隅っこで膝を抱えてモニターをぼう~っと眺めていたのだが、リリアさん達の居る場所では、ゴニョゴニョと何やら話している事が聞こえた…見えないけど。
俺の創った火御華の新ボディーと、現火御華ボディーが並べられて、何やら機械類が接続されてる様だ。
どっからあんな機会を取り出したんだろうか、リリアさんは。
例の四次元ガマグチからなのか? まさか、サラの素体交換キットを全部持ち歩いてんだろうか?
どんだけサラの素体は壊れやすいんだよ。でも10年はもったんだよな…って事は、あのキットは自分自身のための物かな?
え、自分で自分の身体って交換出来る物なの? いやいや、あのリリアさんだからなあ…何でもアリかもしれん。
などとツラツラと考えていると、
「こら、そこ! 変な事を考えない様に。私のボディーの寿命は10年ですが、ここに来る前に交換してきてます!」
きっちりと俺の思考を読んで、怒鳴っておられた。
ヒステリックなのは、欲求不満だからかな? あ、女性ホルモンのバランスが崩れても怒りっぽくなるとか聞いた事あるなあ。
「欲求不満でも無いし、ホルモンバランスも崩れてません! 崩れているのはサラの体形と性格だけです!」
「あんたも何言ってくれてんの! 体型も性格もバリバリのJKです!」
リリアさんの反論を軽く聞き流し、サラの怒鳴り声にはこっそりJCだろう? と、ツッコミを入れるのも忘れない。
「大河さん、聞こえてますからね!」
いや、口に出してないし…もう、並列思考を使ってリアルタイムで読まれない様にすべか?
どうせあとで管理局からダウンロードされたらバレるけど。
「む? 急に思考が読めなくなりましたよ、サラ」
「ああ、それは読めなくする裏技があるらしいです。管理局からログを取り寄せれば、おーるおっけーです」
「そ。なら構いません」
あいつらの俺の扱いって、本当に雑だなあ…んで、もうそろそろ出来たんだろうか?
時差もあって、めっちゃ眠くなってきたんだけど。こっちに来て、そろそろ5時間かな? あっちでは夜の8時過ぎぐらい?
「では最終試験を開始します。サラ、接続を確認してください」
「あいあいさー!」
あ、そろそろ終わりに近づいてんだ。
何だか、ガッチャンガッチャン音がしてるけど、接続の確認ってそんな音がするんだ。
そう言えば…リリアさんってば、サラの素体交換の時は、サラの全てを見ても何にも言わなかったのに、火御華の時は拒絶したよなあ? 別に女性の全裸を見たからって、今更どうという事も無いんだけど?
何となくだけどリリアさんのサラに対する扱いが、かなり低いって事だけは理解出来た気がするなあ。
「…! ……?」「………」「…!?」
ん? 何かトラブル? 慌ててる様だけど? よく声が聞き取れないなあ…そっち行こうか?
「では、起動シークェンス確認完了! 起動します!」
お、ちゃんと起動出来たのか!
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