第455話  大事な銅鐸

 よし、今までの事は忘れて、作業に専念しよう!

 まずは火御華の新ボディーだな。

 これは先に述べた通り、サラの呼びボディーをベースに幼児化して、成長できる余地を残すように…

 あれ? でも普通の人の姿でいいのかな?

 あ、今の火御華の姿を参考にしたらいいのか…えっと、確かお人形さん遊びをしてたんだっけ…どれどれ?

 確認ためにモニターを覗き込むと、すやすやと火御華はおねんねの最中だった。

 ……まあ、いい。

 青白い肌を持ってて、「メキメキニ~、ヌダラダラ~」が口癖で、額から鼻筋に掛けて仮面風の模様? があってっと。あの模様みたいなのは、ポイッだな。

 青白い肌も、この世界で今後も生活するなら止めた方が無難か…だが、そうするとこの世界の人々と同じになってしまうなあ…これは後で考えるとして。

 注目すべきは、もの凄く大切そうに握りしめてる、あの銅鐸か…これもレプリカでも創るか? いや、せっかくだから何か能力を付与するべきか。

 って事は、別にガチャ玉を使わなきゃダメか。

 ふむ、ってことはガチャ玉が2個必要と…でも創ってるところをモフリーナ達に見られるわけにはいかないから、

「モフリーナ、俺とサラとリリアさんを、どっか隔離された部屋に移してくれ」

 前にガチャ玉を大量に使った部屋は、すでに魔物部屋になってるみたいだから、モフリーナに造ってもらわなきゃな。

「はい、お任せください。それですぐに移動されますか?」

 ん~?

「サラ~! リリアさ~ん! 手が空いたら、ちょっとこっち来て~!」

 何やらゴソゴソゴロゴロと、管理室内で日曜のお父さんよろしくトドになってる2人に声を掛けると、すぐにやってきた。

「いや~暇してました~! ささ、始めましょう!」

「調子いいな、サラ…何するか分かってんのか?」

 俺、お前に何も言ってないはずなんだが。

「ええ、しっかりと考えは読んでました!」

 そうだ、こういう奴だったなサラは。

「私は必要無いのでは?」

 一緒に付いて来た不服そうなリリアさんは、ものすごく面倒くさそうだが。

「一応、サラの暴走防止のための監視役って事で。んじゃモフリーナ、3人を転移してくれ。あとでナディアに念話するから」

「了解しました!」

 俺達3人は、あの微妙な浮遊感と共に、モフリーナによってどことも知れぬ部屋へと転送された。


 天井の放つ仄かな明かりだけが頼りの、何も無いだだっ広い空間。

 俺達が転送されたのは、そんな部屋だった。

「ここは、どこだ?」

 俺の疑問は、至極当然の事だと思うのだが、

「いや、あんたが望んだ部屋でしょうに…」

 サラに飽きられてしまった。まあ、そりゃそうなんだが…

「まあ、いいや。早速始めるぞ! ガチャ玉は補充したから、十分に数はあるはずだから…っと、これこれ」

 俺の上着のポッケには、常に数個のガチャ玉が忍ばせてあるのだ。

「誰も触れないし、私達以外では見る事も出来ないからと言って、ポケットに普通入れときますか?」

 今度は、リリアさんがジト目で俺を見る…何故だ! ごく普通の事をしてるだけなのに!

「いや、大河さん。普通は金庫にしまったりしとく物ですからね? かなりの貴重品ですから! もっと丁寧に扱ってください!」

 サラにまで怒られた…解せん…

「それで、火御華のボディーを創るのですね? 私の方で保存カプセルを用意しておきましょう」

 保存カプセル? サラのボディーの時は、水槽みたいな入れ物だった気が。

「ああ、サラの大量生産品は、水槽にまとめて沈めて置けばいいですが、今回は一品ものですからね」

「ちょ、リリア! 私のボディーの扱いって、そんなぞんざいな扱いなんですか!?」

 俺も、ちょっと可哀そうになって来た。

「当たり前です。消費期限付きのサラのボディーと違って、今回は成長させなければなりません。あなたの安い大量生産品と同じ扱いな訳が無いでしょうに。これだからツルペタ貧乳スカスカ脳の馬鹿は…」

「ひどっ!」

 うん、俺も酷いと思う…でも、

「まあ、リリアさんの言いたい事も分かるよ。確かに特別製である事は間違いないからね」

「大河さんまで!?」

 うるさいサラは無視してっと。

「んじゃま、早速創りますか。今回はガチャ玉2個使うど! 1個はボディーに、もう1個は銅鐸だ」

「「銅鐸?」」

「そ、銅鐸。大事そうに持ってるからね。だから銅鐸のレプリカを創る」

 これには訳があるのだよ。

「いや、あの火御華が持ってる銅鐸を持たせればいいのでは?」

「サラが言いたい事はわかるよ。でも、恐怖の大王の所在がはっきりしないじゃん。睡眠時にも火御華があそこまで銅鐸を大事にしてるって事は、もしかしたら…」

「銅鐸に恐怖の大王の欠片が宿っているかもという事ですね。一理あります」

「さすがリリアさん、その通り。もしかしたら単に大事な物ってだけかもしれないけど、それならボディーを変えた時に手元になかったら悲しむだろう? だから、レプリカを創ってあげるんだよ」

 これが俺の思いやりだ。どうだ、他人を思いやる気持ちを忘れない男って、魅力的だろう?

「なるほど! でも大河さんの事ですから、今度創る銅鐸も、ただの銅鐸じゃないんですよね?」

「ふっふっふ…良くぞ聞いてくれた! サラの考えた通り、ただの銅鐸では無い! その能力とは…」

「「ごくりっ…その能力とは?」」 

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