第402話  やめなさいって!

 非常に残念だが、もふりんには逃げられてしまった。

 ああ見えて、ダンジョンマスターであるモフリーナの色々なスキルを引き継いでいるもふりん。

 成長したら、あの超ナイスバディーになるんだろうか? 今のままでもいいけどなあ。

 それはさておき、そろそろ俺達も夕食の時間なので、キャビンに戻ります。

「それじゃ、何かあったら、ユズカかユズキに言うように」

 遠くの魔物の陰から俺を見ていたもふりんが、シュピッ! と手を挙げた。

 そんな遠くまで離れんでも…ちょっと耳とか尻尾をもふりたいだけなのに…愛でたいだけなのになぁ…。


「おーい、皆もそろそろ降りるぞ~! 今夜の食事当番は誰だ~?」

「は~い! 私で~す!」

 そうか、今夜の晩飯はイネスか…ただいま絶賛お料理の勉強中のイネスか。

 あ、決して飯が不味いという訳ではないよ? ただワイルドなだけで…うん、不味くは無い。

 毎回、肉の塊を塩と胡椒で味付けして、豪快に焼く。そして、食卓に、焼けた肉をドーーーンと乗せて、その場で切る。

 1人分が、1Kg近い肉の塊は、もはや拷問だと思うけどな…味は悪くないんだよ。

 小食のミレーラなんて、目の前の皿に乗った肉の塊を見ただけで、ゲップしてたけど。

 まあ、イネスの番は5日に1回なんで、諦めるしかないか。


 支柱内にある梯子を嫁~ずに先に降りてもらい、最後に俺が下ります。

 はい、絶対に覗きませんよ? 大多数の男性が待ち望むようなハプニングは起こしません。

 世のラノベや漫画に出てくるような、ラッキースケベ的展開って、あり得ないから。

 こちとら、色々なハラスメントが問題になる世界からやって来た、真面目なおじさんですからね。

『おじさんが15歳の少女と結婚して…ベッドイン…青少年保護育成条例違反では?』

『サラ、落ち着きなさい。これは法的に婚姻を結んでいるのでギリギリセーフな案件です』

『ギリギリ?』

『ええ、この星ならOKですが、近代日本では婚姻関係を結べる年齢ではありませんから』

『なるほど! では、もしもこの星で罪に問うとしたら?』

『…詐欺罪ではないでしょうか?』

『女神という存在をでっち上げて信者から金を巻き上げる。国王や首長までが騙されてますもんね』

『世界を股に掛けた詐欺師ですね』

 黙って聞いてりゃ、お前ら何の話してんだよ! 俺は金を巻き上げた事なんぞ無いぞ!

『寄付金などは受け取ってませんが、女神グッズでボロ儲けしてるじゃないですか』

 あれは観光地の土産物みたいな物だろ?

『でもネスの名が無ければ売れませんよね?』

 あ、え、う…うん、ソウダネ…。

『『立派な詐欺師です』』

 …………。

 梯子を降りてる途中に変な話をするもんだから、危うく手を滑らせて落ちるところだった…。

『動揺してます』『手のひらに汗…嘘をついたり身に覚えのある時の特有の反応です』

 まだ続けるの…俺が悪かったから…。

『『反応が面白いので、もうちょっと続けたいかな』』

 俺の精神が持たないから、もう勘弁してくれ!

『『それじゃ、また明日』』

 明日もあるのか……


 晩飯は、予想通りというかやっぱりというか、鶏の丸焼きでした。

 焼けた目ん玉と目が合ってしまったミレーラは、真っ青な顔をしていた。

 スパイシーな香りで美味しそうではあるのだが、見た目がなあ…せめて首は落として欲しかった。

 鶏の丸焼きは珍しくも無いが、何かが違う気がするのは気のせいなんだろうか?

 デザートも豪快に果物丸ままって、丸齧りしろって事なのかなあ。

 色々と言いたい事はあるのだが、食べ物を粗末にしちゃだめだ。


 全部残さず美味しく(?)頂きました。

 ちなみに鶏の首は、イネスが丸かじりしてました。

 ええ、頭から豪快に。

 あれ? 今夜ってイネスの順番じゃ無かったっけ? 

 俺、あの丸齧りした口に、キスすんの?

 イネスの唇、鶏の脂でグロス塗ったみたいにめっちゃテカテカしてる。

 すっごく艶めかしい唇だけど、頭から丸かじりでああなったんだよな? おしゃれとかじゃないよな? 

 まさか、イネスだけはやっぱり肉食系なのか? 俺も頭から丸かじりなのか?

『大河さんの亀さんを頭からパクッと…』

 そういう事を言うと、R指定の数字が上がるから、やめなさいって! 

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