第382話 本当の結婚式
さあ、『本当の』結婚式当日がやって来た!
本日は、肌寒いのは変わらないのだが、雲一つない晴天となった。
元々、あまり雨や雪が降ったりしない世界ではあるのだが、やっぱり天気が良ければ嬉しい。
王城での結婚式とは違って、あまり俺は緊張していない。どちらかというと、ドキドキよりもワクワクの方が強い。
嫁~ずも同じ様で、朝食の席では楽しそうに笑っていた。
何故か父さんと母さんはニヤニヤしていたが、一体何なんだろう…ちょっとだけ、ほんのちょっとだけいや~な予感がするな…
ま、気にしても仕方ねえ。俺は俺の準備すっかね。
結婚式の準備とは言っても、王城での式と同じ正装に着替えるだけ。
真っ白なタキシード風にアレンジしたこの世界の正装だが、この服が意外と王城では受けが良かった。
どこで仕立てたのか、どこの職人の作なのかという問い合わせが何件もあったという。
将来的には、型紙を販売しても良いかな? 独占禁止法なんて無い世界なんだから、アルテアン領の特産品の一つにしてもいいな。蒸気機関式のミシンの開発に乗り出して、【洋服のOHKAWA】ってブランドでも作って既製服販売も良いかも。
うん、2着目は半額とか販売戦略は異世界でも通用するかもしれないな。
そんなアホな事を考えながら、着替えを済ませた俺は、玄関ホールで嫁~ずを待つ。
今回は髪型は普段通りだ。オールバックが微妙な評価だったんで、あんまり変わった髪型にするのは止めだ。
ちょっとだけ後ろに流した髪を、いい香りの油で撫でつけただけにしたよ。
「やっぱり、普段通りの髪型が一番似合いますわね」
ぼへっと立ってた俺に声を掛けたのは、やっぱり嫁~ずのリーダーであるメリル。
王城での式と同じ純白のドレスだが、髪型は普段と同じだが、元よりゴージャスな感じのブロンドなので十分に綺麗だ。
後ろに並ぶミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネスの4人も、髪型は普段通り。違うのはティアラを着けている事ぐらい。
「私達も、髪型はいつも通りですよ、トールさま」
そうは言うが、ミルシェもちょっとだけ髪がウェーブしている。子供の頃の元気印ミルシェではなく、今ではもう立派な淑女だな。
「あの…私は、ちょっとだけ編み込んでみました…どうでしょう?」
そういうミレーラの綺麗なサラサラ黒髪ロングを、綺麗に編み込んで、ゆるふわなハーフアップにして、可愛らしいイメージ。
「私は普段通りです」「髪型を変えると、後が大変だからな」
マチルダもイネスも、完全に普段と同じ。イネスはおしゃれにあんまり頓着しない性格なのは知っているけど、結婚式を楽しみにしていたマチルダは意外だったが、「いえ、お色直しの時にいじりますから」との事なので、楽しみにしておこう。
そして、グレーの執事服のユズキと、淡いピンクのメイド服のユズカ、サラ、リリアさんと、ドワーフメイド衆が合流して準備完了。
「よ~し、それじゃ~結婚式を楽しもう!」
「「「「「 はいっ! 」」」」」
玄関を出た俺達は、特製オープン蒸気自動車(実は飾りつけしただけのトラック)に乗り込んだ。
門前の通りからネス湖の湖畔にある地球式チャペルに続く沿道には、多くの領民が笑顔で並んでいた。
そんなに距離も無いので、俺を始め全員が笑顔で手を振る。運転手のユズキは無理だが…。
荷台に据え付けられたソファーに座った俺達も、もちろん満面の笑顔であったのは言うまでもない。
ネス湖の湖畔を背に建つチャペルは、ユズユズの結婚式のあとも改築というか改造を続けた結果、日差しのきつい日や雨の日でも式が行える様に、収納式の屋根を展開するための柱と天井の骨組みがオープンチャペルの前に立ち並んでいる。
柱も壁も屋根も、全てが真っ白に塗られているチャペルは、ネス湖が良く見える様に最奥は総ガラス張となっているので、チャペルの中に青く輝く湖が映えてとても神秘的だ。
本日は天気も良いので、オープンチャペルの最奥へ続くバージンロードの両側には、沢山の椅子が並べられており、すでに両家(?)の親族は着席している。
そのバージンロードへと蒸気自動車は横づけされ、俺達はサラとリリアさんが用意した踏み台を慎重に降りた。
俺を中心に、右腕にミルシェ、左腕にマチルダがそっと腕を添え、ミルシェと手を繋ぐのはメリルとミレーラ。マチルダとはイネス。
全員、笑顔で俺を見ている。
「それじゃ、行こう!」
俺の合図で、全員でバージンロードへの第一歩は左足から踏み出した。
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