第381話  楽しんでもらえましたか?

 来賓の皆様は、存分に温泉街を堪能したようだ。

 最近では発展しすぎて、もはや温泉街というよりも、スパリゾートの様相だが。

 日本のホテルにある宴会場の様な広さを誇る会議室を借りきって、皆で夕食にしたんだけど、とても良い笑顔で我がスパリゾートでの出来事を話してくれた。

 女性陣はエステを堪能した様で、義理のお母様方の肌はとてもハリと艶が出て、まるで少女時代に戻ったみたいだとお喜びだ。

 せいぜい5歳ぐらい若返っただけだと思うのだが、そこを突っ込むと厄災が降りかかるのは経験上よく分かっているので、お口にチャックして南京錠をかけておく事を忘れないトールくんは、とっても偉いと思う。

 男性陣はカジノで遊んだらしく、小遣いが増えたと喜んでいた。

 実はこれも仕込みで、カジノの支配人とディーラーには、ちょこっとイカサマでほんの少しだけ勝てる様に…まあ、勝率を大体110%程度になる様に調節してもらったのだ。千円で勝負して百円勝てる感じかな。

 あまり勝たせちゃうと、カジノが困っちゃうからね。普段は絶対にイカサマなんてしないけど、今日だけは特別だよ? ホントだよ?

 若い方々は(義理の兄弟・姉妹)は、レジャーランド・エリアで遊んだらしい。

 各アトラクションで自由に遊んでもらえる様に、入場や遊戯のための年間フリーパスを、事前に全員に手渡しておいたのだ。

 コルネちゃん同様に、『君もダンジョンに挑戦だ!(推奨年齢6歳~12歳)』もテストしてもらった。

 コルネちゃんは、実戦経験者なだけあって物足りなかった様だが、その他の皆さんは推奨年齢をオーバーしていても楽しめた様だ。実戦なんてそう簡単に経験出来る物でも無いし、危険な獣や魔物なんて普通の人ではまずお目にかかれないからね。

 屈強な冒険者しか入れないダンジョンの中で戦うなんて、夢のまた夢。

 異世界物のラノベみたいに、レベルやスキルなんて物が無いこの世界では、冒険者として活躍して生活できるのは、ごく限られた一部の人だけなのだ。その人達の99%が脳筋という事に、なんとなく心にモヤモヤした物を感じないでもないのだが…。

 そんな感じで、皆さま大変にご満足いただけた様で、俺と嫁~ずはほっとした。

 

「さて、明日は、私達のこの領地での結婚式です。朝ホテルにお迎えに来させますので、ご用意ください。あまり堅苦しい格好でなくとも結構です。皆様がご存知の様に、私の領地には多種多様な種族の方々が暮らしております。彼等も式には参列しますが、みな個性的な服装です。ですから正装でなくとも構いませんので」

 一応、俺達は準備した正装だけど、参列者にまで強要しない。

 ふっ…よほど傾いた格好でなければ、問題にもならぬだろうて…って似た様な事を誰か言ってた気がする。

「式の後も1週間、このホテルにご宿泊できるように手配しております。その後、皆様をお送りさせて頂きますので、このトールヴァルド地区をご存分にお楽しみください。では、我々はこれで。今夜はお酒はほどほどに。おやすみなさいませ」

 そう告げて、俺と嫁~ず、両親とコルネちゃんは、ホテルを後にして屋敷へと戻った。

 

 さあ、いよいよ明日は俺達の真の結婚式だ!

 領民の皆も何か企画している様だが、きっと領主の結婚式にかこつけた馬鹿騒ぎがしたいだけだと思う。

 いや、それはそれで全然おっけー! たまのお祭り騒ぎもいいじゃないか!

 皆で楽しく笑顔で祝ってもらえるのなら、嫁~ずも嬉しいだろう。もちろん俺だって嬉しい!

 何やかんや言っても、この領地…アルテアン領トールヴァルド地区が、俺は好きだ。

 雑多な混ぜご飯みたいな種族のるつぼになってるけど、みんな仲は良いし、何より俺が一から手掛けた領地だからな。

 父さんの領地ってか、全アルテアン領も今後は面倒を見なけりゃいけなくなるけど、この場所だけは変わらずにいてほしい。

 

 よし! んじゃ帰って明日のために、さっさと寝ますかね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る