　熱狂の渦に包まれた我等一行は、最初の予定を変更して、馬車でパレードする事になった。

　正確には、俺達夫婦と俺の両親とコルネちゃんが…なのだが。

　流石に新しく親類となった皆さまはパレードに参加はしない。

　群衆と共に観る側に回るとの事だった。

　てな事で、俺達夫婦６人が真っ白で豪華なオープン馬車に乗りこみ、後続には父さんと母さんとアルテアンの…いや世界のアイドルであるコルネちゃんを乗せたオープン馬車の２台を、領兵が警護のために取り囲み、ゆっくりと領都を１周。

　沿道はもの凄い数の群衆が俺達を一目見ようとつめ掛け、その熱量たるやまるで今が冬である事を忘れてしまう程で、汗ばむほどだった。

　前世で天皇陛下の祝賀御列の儀とかいうのをTVで見た事があったけど、あれと同様にひたすら馬車の上で沿道の群衆に笑顔で手を振るのは、本当に疲れたよ。

　表情筋と両腕の筋肉が攣りそうになったけど、俺達を祝おうと、一目見ようと集まってくれた領民に辛い顔は見せられないから、俺だけじゃ無く嫁～ずも両親もコルネちゃんも、最後まで頑張った。

　約２時間ぐらいだろうか？　ようやく父さんの屋敷に戻ってきた俺達は、大きなため息をついたのは言うまでもない。

　戻った俺達を出迎えてくれたのは、巨乳メイド部隊だけだった。

　義理の親戚たちは、屋敷の裏にあるご神木の前で平伏していた。

　新しくアルテアンと縁を結んだ義理の親戚に、ナディアと天鬼族がサプライズしたんだろう。

　妖精さんが幻想的に舞い踊るご神木の前で、感極まった皆が平伏して顔も上げられなくなったとか。

　あんまり過剰な演出は止めてあげてね…。

　さてさて、父さんの屋敷で一泊した翌日は、やっと俺の屋敷へと戻ります。

　もちろんホワイト・オルター号発進！

　もうそろそろここの領民は見慣れた頃だと思うんだが、まだまだその威容を一目見ようと多くの人が集まっていた。

　昨日に引き続き、笑顔で手を振りながらタラップを昇り、愛想を振りまきます。

　これも領主一家のお仕事だと思うけど、マジで筋肉痛です。

　ゆっくりと離床した飛行船を、集まってくれた人々へのサービスのために、ゆっくりと街を一周させたあと、一路我が家へ。

　父さんの領地と俺の領地を隔てる山脈を越える時、天を突くほどの高さを誇る第９番ダンジョンの高い塔から、なぜか運動会の開幕を知らせる花火？　の様なものが、ポンポンと打ち上げられていた。

　モフリーナからのお祝いなのかな？　ってか、その花火ってどうやって実現させたんだろう？

　いつまでも続く花火？　を横目に、山脈を越えると眼下に広がるのは久しぶりに見る青きネス湖。

　今日は良く晴れているので、その澄んだ湖の底に眠る聖なるネスの真っ白い像も良く見える。

「美しい…」「ああ…女神様…」「なんと神々しいお姿！」「ネス様ネス様ネス様…」

　皆は船窓にへばりついて見て、有り難がっているけど…実は巨大な浄水器だって知ったら、どんな顔するだろう？

　いや、これは絶対に言ってはならない！　墓場まで持って行かねばならないトップシークレットだな。

　ネス湖の湖畔、出島の様になっている所にある俺の屋敷の上空に到着すると、

「これが…伯爵邸…」「なんと美しい屋敷なんだ…」「見た事が無い様式の建物ですな」などなど、口々に色々な感想が聞こえてくる。概ね良い印象の様で良かった。

「では、皆さま～！　そろそろ着陸です。お席に着いてベルトをお締めください。ようこそ、自慢の我が家へ！」

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