第356話  起動!

「さて、無駄話はこのぐらいにして、そろそろサラを再起動させましょう。片付けも残ってますし」

 ああ、うん…めっちゃ疲れたよ。

「では、またまた登場のこの素子吸引機で、超小型ポジトロン電子頭脳を新しいボディーの脳に送り込みます」

「取り出す時には何とも思わんかったが…そんないい加減な方法で、本当に大丈夫なのか?」

 ただきゅぽきゅぽとポンプで入れるだけだよな? 脳みその中に。

 いや、鼻の穴から脳みそにどうやって送り込むのかも仕組みは良く分からんのだけど。

「ああ、それは大丈夫です。送り込む電子頭脳の素子と中央演算装置は、私の脳を通して管理局の高性能コンピューターが、所定の位置まで電波誘導いたします。」

 理解が追い付かんが、つまりは電波な女になるって事だな…リリアさんが。

 うん、もう管理局の奴らは、全員電波な奴ばっかりだって理解でいいや。

「おっと、こちらのホースも鼻の穴に入りませんね。仕方がありません…滑りを良くするために、私の超絶技巧の口技でビンビンのぬるぬるにしてあげましょう」

 いや、そのグネグネのホースが、ビンビンになるのか? 出来るならやってみろ! いや、なったらなったで怖いが。

「では、ちょっと失礼して…はむっ…じゅる…ちゅ…んぁ…はぁはぁ…ん…じゅる…はぁはぁ…ぺちょぺちょ…ぁむ…ん…」

 いや、その舐め方! 音! 唾つけるだけなら、そんな音と舌遣いいらんだろ!

 ってか、何で恍惚とした表情なんだ? 目が逝ってるぞ!? 本当は、Mなんじゃないのか?

「ふぅ~これぐらいで良いでしょう。では、先っちょを挿れて…ゆっくりと焦らす様に、出し入れをし…」

「いいから、さっさとやれ!」

 もういい加減、イラッとしてきた。

「何を焦ってるんですか? 変な妄想したりしたんですか? 嫌ですねえ…ムッツリ童貞は…」

「うるせーー! 俺は、さっさと終わらせたいんだよ!」

 滅茶苦茶ムカついてきたぞ!


「へーへー。では、さっさとやりましょうかね…ホイッと」

 そういうと、あっというまにホースをサラの鼻の穴に突っ込んだ。

「んで、きゅぽきゅぽっと」

 もう片方の管を突っ込んでたフラスコから、あの血だか体液だかの混ざり合ってた液体ごと、超小型ポジトロン電子頭脳の素子とかいう米粒ぐらいの何かがどんどんポンプに吸われていく。

「んで誘導をしますっと」

 そう言うと、リリアさんが左手の人差し指をサラのおでこにあてた。

「素子の誘導開始…所定の位置に誘導完了…神経組織と素子の分子間結合を確認…」

 順調…なのかな?

「複合素粒子電池の発電状態…良好…第一次接続…開始」

 発電状態は良好っと…良いじゃない。

「第一次送電システム…正常」

 ん? どっかで聞いた事がある様なセリフが…

「ハブ変圧器…出力問題なし…変換効率は…予定内を維持」

 いや、そんなはずは無い…サラを起動させるための儀式のような物だよな…

「第二次接続…正常…第三次接続…問題なし」

 これは、ヤ〇マ作戦じゃない…サラを起動させる為の儀式だ!

「最終安全装置…解除」

 いや、ツッコまないぞ! 絶対にツッコまないぞ!

「4…3…2…1…」

 ゴクリ…!

「発射!」

「何をだよ! 何を発射するんだよ!」

 はっ! ついつい、ツッコんでしまった!

「間違いました、起動!」

 そうか、間違えたのか…絶対に信じん! わざとだ!


「サラ、大丈夫? サラ!」

 ゆっくりと目を開けるサラに呼びかけるリリアさん。

 まだその目は焦点が合って無い様だが、瞳は俺達の姿を捉えている様だった。

「自分には他に何もないなんて、そんなこというなよ! 別れ際にサヨナラなんて、悲しいこと言うなよ…」

 おい! リリアさんよ、それは…いや、黙って聞いておこう…ツッコまない! 

「リリア…何、泣いてるの?」

 そう言うと、サラはゆっくりと上半身を起こし、続けて、

「ごめんなさい。こういうとき、どんな顔をすればいいのか、分からないの」

 おい、サラもノルのか? ノリノリなのか!?

「笑えばいいと思うよ…!」

 おーーい! さすがに止めねばならないか、誰かがツッコまねばならんのか!?


「笑えるか、ボケー! 誰がサヨナラなんて言ったかー! 私が気絶してる間に、好き勝手にお前が私の身体を弄り回しただけだろーが! それで何で笑えるんだ、この鬼畜野郎がーー!」

 あ、サラがツッコんだ…

「次回、《人の造りしもの》。お愉しみに!」

「何がお愉しみかー! 愉しんだのは、お前だけだろーが!」

 うん、サラが全面的に正しい…認めるのは悔しいが。

「サービス、サービス~!」

 何故かダブルピースのリリアさん。ところで、どっちがサービスした側なんだろ。

「何がサービスかーーー!!!」

 まあ、サラが怒るのも無理はないと思う…今回だけは。


 ヒートアップするサラだが、これだけは言っておかねばなるまい。

「あ~、お話の途中で申し訳ないが…」  

「大河さん、あなたもこのアホを止めてくださいよ!」

 俺に止められるわけが無かろう? それよりも…

「あのな、サラ。冷静に聞いてくれ」

「ど、どうしたんですか、そんなに真面目な顔で…はっ! まさか、サラちゃんに惚れたとか!?」

 んな分けあるかい! 

「いや、素っ裸で鼻からきゅぽきゅぽぶら下げたままだぞ?」

 そう…鼻からぷら~~んと…

 自分の身体を見下ろし、鼻から垂れさがったホースを見て触って確認したサラは、

「にぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 絶叫して自分の部屋に飛び込んで行った… 合掌…。

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